代表者が高齢の企業ほど財務内容が悪化 黒字企業率は40代78.7%、70代72.7%
「代表者の年代別財務分析」調査
代表者が高齢になるほど業績は悪化する傾向が強いことがわかった。黒字企業率は40歳未満が78.2%、40歳代は78.7%に対し、70歳代は72.7%、80歳以上は68.8%と下がってくる。
東京商工リサーチが保有する財務データベースから、代表者の年齢別に財務内容を分析した。代表者が高齢になるほど業績が伸び悩む傾向が表れ、早期の事業承継への取り組みが重要になる。
資本金1億円以上の大企業は、代表者が高齢ほど黒字企業率が高い。業歴の長い老舗企業では代表者の経験や利益を生み出す経営基盤が整っていることが要因として挙げられる。
一方、資本金1億円未満は、代表者が高齢であるほど黒字企業率が鮮明に低下する。国内企業の99%を占める中小・零細企業では、代表者が高齢であるほど長期を見据えた経営判断をとりにくく、業績低迷を招く一因になっていると考えられる。
年齢別の経常利益率(中央値)は、40歳未満3.0%、40歳代2.6%に対し、70歳代2.4%、80歳以上1.9%と、黒字企業率と同様に代表者が高齢の企業ほど悪化した。
産業別では、40歳未満の経常利益率が高かったのは、製造業3.3%、卸売業2.3%、サービス業他3.9%など。ただ、保有資産で収益が左右されやすい金融・保険業、不動産業は、代表者が高齢であるほど利益率が高い傾向を示した。
物価高や人手不足に苦しむ企業が多いなか、為替や金利も変化の時代を迎えて事業環境は過渡期に入っている。代表者が高齢の企業ほど長期的な設備投資や経営改善に消極的になりやすく、環境変化への対応が進みにくい。「身売り」同然の事業譲渡を防ぎ、早期の事業承継に着手するためには、金融機関と信頼関係を深め、政府や自治体などの支援で円滑な事業承継を後押しすることが求められる。
※本調査は、東京商工リサーチが保有する財務データベースから、2023年4月期-2024年3月期を2023年度とし、売上高、経常利益、当期利益が確認できた企業(変則決算を除く)を対象に、代表者の年齢別で黒字企業率、経常利益率を集計した。
代表者の年齢が若いほど黒字企業率が高い
2023年度(2023年4月期-2024年3月期)を最新期とし、4期連続の財務データが比較可能な20万7,526社について、代表者の年齢別で黒字企業率(当期利益)を算出した。
2023年度の黒字企業率トップは、40歳代の78.7%だった。次いで、40歳未満が78.2%、50歳代が77.6%と続き、60歳未満の3レンジが上位を占めた。
最も年齢が高い80歳以上では、黒字企業率は68.8%と唯一、7割を下回った。代表者の年齢が高くなるほど、黒字企業率は低下傾向にある。
コロナ禍の2020年度から黒字企業率の推移をたどると、60歳代以下のレンジでは回復傾向にあり、2023年度の黒字企業率はコロナ禍に突入した2020年度を上回る。
一方、70歳代、80歳以上は、2021年度にいったん回復したが、以降は悪化し2023年度の黒字企業率は2020年度を下回った。
【資本金・代表者年齢別黒字企業率】
大企業では代表者が高齢ほど黒字率が高く、中小・零細企業では若いほど黒字率が高い
2023年度決算の28万1,978社を対象に資本金、代表者の年齢別で黒字企業率を算出した。
資本金1億円以上では、80歳以上の黒字企業率が90.5%でトップになり、年齢が高いほど黒字企業率も高い傾向が表れた。
資本金1億円以上の大企業は、日本を代表する老舗企業も多い。経営基盤が整っていることや、長きにわたり統率をとってきた経験値の差が表れている可能性がある。
一方、資本金1千万円以上1億円未満は40歳代の81.6%、同1千万円未満・個人企業他では40歳未満の72.2%が、それぞれ黒字企業率の最大となった。中小・零細企業では代表者の年齢が若いほど黒字企業率が高く、大企業とは対照的な結果となった。
【産業・代表者年齢別黒字企業率】 40歳未満の黒字企業率が高い産業トップは不動産業
40歳未満の黒字企業率が最大だった産業は、不動産業84.1%、運輸業82.4%、サービス業他76.8%。続いて、40歳代が最大の産業は、建設業76.3%、卸売業84.3%、小売業75.7%だった。
10産業のうち6産業で、代表者が比較的若い50歳未満のレンジで黒字企業率が最大となった。
80歳以上の黒字企業率が最大だったのは、金融・保険業の81.8%のみ。 70歳代はなかった。
代表者の年齢が高いほど黒字企業率が低下する産業が多いなか、金融・保険業と情報通信業は、代表者が若い企業で黒字企業率が低く、70歳代・80歳以上の黒字企業率が他の年齢レンジと比較して落ち込んでいない。
代表者が若いほど経常利益率は高い
代表者の年齢別でみた経常利益率(中央値)は、2023年度は40歳未満が3.0%で最も高かった。次いで、40歳代が2.66%と続き、黒字企業率と同様に代表者が若い企業で経常利益率が高かった。
70歳代、80歳以上では、2023年度の経常利益率が、コロナ禍に突入した2020年度を下回った。
代表者の年齢1歳ごとに最新期の経常利益率(中央値)を点で示した散布図では、代表者が高齢になるほど利益率は右肩下がりに低下する傾向を示している。
【産業・代表者の年齢別経常利益率】 製造業、卸売業、サービス業他で40歳未満が高い
40歳未満で経常利益率(中央値)が最高だった産業は、製造業3.3%、卸売業2.3%、サービス業他3.9%。続いて、40歳代で最高だった産業は建設業2.5%だった。
一方、80歳以上が最高だったのは、金融・保険業10.3%、不動産業11.0%。内訳は、金融・保険業では「金融商品取引業,商品先物取引業」、不動産業では「不動産賃貸業・管理業」で代表者が高齢の企業の利益率が高い。こうした業種では、保有資産の状況で収益が左右されやすく、代表者が高齢であるほど長年保有・運用した資産が多く、利益率が高めやすいと考えられる。