• TSRデータインサイト

2024年度の「税金(社会保険料含む)滞納」倒産172件 資本金1億円以上はゼロ、小規模企業への偏りが鮮明に

2024年度の「税金滞納」倒産状況


 2024年度の「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は、過去最多の172件(前年度比38.7%増)に達した。2015年度以降、最多だった2023年度の約1.4倍に増えた。
 負債総額は675億6,800万円(同65.4%減)で、大幅に減少した。前年度は(株)ガイア(負債943億5,500万円)など、負債100億円以上が3件発生したが、2024年度は発生しなかったため。

 コロナ禍は落ち着いたが、物価や人件費の上昇などが企業収益を圧迫している。納税意思があっても、納税資金の確保に苦しむ企業は多い。さらに、資本金1千万円未満の小・零細企業の倒産が55.8%と半数を超えている。企業とコミュニケーションを取りながら、納税方法を見直す必要性が高まっている。

 「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は、資本金1億円以上は3年ぶりに発生がなかった。一方、個人企業他が10件(前年度比400.0%増)、1百万円未満が14件(同180.0%増)、1百万円以上5百万円未満が50件(同51.1%増)と、小規模企業ほど増加率が高い点が注目される。
 小・零細企業は、物価高や賃上げを吸収する収益力が乏しい。さらに、新たな資金調達も容易ではなく、手元資金は納税より運転資金の確保に向けられがちだ。
 物価高や人件費アップに加え、借入金利の上昇、そして米国の相互関税の影響も不透明さを増している。このままでは税金滞納を一因とした倒産は、さらに増勢をたどる可能性が高い。

※2024年度(2024年4月-2025年3月)の全国企業倒産(負債1,000万円以上)の「コンプライアンス違反」倒産のうち、「税金滞納」関連を集計・分析した。

「税金滞納」倒産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

長渕剛さんの個人事務所、イベント会社に破産申立

歌手の長渕剛さんが代表を務める(株)オフィスレン(TSRコード:295731311、渋谷区)が、イベント運営を委託していた会社を相手取り、東京地裁に破産を申し立てたことが東京商工リサーチ(TSR)の取材で判明した。

2

  • TSRデータインサイト

みんなで大家さん、分配金の支払いが遅延

7月31日、不動産投資商品を販売するみんなで大家さん販売(株)(TSRコード:571226140)は、不動産投資商品「みんなで大家さん成田1号~18号(全18商品)」について、7月末の利益分配(分配金)が遅れると投資家に通知した。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 止まらない客室単価の値上げ インバウンド需要で高稼働・高単価が続く

インバウンド(訪日旅行客)需要に支えられ、ホテル業界は好調が続いている。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2025年3月期の客室単価は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に前年同期を上回り、稼働率も前年同期並で高水準を維持している。

4

  • TSRデータインサイト

私立大学の経営、売上トップは(学)順天堂 赤字企業率5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に

私立大学を経営する全国の543法人のうち、約半数の253法人が2024年決算で赤字だった。赤字企業率は46.5%にのぼり、前期(40.8%)から5.7ポイント上昇し、5割に迫った。

5

  • TSRデータインサイト

2025年上半期 20床以上の病院倒産が急増 「病院・クリニック」倒産21件、5年連続で前年同期を上回る

病床20床以上の病院の経営が厳しさを増している。2025年上半期(1-6月)の病院・クリニックの倒産は21件(前年同期比16.6%増)だった。上半期では、コロナ禍の2020年を底に、2021年から5年連続で前年同期を上回り、1989年以降で最多の2009年同期の26件に次ぐ、2番目となった。

TOPへ