• TSRデータインサイト

2024年度「人手不足」倒産 最多の309件 小・零細企業が押し上げ、年度初の300件台

2024年度の「人手不足」関連倒産


 2024年度の「人手不足」関連倒産は前年度の1.6倍に達し、過去最多の309件(前年度比60.9%増)と急増したことがわかった。資本金1千万円未満が65.0%を占め、小・零細企業の苦境が表れている。
 「人件費高騰」が110件(同69.2%増)、「従業員退職」が77件(同57.1%増)、「求人難」が122件(同56.4%増)と、すべての要因で過去最多を記録した。
 従業員の採用や引き止めには賃上げが必要だが、小・零細企業は収益力を超えた賃上げを求められ、経営悪化に拍車がかかっている。様々な分野での賃上げ実現には、業界ごとの問題提起や支援が急務になっている。

 「人手不足」関連倒産の資本金別では、1千万円未満が201件(構成比65.0%)と、約3社に2社が小・零細企業だった。形態別では、破産が297件(同96.1%)と大半を占めている。
 物価値上げや借入金利の上昇で、経営体力がぜい弱な企業ほど資金余裕が乏しくなっている。また、人手不足の解消には賃上げの実現力の有無も問われ、事業継続の大きなリスクにもなっている。今春闘でも大手と中小企業との賃金格差は拡大傾向にあり、しばらくは小・零細企業を中心にした「人手不足」倒産は高水準をたどるとみられる。

※本調査は、2024年度(2024年4月-2025年3月)の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出し、分析した。(注・後継者難は対象から除く)

「人手不足」関連倒産(4-3月)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

3

  • TSRデータインサイト

チャプター11をめぐる冒険 ~ なぜマレリはアメリカ倒産法を利用したのか ~

ずっと日本にいるのに時差ボケが続いている。  「マレリのチャプター11が近いから関連サイトをチェックし続けろ」と6月6日に先輩に言われて以降、私の生活はアメリカ時間だ。

4

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

5

  • TSRデータインサイト

定量×定性分析 危ない会社は増えたのか?

2024年度の全国倒産が1万144件(前年度比12.0%増)と11年ぶりに1万件を超えたが、企業の倒産リスクはどの水準にあるのか。東京商工リサーチが企業を評価する「評点」と「リスクスコア」のマトリクスからみてみた。

TOPへ