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1-10月の「新聞販売店」倒産40件で年間最多を更新中 部数減や折込み広告が減少、人手不足とコストで逆風続く

2024年1-10月「新聞販売店」倒産状況

 「新聞販売店」の倒産が2024年1-10月で40件(前年同期22件)に達した。すでに6月で30件発生し、年間最多だった2014年と2019年の29件を抜いたが、8月以降も増勢が続き最多件数を更新している。
 地区別では、人口が多い関東が22件(前年同期比69.2%増)、近畿が8件(同700.0%増)、中国が4件(同300.0%増)と、3地区で全体の85%を占める。一方、北陸、四国、九州はゼロだった。

 新聞の発行部数は、日本新聞協会の資料によると2023年(10月時点)は約2,859万部で、2000年(約5,370万部)に比べほぼ半減(46.7%減)した。また、日本ABC協会が公表した2024年6月度のABC部数で、毎日新聞が150万部を下回ったことも明らかになった。
 今年10月からは毎日新聞と産経新聞が富山県での配送を休止した。また、北海道新聞スポーツが2022年11月末、西日本新聞スポーツが2023年3月末をもって、それぞれ紙媒体の発行を休止しウェブ媒体のみに移行、東京中日スポーツも2025年1月末をもって電子版のみに移行する。新聞の購読部数減は、新聞販売店の経営に直結する。部数が落ち込んだ地域では特定新聞を宅配する「専売店」から、特定新聞と他紙を扱う「複合店」、すべての新聞を扱う「合売店」など、効率経営を模索しているが、倒産の急増は苦境からの転換が容易ではないことを示している。
 新聞販売店は部数減に加え、重要な収入源である折込み広告収入も落ち込んでいる。販売から配達まで人海戦術の労働集約型で、人手不足や人件費と配達コストの高騰が経営を直撃している。
 このため地域密着の強みを活かし、商品販売や高齢者住宅の見回り、配送サービスなど、事業転換を図る動きもあるが、どこまで本業不振をカバーできるか注目される。

※本調査は、日本標準産業分類の「新聞小売業」の負債総額1,000万円以上の倒産を集計、分析した。

新聞販売店の倒産 年次推移



✔原因別は、「販売不振」が29件で最多。「既往のシワ寄せ」7件で続く。次いで、代表が兼任する事業に連鎖した「他社倒産の余波」3件、代表者死亡など「その他(偶発的原因)」が1件。
✔形態別は、「破産」が39件で全体の97.5%を占めた。このほか、「取引停止処分」が1件。
✔負債額別は、「1千万円以上5千万円未満」の28件が最多で、7割(同70.0%)を占めた。次いで、「5千万円以上1億円未満」が9件、「1億円以上5億円未満」が3件。5億円以上の倒産は1995年(1件)以来、発生していない。
✔従業員数別は、「5人未満」が28件で最も多く、7割(構成比70.0%)を占めた。このほか、「5人以上10人未満」が7件、「10人以上20人未満」が3件、「20人以上50人未満」が2件。
✔都道府県別では、東京都7件が最多。神奈川県が6件、埼玉県が5件、大阪府が4件で続く。

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