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「経営のプロ」コンサルの倒産が過去最多 顧客ニーズの高度化と求められる専門性、淘汰が加速

2024年「経営コンサルタント業」倒産状況


 2024年の「経営コンサルタント業」の倒産が154件(前年比7.6%増)に達した。集計開始以降で年間最多だった2023年の143件を上回り、過去最多を更新した。
 コンサル業界は1人でも少ない開業資金でスタートでき、参入障壁が低い。だが、参入が容易でも、コロナ禍を経て改めて実績や特色が重視され、玉石混交のコンサル業界では淘汰が加速している。

 原因別では、販売不振や既往のしわ寄せなどを含む「不況型倒産」が102件(構成比66.2%)を占めた。 
 「経営のプロ」とみられるコンサルタントも、事業再生やDX支援、M&Aなど、顧客のニーズが高度化しているなかで専門性が求められる時代に入り、経営環境の変化に対応するのは難しいようだ。
 コンサル会社は、戦略系、士業などの専門系、政策系など業務や業種により多様化し、最近はDX支援やM&A支援、自治体からの補助金申請のアドバイスなど多岐に広がっている。

 5月に破産開始決定を受けた北浜グローバル経営(株)(TSR企業コード:576763128、大阪市北区)は、中小企業向けの補助金獲得支援等のコンサルティングを手がけていた。だが、業容拡大の一方で人件費などの経費負担が過大となり資金不足に陥った。負債総額は約20億5,300万円で、2024年の「経営コンサルタント業」倒産では最大となった。

 形態別では、最多が「破産」の147件(構成比95.4%)と圧倒的に多い。「特別清算」5件と合わせ消滅型が152件(同98.7%)だった。一方、再建型の民事再生は2件にとどまり、信用を棄損したコンサル会社の再建は難しい。

 資本金別では、1億円未満の中小企業が152件(構成比98.7%)とほぼ全てを占めた。さらに、従業員数別でも5名以下の小規模事業者が143件(同92.8%)を占め、参入の容易さから新規参入が相次ぐ一方、資産背景に乏しい中小コンサルタントが売上不振に喘ぐ実態が浮かび上がる。

 「経営コンサルタント業」の業績は、コンサルタント自身の経験や人柄、人脈などにも大きく左右される。属人的な性質が強い分、如何に優秀な人材を確保し、顧客に価値を提供できるかが問われる。今後は、コンサル業界の苛烈な生き残り競争がさらに進み、実績と特色を打ち出せない企業は淘汰される可能性が高い。

※ 本調査は、日本産業分類(細分類)の「経営コンサルタント業」を抽出し、集計開始の2005年から2024年までの倒産を集計、分析した。

経営コンサルタント業の倒産 年次推移

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