• TSRデータインサイト

「人材派遣業」は大手企業がシェア席巻 黒字企業が8割も、コロナ後初の減益

全国1,497社「人材派遣業」業績動向調

 深刻な人手不足と賃上げを背景に、転職市場が活況を呈している。だが、その一方で人材派遣業は、人手不足による人件費上昇などで利益が追い付かず、大手と中小事業者の業績格差が年々拡大している。
 全国の人材派遣業1,497社の2023年度の売上高合計は4兆6,624億円(前年度比6.0%増)で、利益合計は1,508億円(同7.5%減)と増収減益だった。
 損益別では、約8割の1,191社(構成比79.5%)が黒字を確保した。だが、赤字企業は構成比20.4%(306社)で、2021年度の17.6%(264社)から2.8ポイント上昇し、ジワリと赤字企業が増えている。

 東京商工リサーチ(TSR)は、全国の人材派遣業1,497社を対象に、業績動向を調査した。
売上高100億円以上は69社(構成比4.6%)と5%に満たないが、売上合計は3兆675億円で全体の65.7%を占める。一方、売上高5億円未満は787社(同52.5%)と半数を超えるが、売上合計は1,436億円と全体の3.0%にとどまり、一部の大企業が業界を牽引する構図ができている。
 利益面はさらに規模格差が鮮明で、100億円以上の69社は1,133億円(構成比75.1%)に対し、5億円未満の787社は22億円(同1.4%)と、極端な開きができている。
 顧客企業のニーズは複雑化し、かつ高度化が進んでいる。人材派遣事業者は、高いスキルを持つ専門人材の確保や外国人材への対応、スポットワークをはじめとした新たな競合の出現など、人手不足の時代に入り新たな課題を突き付けられている。
 ※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)から、日本産業分類(細分類)の「労働者派遣業」を対象に、2023年度の業績(2023年4月期~2024年3月期決算)を最新期とし、5期連続で売上高、利益が判明した1,497社を抽出、分析した。


売上高は増加傾向が続く

 全国の人材派遣業1,497社の2023年度の売上合計は、4兆6,624億4,000万円(前年度比6.0%増)、最終利益合計は1,508億円(同7.5%減)で、増収減益だった。売上合計は増収が続き、業界の活況を示している。

 だが、運営コスト上昇に加え、派遣人材の確保や事務コスト上昇などが重なり、2023年度の最終利益は、減益だった。


売上高5億円未満が約5割

 売上高別の社数構成比は、1億円以上5億円未満513社(構成比34.2%)が最多。次いで、10億円以上50億円未満が326社(同21.7%)、1億円未満が274社(同18.3%)と続く。
 5億円未満が全体の約5割(同52.5%)を超え、100億円以上のひと握りの大手と地域や専門性に特化した中小・零細規模に二分化した構造になっている。


人材派遣業の業績


「人材派遣業」倒産・休廃業 新設法人の設立数を10年連続で下回る

 2023年の「人材派遣業」の倒産は78件、休廃業は232件、合計310社だった。10年連続で新設法人数を下回り、新規参入の増加が過当競争を招く市場環境にある。

 ただ、倒産は穏やかに推移するが、大手より体力の劣る中小・零細事業者は、人手の確保が難しくなっており、廃業や倒産に追い込まれる可能性が高まっている。

「人材派遣業」倒産、休廃業・解散、新設法人 社数推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

2

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均1ドル=141.6円 前期比1.9円円高を想定、4期ぶり円安にブレーキ

主な株式上場メーカー98社の2025年度決算(2026年3月期)の期首ドル想定為替レートは、1ドル=140円が48社(構成比48.9%)と約5割にのぼった。平均値は1ドル=141.6円で、前期に比べ1.9円の円高となった。

3

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

日産自動車の役員報酬1億円以上開示は5人 内田前社長の報酬額は3億9,000万円

 経営再建中の日産自動車が、2025年3月期決算の有価証券報告書を提出した。報酬額1億円以上の個別開示の人数は5人で、前年と同数だった。

5

  • TSRデータインサイト

2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多の189件、漏えい情報は1,586万人分

2024年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は、189件(前年比8.0%増)で、漏えいした個人情報は1,586万5,611人分(同61.2%減)だった。 事故件数は調査を開始した2012年以降、2021年から4年連続で最多を更新した。

TOPへ