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トランプ政権は業績に「マイナス」28.1%、4カ月で上昇 関心は地政学リスクから「為替」「関税」 現実問題直視へ

2024年12月「トランプ次期大統領」に関するアンケート調査


 2024年11月の米国大統領選でドナルド・トランプ氏が当選し、来年1月の就任式で大統領に返り咲く。
トランプ氏が米国大統領に就任することで、業績面に「マイナス」と回答した日本企業は28.1%で、「プラス」と回答した企業の8.6%を19.5ポイント上回った。 「分からない」と回答した企業は37.5%で最も多かった。
 前回(8月調査)、大統領選前の調査で「マイナス」は16.3%だったが、4カ月間で11.8ポイント上昇した。

 産業別では、10産業すべて「マイナス」の回答が「プラス」を上回った。特に、「マイナス」回答率では、農・林・漁・鉱業が43.5%、製造業が34.5%に達し、際立った。

 トランプ次期大統領の政策の注目点は、最高が「通貨・為替政策」の52.4%(10月調査49.2%)。次いで、「関税政策」51.5%(同23.1%)、「台湾有事を含めた中国との関係性」50.8%(同65.4%)と50%超が続く。10月調査では、地政学リスクの高まりからロシアや中国との関係性への関心が高かったが、今回は大統領選を経て、現実的な通貨や関税政策への関心が高まった。
 関税政策では、すでにトランプ氏は中国への追加関税や、各国一律10~20%程度の関税を課すことを主張している。また、バイデン政権から大きな転換が見込まれるのが脱炭素などの環境・エネルギー政策で、原油の増産や各種環境規制の緩和などを打ち出す。エネルギー価格の引き下げなどが期待される一方、EVシフトを進める製造業などは軌道修正を迫られる可能性もある。
 トランプ次期政権は、来年1月の大統領就任を前に、新政権の要職人事を発表している。世界の政治経済への影響力が大きい新大統領の一挙手一投足を睨んだ経営が求められる。

※ 本調査は、2024年12月2日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答6,647社を集計・分析した。トランプ氏の影響については8月に続いて2回目、米国大統領の政策については8月、10月に続いて3回目のアンケートとなる。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(資本金がない法人・個人企業を含む)を中小企業と定義した。

Q1. 11月の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が当選しました。2025年1月に大統領に就任しますが、貴社の業績にどのような影響があると予想しますか?(単一回答)

◇「マイナス」が28.1%で「プラス」8.6%を19.5ポイント上回る
 トランプ氏が米国大統領選に当選した影響では、トップは「分からない」が37.5%(6,647社中、2,494社)だった。影響を測りかねている企業が多い一方、選挙前の8月調査(50.6%)から13.1ポイント低下し、影響を認識し始めた企業が増えている。
 「プラス」の回答は8.6%(577社)で、内訳は「大いにプラス」が1.3%(87社)、「少しプラス」が7.3%(490社)だった。8月調査(7.4%)から1.2ポイント上昇した。
 一方、「大いにマイナス」4.7%と「少しマイナス」23.4%を合計した「マイナス」は28.1%(1,874社)にのぼり、「プラス」を19.5ポイント上回った。「マイナス」は、8月調査(16.3%)から11.8ポイント上昇し、「プラス」の上昇ポイントを大幅に上回った。

Q1. 2025年1月にドナルド・トランプ氏が大統領に就任しますが、貴社の業績にどのような影響があると予想しますか?

【産業別】全産業で「マイナス」が「プラス」を上回る

 農・林・漁・鉱業、不動産業、情報通信業、サービス業他を除く6産業で「分からない」の構成比が最大だった。不動産業、情報通信業、サービス業他は「影響なし」、農・林・漁・鉱業は「マイナス」の構成比が最大となった。
 10産業のうち、「プラス」構成比が最も高い産業は、金融・保険業の14.4%(90社中、13社)だった。次いで、運輸業が13.2%(256社中、34社)、小売業が11.8%(328社中、39社)で続き、「プラス」が1割を超えたのは4産業だった。
 一方、「マイナス」構成比が最も高い産業は、農・林・漁・鉱業の43.5%(62社中、27社)。次いで、製造業が34.5%(1,712社中、591社)、卸売業が34.2%(1,257社、430社)と続く。
 10産業すべて「マイナス」が「プラス」を上回ったが、8月調査では「マイナス」が20%以上は3産業のみで、30%を超える産業はなかった。今回は、「マイナス」が40%以上が1産業、30%以上が2産業で、「マイナス」の構成比が拡大した産業が目立つ。

産業別 回答状況

【業種別】「プラス」は金融商品取引業,商品先物取引業、「マイナス」は非鉄金属製造業がトップ

 産業を細分化した業種別(回答母数10以上)では、「プラス」の最高は、金融商品取引業,商品先物取引業の29.4%(17社中、5社)だった。
 次いで、各種商品卸売業が28.1%(32社中、9社)、インターネット附随サービス業25.0%(12社中、3社)、道路旅客運送業23.5%(17社中、4社)が続き、「プラス」回答が2割を超えた業種は4業種(8月調査2業種)だった。
 「マイナス」では、非鉄金属製造業が58.0%(31社中、18社)でトップ。次いで、ゴム製品製造業51.8%(27社中、14社)、パルプ・紙・紙加工品製造業47.4%(59社中、28社)で続く。
 上位9業種で「マイナス」回答が4割を超えた。なお、上位10業種では、8業種が製造業だった。

左:「ブラス」業種別(上位) 右:「マイナス」業種別(上位)

Q2.トランプ次期大統領の政策で注目することは何ですか?自社の業績への影響の観点で回答ください。(複数回答)

◇政策の注目点は「通貨・為替政策の在り方」が52.4%でトップ
 次期米国大統領の政策で注目することを聞いた。6,046社から回答を得た。
 構成比の最高は、「通貨・為替政策の在り方」の52.4%(6,046社中、3,171社)だった。産業別では卸売業、小売業、金融・保険業、不動産業の4産業で構成比が最高となった。
 次いで、「関税政策の在り方」が51.5%(3,116社)、「台湾有事を含めた中国との関係性」が50.8%(3,072社)と続き、3項目で構成比が50%を超えた。
 10月調査では、地政学リスクの高まりから、ロシアや中国との関係性への関心が高かったが、今回調査では通貨や関税政策への関心が高まった。
 Q1の「プラス」・「マイナス」回答別で政策注目点を比較すると、 「アメリカで産出されるエネルギー源の供給方針」は、「プラス」(30.2%)が「マイナス」(19.0%)を11.2ポイント上回った。また、「関税政策の在り方」は23.7ポイント、「保護主義政策・貿易協定の在り方」は20.5ポイント、それぞれ「マイナス」が「プラス」を上回った。
 「その他」では、「日本製鉄によるUSスチール買収計画の動向」や「在日米軍駐留費用の動向」などに関心を寄せる意見もあった。

Q2.トランプ次期大統領の政策で注目することは何ですか?

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