登記上の本社同一地の最多は4,535社 代表ひとりが兼任する企業の最多は628社
2024年「法人登記多数住所」動向調査
全国で同じ住所に法人登記された社数の最多は、「東京都港区南青山2-2-15」の4,535社だった。 また、1,000社以上が登記しているのは14カ所で、上位10位までを東京都の港区、渋谷区、中央区、千代田区の住所が占めた。
同じ住所で法人登記が集中するのは東京都が際立ち、100社以上が登記する住所は12都道府県で470カ所ある。このうち、東京都が378カ所で8割(構成比80.4%)を占めた。2番目に多い大阪府は33カ所で、東京都の10分の1に満たない。東京都への集中は、設立の浅い会社が利便性が高く、有力なビジネス街の近くにあるバーチャルオフィスに本社を構え、信用や知名度アップを狙っていることがあるようだ。
法人登記が多い住所地は、国内有数のビジネス街で、バーチャルオフィスが多く所在している。バーチャルオフィスは、月額数百円から登記地として住所貸しを行い、電話代行や郵便受け取りなどのオプションサービスも提供する。IT関連などオフィスを構えずに働ける個人起業家やスタートアップ企業には固定費を浮かすメリットがある。また、都心の一等地に本社を構えて、取引先の評価を高める効果を期待していることも背景にあるようだ。
こうした事情から東京都心のバーチャルオフィスは高い人気を集めている。だが、実態のない名目上の登記上住所に目を奪われ、取引上のトラブル発生を懸念する声も少なくない。さらに、営業実態のないペーパーカンパニーもある。バーチャルオフィスを本拠地にした動きは、一過性のブームか判断できないが、それ以上に企業の事業実態を見極める姿勢が必要だろう。
※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)が保有する約400万社の企業データを登記上住所ごとに集計した。
登記上住所がビルの場合、ビル単位で同一住所と定義した。本調査の発表は今回が初めて。
同じ住所の本社 最多は4,535社、上位10地点はすべて東京都が占める
法人登記が最も多い住所は、「東京都港区南青山2-2-15」に所在するビルで、4,535社ある。東京メトロや都営地下鉄の駅にほど近いビルで、バーチャルオフィスが所在する。大半は同所のサービスを利用して登記上本社を置くが、実質上本社地などは判然としない。
2位は港区の「東京都港区浜松町2-2-15」で3,293社。3位は「渋谷区神宮前6-23-4」で3,008社が登記上本社としている。上位は港区や渋谷区、新宿区などが並び、10位までを東京都が占めた。
上位10位のうち9カ所にバーチャルオフィス、残り1カ所に会計事務所が所在する。会計・財務コンサルティングを手掛ける一環で、特定目的会社(SPC)など多数の法人が登記されている。
東京都以外では、11位に「大阪府大阪市北区梅田1-2-2」が1,312社、13位に「大阪府大阪市北区梅田1-1-3」が1,076社で入り、いずれもバーチャルオフィスが所在する。
同一代表者が兼任する最多は628社
同一住所で、同一人物とみられる代表者が兼任する法人数を集計した。
1位は「東京都新宿区西新宿3-9-3」で、一人の代表が628社の代表を兼任している。
同一住所で100社以上の代表を兼任するのは21名だった。そのうち、2名は法人が代表となっている。
20位までの18カ所を東京都が占めた。東京都以外では、7位の「兵庫県神戸市中央区雲井通1-1-1」で258社、20位の「愛知県岡崎市大平町字市木28」で108社を経営する代表者が入った。
上位にはバーチャルオフィスが所在しない住所も多い。金融や投資、不動産開発などの事業を展開する同一人物が、同一住所で多数の法人を登記しているようだ。
法人登記数の多い住所 情報通信業の構成比高い
産業別の構成比では、サービス業他が法人登記数1,000社以上で平均42.5%、100社以上1,000社未満で平均41.0%とそれぞれ40%台で最多だった。登記数1,000社以上と1,000社未満の住所別で差は1.5ポイントと僅差にとどまり、法人登記数による差はなかった。
次いで、情報通信業が1,000社以上の住所で28.1%、100社以上1,000社未満で19.0%を占め、いずれも2番目に多かった。1,000社以上が9.1ポイント高く、10産業の中で最も差が開いた。
IT関連業種は、「遊牧民のような働き方」を示す“ノマドワーカー”に代表されるように、新興企業の代表者が一人か数人で事務所を構えずに稼働し、固定費を抑えるためにバーチャルオフィスを利用する割合が高いとみられる。
法人登記数100社以上の住所は東京に8割集中
100社以上の法人が登記されている住所は、関東が406カ所(構成比86.3%)で、約9割と一極集中している。次いで、近畿42カ所(同8.9%)、中部と九州が各10カ所(同2.1%)、北海道と東北が各1カ所で続く。北陸と中国、四国では100社以上が登記されている住所がなかった。
都道府県別では、東京都が378カ所(同80.4%)で8割を占めた。次いで、大阪府33カ所(同7.0%)、神奈川県21カ所(同4.4%)、愛知県10カ所(同2.1%)、福岡県9カ所(同1.9%)の順。100社以上の法人が登記されているのは12都道府県で、35県には存在せず大都市圏に限定した分布となっている。