「人手不足」の影響広がる、企業の52.3%が実感 大企業は6割超、従業員へのしわ寄せや受注控えも
2025年2月「人手不足に関するアンケート」調査
持続的な賃上げが労使交渉の焦点となるなか、企業の5割超で、「人手不足」が原因で企業活動に支障が生じていることがわかった。
「負の影響がある」と回答したのは、トップが建設業の67.9%(826社中、561社)。次いで、運輸業の66.5%(209社中、139社)、情報通信業の56.5%(304社中、172社)が続く。
規模別では、「負の影響がある」と回答したのは大企業が60.7%(410社中、249社)に対し、中小企業は51.6%(4,982社中、2,572社)で、大企業が中小企業を9.1ポイント上回った。大企業は中小企業より人材を多く擁しているが、「人手不足」の影響が業務に直結しているようだ。
2024年の「人手不足」倒産は、2013年以降の12年間で最多の290件(前年比82.3%増)に達した。「人手不足」倒産が急増するなか、東京商工リサーチ(TSR)はアンケート調査を実施し、企業への影響を探った。
「人手不足」の具体的な影響では、「既存従業員の作業負担が増加」が51.6%(2,714社中、1,401社)と半数に達した。次いで、「既存従業員の労働時間増加」が39.6%(1,077社)、「受注や来店予約を断った」が35.7%(969社)と続く。現場への負担増や、受注控えなどの悪影響が出ている実態が浮き彫りになった。
賃上げについては、「人手不足による負の影響がある」と回答した2,542社のうち、2,246社(構成比88.3%)が賃上げを実施すると回答した。一方、「人手不足による負の影響がない」と回答した2,280社では、賃上げを実施すると回答したのは1,834社(構成比80.4%)にとどまり、7.9ポイントの差が開いた。
連合は、今春闘で大手を含む全体で5%、中小企業で6%の賃上げ目標を掲げ、賃上げの機運が高まっている。ただ、従業員の定着に必要なのは賃上げだけではない。業務効率化による従業員負担の軽減や、柔軟な働き方の導入など、人材確保に向けた多様な施策が問われている。
※ 本調査は、2025年2月3日~10日、企業を対象にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,392社を集計、分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
Q1. 2024年1月以降で人手不足を原因として企業活動に負の影響はありましたか?(択一回答)
◇人手不足で「負の影響がある」が52.3%
人手不足を原因で企業活動に負の影響があるかを聞いた。5,392社から回答を得た。
「負の影響がある」と回答した企業は全企業で52.3%(5,392社中、2,821社)だったが、規模別で差が開いた。
「負の影響がある」との回答は、大企業が60.7%(410社中、249社)に対し、中小企業は51.6%(4,982社中、2,572社)で、大企業が中小企業を9.1ポイント上回った。多くの人材を擁している大企業では、中小企業に比べて人手不足を強く認識しているようだ。
産業別 「建設業」、「運輸業」で人手不足の影響が顕著
Q1の回答を産業別に分析した。人手不足で負の影響があるとの回答が最も多かったのは、建設業で67.9%(826社中、561社)に達した。
次いで、運輸業の66.5%(209社中、139社)、情報通信業の56.5%(304社中、172社)と続く。
2024年問題の対応を迫られた建設業、運輸業など労働集約型産業や、技術者が不足する情報通信業などで人手不足の影響が広がっている。
一方、負の影響が少なかったのは、 不動産業30.2%(185社中、56社)、金融・保険業36.5%(63社中、23社)、卸売業46.5%(1,071社中、499社)の順。
Q2.(人手不足による負の影響について)どのような影響ですか?(複数回答)
◇「既存従業員の作業負担増加」が約5割
人手不足でどのような影響が出ているかを聞いた。最も多かったのは、「既存従業員の作業負担増加」で51.6%(2,714社中、1,401社)。次いで、「既存従業員の労働時間増加」39.6%(1,077社)、「受注や来店予約を断った」35.7%(969社)と続く。
規模別では、「受注や来店予約を断った」は、中小企業が36.9%(2,482社中、917社)で、大企業の22.4%(232社中、52社)を14.5ポイント上回った。
人手不足は、既存従業員への負担のしわ寄せや、受注控えにも直結しているようだ。