• TSRデータインサイト

2024年の「ゼロゼロ融資」利用後倒産567件 後半減速し初めて前年を下回る、累計1,787件

2024年の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


  コロナ禍で窮境状態に陥った企業の資金繰り緩和に効果を発揮した「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用した後に倒産した企業が、2024年は567件(前年比10.7%減)だったことがわかった。
 2020年にゼロゼロ融資が始まって以来、利用企業の倒産が前年を下回ったのは初めて。
 2024年4月に返済開始がピークを迎え、業績不振の企業では返済負担が重くなることが危惧されていたが、ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産がピークアウトを示すのか注目される。初めてゼロゼロ融資を利用後の倒産が確認された2020年7月から4年半で、累計は1,787件に達した。

 ゼロゼロ融資を中心にしたコロナ関連支援は、急激な業績悪化に見舞われた企業救済に大きな効果をみせ、倒産抑制につながった。だが、コロナ禍の収束に合わせて円安が加速し、今度は原材料、燃料など輸入材の価格高騰が立ちふさがった。こうした物価高と人手不足・人件費上昇が収益に負担となり、返済原資の目途が立たない中小企業も少なくない。

 政府はゼロゼロ融資の返済開始に伴う中小企業の支援で、「コロナ借換保証」など各種支援を2024年6月まで実施し、7月以降は経営改善・再生支援に軸足を置いた支援に移行している。
 民間金融機関の「経営改善サポート保証(コロナ対応)」、日本公庫等の「コロナ資本性劣後ローン」は12月まで延長された。また、信用保証協会は「経営力強化保証制度」で保証料を減免した制度融資を始めている。
 ただ、リスケジュール(返済条件変更)で「倒産を先送りしているだけ」との厳しい指摘もある。会計検査院は、2023年度末時点でゼロゼロ融資の貸付残高のうち、返済猶予など条件変更中の残高が1兆1,888億円にのぼり、不良債権「予備軍」と指摘している。
※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「人手不足倒産予備軍」  ~ 今後は「人材採用力」の強化が事業継続のカギ ~

賃上げ圧力も増すなか他社との待遇格差で十分な人材確保ができなかった企業、価格転嫁が賃上げに追い付かず、資金繰りが限界に達した企業が事業断念に追い込まれている。  こうした状況下で「人手不足」で倒産リスクが高まった企業を東京商工リサーチと日本経済新聞が共同で分析した。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「人手不足」倒産 359件 サービス業他を主体に、年間400件に迫る

深刻さを増す人手不足が、倒産のトリガーになりつつある。2025年11月の「人手不足」倒産は34件(前年同月比70.0%増)と大幅に上昇、6カ月連続で前年同月を上回った。1-11月累計は359件(前年同期比34.4%増)と過去最多を更新し、400件も視野に入ってきた。

3

  • TSRデータインサイト

【社長が事業をやめる時】 ~消えるクリーニング店、コスト高で途絶えた白い蒸気~

厚生労働省によると、全国のクリーニング店は2023年度で7万670店、2004年度以降の20年間で5割以上減少した。 この現実を突きつけられるようなクリーニング店の倒産を聞きつけ、現地へ向かった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年1-11月の「税金滞納」倒産は147件 資本金1千万円未満の小・零細企業が約6割

2025年11月の「税金(社会保険料を含む)滞納」倒産は10件(前年同月比9.0%減)で、3カ月連続で前年同月を下回った。1-11月累計は147件(前年同期比11.9%減)で、この10年間では2024年の167件に次ぐ2番目の高水準で推移している。

5

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

TOPへ