• TSRデータインサイト

2024年8月の「負債1,000万円未満」倒産44件 5カ月連続で増加、小・零細企業の苦境を浮き彫りに

2024年8月「負債1,000万円未満」倒産状況


 2024年8月の負債1,000万円未満の倒産は44件(前年同月比18.9%増)で、今年に入り2月と3月以外の6カ月で前年同月を上回った。コロナ関連の支援策が今年6月末で縮小・終了したなか、負債1,000万円以上の倒産は29カ月ぶりに減少した。一方で、同1,000万円未満は4月から5カ月連続で前年同月を上回っており、小・零細企業の苦境が浮き彫りとなった。

 産業別は、最多が飲食業5件を含むサービス業他の19件(前年同月比±0.0%)。以下、小売業の8件(同14.2%増)、建設業の7件(同75.0%増)の順。
 原因別は、販売不振が31件(同47.6%増)で、7割(構成比70.4%)を占めた。
 資本金別は、1百万円以上5百万円未満19件(前年同月比46.1%増)など1千万円未満(個人企業他を含む)が38件(同11.7%増)と、8割以上(構成比86.3%)に達した。
 形態別は、破産が43件(前年同月比19.4%増)で、ほとんどが消滅型の倒産だった。

 負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業が大半で、金融支援に依存した経営を続けてきた。政府は今年6月、コロナ前の水準に戻して、経営改善・再生支援に重点を置く支援を打ち出し、コロナ借換保証などの支援は終了した。
 9月のドル円レートは、1ドル=144円を挟んだ推移で、一時に比べ円高で展開している。ただ、物価高は是正されず、人件費の上昇や人手不足が企業活動の足かせになっている。今後、金融機関の貸出金利が引き上げられるだけに、収益力が脆弱で、独自の事業再生への取り組みが難しい小・零細企業には、金融機関などの支援が欠かせない。


※本調査は、2024年8月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

負債1,000万円未満の倒産 件数推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

3

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

4

  • TSRデータインサイト

銭湯の利益6割減、値上げは諸刃の剣 独自文化の維持へ模索続く

木枯らし吹きすさぶなか、背中を丸めながら洗面器を抱えて銭湯に…。寒くなると銭湯が恋しくなるのは、いつの時代も変わらない。サウナブームで光明が差すように見える銭湯だが、実際はそうではない。

5

  • TSRデータインサイト

「退職代行」による退職、大企業の15.7%が経験 利用年代は20代が約6割、50代以上も約1割

「退職代行」業者から退職手続きの連絡を受けた企業は7.2%で、大企業は15.7%にのぼることがわかった。退職代行はメディアやSNSなどで取り上げられ、代行利用や退職のハードルが下がり、利用者も増えている。

TOPへ