• TSRデータインサイト

2024年度上半期「人手不足」関連倒産 148件 上半期で初の100件超、収益改善が早急な課題に

2024年度上半期(4-9月)の「人手不足」関連倒産


 2024年度上半期(4-9月)の「人手不足」関連倒産は、148件(前年同期比80.4%増)で、前年同期の1.8倍に急増した。集計を開始した2013年度以降、初めて100件を超えた。
 内訳は、「求人難」が57件(前年同期比67.6%増)、「人件費高騰」が56件(同86.6%増)、「従業員退職」が35件(同94.4%増)で、すべての要因が年度上半期で最多だった。特に、賃上げが広がるなかで、経営実態に見合わない背伸びした賃上げが資金繰りを圧迫した「人件費高騰」が深刻さを増している。

 産業別は、金融・保険業と不動産業を除く8産業で前年同期を上回った。2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された建設業は47件(前年同期比147.3%増)で最多だった。次いで、サービス業他43件(同72.0%増)、運輸業28件(同47.3%増)と、労働集約型産業で目立った。
 資本金別は、1千万円未満が90件(同80.0%増)と6割(構成比60.8%)を占めた。
 形態別は、破産が143件(同83.3%増)で9割超(構成比96.6%)を占めた。業績改善が遅れ、資金的・人的なリソースを確保できない企業ほど経営再建への取り組みが困難で、破産を選択せざるを得ない状況に追い込まれている。

 今後は、原材料や資材、エネルギーなどの価格上昇に加え、借入金利も上昇局面を迎えている。一方で、人材確保や従業員の退職回避のための賃上げも避けられず、売上増、コスト上昇、賃上げが三すくみ状態で張り付いている。「適切な賃金」は「適切な利益」に基づく原点に立ち返り、中小・零細企業でも適切な価格転嫁ができる環境醸成が急務になっている。

※本調査は、2024年度上半期(4-9月)の全国企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「人手不足」関連倒産(求人難・従業員退職・人件費高騰)を抽出し、分析した。(注・後継者難は対象から除く)

「人手不足」関連倒産推移(4-9月)

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】マツオインターナショナル~膨らんだ債務と抜本再生への移行~

婦人服ブランド「ヴィヴィアン タム」「慈雨(じう)」「t.b2」などを展開し、ピーク時には国内外で約400店を構えていたマツオインターナショナル(株)(TSRコード:292635265、以下マツオ)が12月11日、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。

2

  • TSRデータインサイト

交響楽団の収益悪化、来場者戻らずコスト上昇 ~ 綱渡りの自助経営、草の根のムーブメントへの期待 ~

交響楽団が存立の危機に立たされている。多くの交響楽団で収入が落ち込んでおり、赤字が目立つ。会場費や団員などの人件費、楽器の輸送コストなどが上昇のうえ、寄附金や補助金による収入は頭打ちで綱渡りの運営だ。東京商工リサーチは、3期連続で業績が比較できる20団体を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

地場スーパー倒産 前年同期の1.5倍に大幅増 地域密着型も値上げやコスト上昇に勝てず

2025年1-11月の「地場スーパー」の倒産が22件(前年同期比46.6%増)と、前年同期の約1.5倍で、すでに前年の年間件数(18件)を超えた。

4

  • TSRデータインサイト

長渕剛さん側、イベント会社の破産申立に続き代表を刑事告訴 ~長渕さん「徹底追求」、イベント会社代表「横領でない」と反論~

歌手の長渕剛さんが代表を務める個人事務所の(株)オフィスレン(渋谷区)が、イベント運営を委託していたダイヤモンドグループ(株)(東京都中央区)の代表を業務上横領罪で刑事告訴したことがわかった。東京商工リサーチの取材で長渕さん側が明らかにした。

5

  • TSRデータインサイト

「ペット・ペット用品小売業」倒産が過去2番目の14件 実質賃金の低迷と物価高がペットの世界にも影響

2025年11月の「ペット・ペット用品小売」の倒産は、1件(前年同月ゼロ)にとどまったが、1-11月累計は14件(前年同期比27.2%増)に達した。

TOPへ