• TSRデータインサイト

2024年度上半期の「粉飾決算」倒産 11件 再生支援を求めて「粉飾告白」が急増

2024年度上半期(4-9月)「粉飾決算」倒産


 赤字決算を黒字に偽ったり、売上の過大な水増しや資金の不正流出などを隠ぺいする「粉飾決算」の発覚による倒産が急増している。特に、コロナ禍の業績悪化を隠ぺいして事業再生を目指す企業で目立ち、2024年度上半期(4-9月)は11件(前年同期比120.0%増)と、前年度同期の2.2倍に増えた。
 コロナ禍の資金繰り支援で隠れていた粉飾決算が、事業継続を求めて金融機関などに支援を要請する際に発覚したり、粉飾決算を告白するケースが目立つ。

 年度上半期の企業倒産は、負債1億円未満が7割(構成比75.1%)を占めた。だが、「粉飾決算」倒産はすべて負債1億円以上で、10億円以上が8割以上(同81.8%)に達するのが特徴だ。

 粉飾決算は優良企業を装い、金融機関の貸出を増やしたい心理につけ込む。金融機関は正常先として扱い貸出を増やすため、借り手は多額の資金調達が可能で倒産時に負債が膨れあがる。

 企業と金融機関の取引関係は、信用で成り立つ。ただ、粉飾決算が発覚すると信頼関係は崩れ、経営再建に向けて金融機関の支援を取り付けることは難しくなる。その結果、消滅型の「破産」が8件(前年同期比300.0%増)と全体の7割(72.7%)に達する。

 金融機関の貸出は、事業性評価を判断する経験や「目利き力」よりも、決算数値の定量分析に頼る部分が多い。粉飾決算は経済犯罪という認識の定着と同時に、与信判断は定量分析と定性分析、そして取引先とのコミュニケーションを図ることが重要だ。 

※本調査は、2024年度上半期(4-9月)の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「粉飾決算」関連倒産を集計・分析した。
※本調査の「粉飾決算」は、倒産後の発覚でなく、粉飾決算の発覚による信用低下で倒産したケースを対象に集計した。


「粉飾決算」倒産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【TSRの眼】「トランプ関税」の影響を読む ~ 必要な支援と対応策 ~

4月2日、トランプ米国大統領は貿易赤字が大きい国・地域を対象にした「相互関税」を打ち出し、9日に発動した。だが、翌10日には一部について、90日間の一時停止を表明。先行きが読めない状況が続いている。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 インバウンド需要と旅行客で絶好調 稼働率が高水準、客室単価は過去最高が続出

コロナ明けのインバウンド急回復と旅行需要の高まりで、ホテル需要が高水準を持続している。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2024年10-12月期の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、前年同期を上回った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年度の「後継者難」倒産 過去2番目の454件 代表者の健康リスクが鮮明、消滅型倒産が96.6%に 

2024年度の後継者不在が一因の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、過去2番目の454件(前年度比0.8%減)と高止まりした。

5

  • TSRデータインサイト

2025年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 調達金利の上昇は致命的、企業支援の「真の受益者」の見極めを ~

ゾンビ企業は「倒産村」のホットイシューです、現状と今後をどうみていますか。 先月、事業再生や倒産を手掛ける弁護士、会計士、コンサルタントが集まる勉強会でこんな質問を受けた。

TOPへ