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「中堅企業」の創設と企業支援の潮流=2024年を振り返って(3)

 「中堅企業元年」と位置付けられた2024年。産業競争力強化法の改正で、「中堅企業」は中小企業基本法に基づく中小企業に当てはまらない企業で、従業員数が2,000人以下の企業と法的に定義付けされた。TSRの企業データベースで、この定義に当てはまる企業は全国に9,229社あることがわかった。
 この定義で企業規模別の平均従業員数を算出すると、2024年3月時点で大企業が6,075.0人に対し、中堅企業は500.6人、中小企業は21.9人と大きな差がある。
 これまで中小企業は、資金繰り支援など経営安定化を念頭に置いた保護策が講じられてきた。一方で、グローバルな競争環境を勝ち抜く企業の創出に向けた支援は他国の後手に回ってきた。こうしたなか、地域に根差し、国内投資を拡大させながら、高い従業者数・給与総額の伸び率を有している「中堅企業」に焦点を当て、成長を加速させるための政策対応が今後真価を問われることになる。

 2014年4月期から10期連続で財務データが分析可能な企業をみると、中堅企業が存在感を放つ。
 債務超過回数(期数)が7回以上で、資金難がほぼ常態化している企業は、中小企業が10.3%に対し、中堅企業は0.4%にとどまる。中堅企業には単なる資金支援でなく、商圏の拡大・事業の多角化など、攻めの企業活動を促進する支援が必要だ。
 ただ、中堅企業への支援を打ち出すことも重要だが、将来性のある中小企業や若いスタートアップ企業の経営意欲を高めることも重要である。
 TSR企業データベースの分析では、2023年7月以降に中小企業から中堅企業にステップアップした企業は294社ある。こうした企業の過去5年間の「従業員数増加率」は1.8倍(87.4%増)で雇用の吸収力も備えている。また、2024年7月現在で中小企業に該当する102万5,060社のうち、2019年以降の5年間の従業員増加率が87.4%以上の企業は7万7,614社あることもわかった。
 従業員数10人未満も含まれるため一概には言い切れないが、この7万7,614社は従業員数の伸びや組織の成長という観点では、「中堅企業候補」といえる企業群だろう。

 中小企業の健全な成長を促し、中堅企業へステップアップさせるには、こうした候補企業に寄り添った、継続的な経営相談や支援も欠かせない。デフレ脱却が謳われ、為替や金利も変化の時代を迎えるなか、企業支援のあり方も「潮目」を迎えた。
 中堅企業を地域経済の核と位置付けるのであれば、掛け声だけでなく、その実効性も問われることになる。中堅企業の成長加速とともに、成長意欲があり、成長の芽を備える中小企業を底上げし、生産性向上と雇用・賃上げに繋げられるか。2025年の「中堅企業2年目」が重要になってくる。

企業規模の定義

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