• TSRデータインサイト

2024年3月期「中小企業等向け貸出」 過去最高の374兆円、貸出比率 佐賀共栄銀行が95.43%でトップ

国内106銀行「中小企業等・地方公共団体向け貸出金残高」調査


 中小企業向け貸出が大幅に伸び、過去最高を記録した。国内106銀行の2024年3月期の総貸出金残高は、3月期では集計を開始した2010年以降で最高の551兆6,874億円(前年比4.0%増)だった。
 このうち、中小企業等向け貸出は374兆1,134億円(同4.0%増)で、過去最高を記録した。ただ、地方公共団体(以下、地公体)向け貸出は39兆1,401億円(同0.6%減)にとどまった。前年を下回るのは、2010年以降で初めて。企業の資金需要が活発になるなか、過剰債務を抱えた企業は多く、金融機関は企業支援への取り組みと事業性評価の見極め能力が問われている。

 銀行貸出は、大手行が前年比5.0%増、地方銀行が同3.3%増、第二地銀が同2.5%増と全業態で増えた。ただ、中小企業向け貸出は総貸出金残高の67.81%にとどまり、3月期では2010年以降で最低水準だった。また、地公体向けは7.09%(前年7.43%)で、2年ぶりに前年を下回った。地公体向け貸出は貸倒リスクが低い一方、低金利で経費負担も大きく、収益確保のために貸出を敬遠する銀行もあるようだ。

 負債1,000万円以上の企業倒産は、2024年8月に29カ月ぶりに前年同月を下回ったが、2024年の年間倒産は2013年以来、11年ぶりに1万件台に乗せる可能性がある。4月にゼロゼロ融資の返済が最後のピークを迎えたが、円安や物価高、人件費上昇、金融機関の貸出金利引き上げなど、企業の資金負担は増大している。また、過剰債務を抱えて新たな資金調達が難しい企業も多く、企業の経営再建・事業再生、廃業支援に銀行の存在価値を示す時期を迎えている。

※本調査は、国内銀行106行の2024年3月期決算の「地方公共団体向け」と「中小企業等向け」の貸出金残高を前年と比較、分析した(りそな銀行、沖縄銀行は信託勘定を含む)。「中小企業等」には、個人向け貸出を含む。

貸出比率推移


中小企業等向け貸出 佐賀共栄銀行が貸出比率95.43%でトップ

 総貸出に占める中小企業等向け貸出比率は、佐賀共栄銀行が95.43%(前年94.41%)でトップだった。調査を開始した2010年以降、初めてトップになった。以下、神奈川銀行95.11%(同94.41%)、スルガ銀行93.98%(同94.71%)、南日本銀行93.68%(同93.76%)、静岡中央銀行92.18%(同94.03%)と第二地銀が多い。最低は東邦銀行の49.89%(同49.38%)で唯一、50%を下回った。
 中小企業向け貸出比率の上昇は、大手行7行では2行にとどまった。一方、地方銀行は62行のうち37行(構成比59.6%)、第二地銀が37行のうち22行(同59.4%)と半数を超えた。
 上場企業、大手企業への貸出が主体の大手行と、中小企業がメインの地方銀行・第二地銀で貸出比率に差が生じている。
 コロナ禍からの業績回復が遅れ、過剰債務の解消も後回しの中小企業は多い。経営の問題点を把握と対応について、金融機関と企業のコミュニケーションがより重要になっている。


2024年3月期 中小企業等向け貸出金残高調査

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

モームリ運営会社、退職代行サービスの営業再開を発表

4月23日、退職代行サービス「モームリ」を運営する(株)アルバトロス(TSRコード:694377686、横浜市)はモームリの再開を発表した。なお、アルバトロスの代表取締役には谷本慎二氏に代わって浜田優花氏が4月1日付で就任している。

2

  • TSRデータインサイト

「在留資格の厳格化」 企業の5%が廃業検討 ビザの厳格化で、外国人企業の半数近くが影響

「経営・管理」の在留資格の厳格化の影響が広がっている。2025年10月許可基準が見直しされ、従来の資本金要件が500万円から3,000万円以上へ6倍に引き上げられた。さらに、これまでなかった申請者又は常勤職員のいずれかが日本語能力を有するなどの要件も加わり関係企業は対応を迫られている

3

  • TSRデータインサイト

「退職代行」からの連絡、企業の3割取り合わず 有給や退職日の交渉などの通知を3割が経験

ことし2月、大手退職代行サービスの代表らが弁護士法違反の疑いで逮捕された。4月に入り、退職代行の話題も出始めたが、弁護士や労働組合以外の「退職代行」業者から連絡があっても、3割(30.4%)の企業が非弁行為が含まれる可能性があり、取り合わないことがわかった。

4

  • TSRデータインサイト

ケフィア事業振興会、破産配当率は約1.1% ~ 「オーナー商法」破産から7年、約3万人に配当 ~

「オーナー商法」として社会問題化し、出資法違反で逮捕者も出した(株)ケフィア事業振興会(TSRコード:298080745)の破産手続きが終結に近づいている。破産管財人の資料によると、ケフィア事業振興会の配当率は約1.1%で、金額は11億円を超える配当になる見込みだ。

5

  • TSRデータインサイト

2026年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 金利引き上げ、窮境にある企業がより窮境に ~

東京商工リサーチ(TSR)・分析チームによる最新結果が出た際、思わず口をついた言葉だ。TSRが保有する財務データ(決算書)を基に経営が苦しいと思われる企業をゾンビ企業と定義して分析した。財務データが出揃った2024年度は、直近10年で最悪となった。

TOPへ