• TSRデータインサイト

金利が0.5%上昇でも「受け入れる」が3割超 日銀の金利引き上げ、企業の調達意識に変化

2025年2月「金融政策に関するアンケート」調査

 ことし1月24日、日本銀行は政策金利の0.5%程度への引き上げを決定した。2024年3月のマイナス金利解除とイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の撤廃、同7月の0.25%程度への引き上げに続く金融引き締めで、企業の資金調達への影響を懸念する声は根強い。
 東京商工リサーチは2月3日~10日に企業アンケートを実施し、資金調達への影響を探った。この1年間で借入金利が「すでに上昇している」との回答は44.4%に達した。また、今後半年先の借入金利について、メインバンクから「引き上げをはっきり伝えられた」、「可能性を示唆された」との回答は合計56.0%と半数を超えた。
 メインバンクから借入金利について、現状から0.1%上昇を打診された場合、「受け入れる」との回答は84.1%に達した。0.3%の上昇では54.9%、0.5%の上昇では31.2%だった。前回調査(2024年10月)は、それぞれ82.2%、42.1%、22.9%で、金利上昇の許容度はアップしている。
 また、「既存の金利より1.0%の上昇を打診された場合」の対応では、16.8%が「受け入れる」と回答した。物価高での金利上昇は企業収益に直結するが、上昇を許容せざるを得ない事情も見え隠れする。

※本調査は、2025年2月3日~10日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,427社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。前回調査は2024年10月16日公表。


Q1.日銀は今年1月に短期金利の誘導目標を0.50%程度に引き上げました。資金調達の借入金利は今後どのように変化すると思いますか?昨年2月の水準と比較して回答ください(一つ選択ください)(択一回答) 

◇「すでに上昇」が44.4%

 最も多かったのは「すでに上昇している」の44.4%(5,382社、2,391社)だった。
 以下、「2025年6月末までに上昇する」の32.4%(1,744社)、「2025年7~12月のあいだに上昇する」の13.4%(724社)と続く。
「すでに上昇」、もしくは「今年中に上昇」と回答した企業は合計90.2%に達し、日銀の金利引き上げの影響の大きさを物語っている。
 「すでに上昇」、もしくは「今後上昇する」と回答した企業を業種別(業種中分類、回答母数10以上)でみると、「木材・木製品製造業」や「宿泊業」、「織物・衣服・身の回り品小売業」など7業種で100.0%だった。

Q1.日銀は今年1月に短期金利の誘導目標を0.50%程度に引き上げました。資金調達の借入金利は今後どのように変化すると思いますか?昨年2月の水準と比較して回答ください(一つ選択ください)(択一回答)

Q2.今後(概ね向こう半年)の資金調達の借入金利について、メインバンクより、どのような説明がありましたか?1年以内に受けた説明を基にご回答ください(択一回答) 

◇多くが「金利引き上げ」と説明される

 「今後の金利の話はしていない」が41.9%(5,427社中、2,276社)で最も多かった。
 次いで、「金利引き上げの可能性を示唆された」が29.5%(1,601社)、「金利引き上げをはっきり伝えられた」は26.5%(1,440社)。
 メインバンクと金利の話をした企業を分母(3,151社)にすると、金利引き上げを言及された企業は96.5%に達する。
 「引き上げ」を言及された業種別(業種中分類、回答母数10以上)は、 トップが「木材・木製品製造業」の74.0%(27社中、20社)だった。

Q2.今後(概ね向こう半年)の資金調達の借入金利について、メインバンクより、どのような説明がありましたか?1年以内に受けた説明を基にご回答ください(択一回答)

Q3.メインバンクから今後の資金調達の借入金利について、既存の利率より0.1%、0.3%、0.5%、1.0%の上昇を打診されたと仮定した場合、貴社はどのように対応しますか?(択一回答) 

 「受け入れる」と回答した企業は、上昇幅が0.1%では84.1%(4,983社中、4,191社)、0.3%では54.9%(4,746社中、2,607社)、0.5%は31.2%(4,540社中、1,421社)、1.0%は16.8%(4,393社中、742社)で、上昇幅が増加するほど、割合は低下した。

Q3.メインバンクから今後の資金調達の借入金利について、既存の利率より0.1%、0.3%、0.5%、1.0%の上昇を打診されたと仮定した場合、貴社はどのように対応しますか?(択一回答)


 メインバンクから既存の利率より0.3%の上昇を打診されても「受け入れる」と回答した企業は54.9%と半数を超えた。ただ、0.5%の上昇では31.2%まで低下し、「他行へ調達を打診する」との回答が50.3%に達する。日銀の金利引き上げに伴い、各金融機関は融資利率の引き上げ幅を探っているが、0.4%前後が与信関係を維持するひとつの目安になりそうだ。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ