代表者が交代した企業 6万6,862社 交代企業の平均年齢16.7歳若返る
~ 2024年「代表者交代」調査 ~
代表者の高齢化に伴い、スムーズな事業承継が経営上の重要課題に浮上している。2023年から2024年に、代表者が交代した企業は全国で6万6,862社だった。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースに登録された約157万社の4.2%だった。代表者の交代前の平均年齢は71.1歳だったが、交代後は54.4歳と一気に16.7歳の若返りが進んだ。
代表者が交代した企業の約9割(85.8%)で代表者の年齢が若くなった。特に、代表者年齢の若返りゾーンは「20~30歳」マイナスが最多の25.6%で、世代交代の加速を示している。
TSRが2023年11月に実施した「後継者不在率調査」で、代表者の年齢が60歳を超えると「後継者が不在」の企業が、「後継者有り」の企業を上回り、60歳以上では後継者不在率は46.1%と半数近くにのぼる。また、2023年の「休廃業・解散」企業の社長年齢は平均72.0歳で、代表者が70歳を超えると「赤字」や「減収企業」の構成比が他の年代より高まる傾向がある。先行投資や人員計画など、将来を見据えた生産性向上などの効率経営に消極的になることが背景にある。
代表者交代の社数は、2014年から2019年は約21万社だったが、2019年から2024年は約26万社に増えており、代表者交代の時期に差し掛かっている企業が増加していることを物語る。円滑な事業承継には十分な準備期間が必要で、代表者交代の判断は50歳代が一つのターニングポイントかもしれない。ただ、代表者交代のタイミングは企業個別の事情もある。代表者の年齢を視野に入れ、適切な交代時期を探ることも、スムーズな事業承継に欠かせない。
※ 本調査は、TSR企業データベースのうち直近の業績などが確認できる157万社で、2023年8月から2024年7月に代表者交代が判明した企業を抽出し、分析した。
※ 姓名(漢字、カナ)、生年月日を比較し、代表者が変更されている企業を特定した。
2024年の代表者交代は6万6,862社、全体の4.2%
2023年から2024年に、代表者交代が判明した企業は全国で6万6,862社だった。TSR企業データベースに登録された約157万社の4.2%を占めた。
地区別では、最多が関東の2万4,724社(構成比36.9%)。次いで、近畿9,208社(同13.7%)、中部8,371社(同12.5%)、九州7,132社(同10.6%)と続き、最少は四国の2,046社(同3.0%)だった。交代社数は企業数が多いエリアに比例する結果となった。
全企業に対する代表者交代率は、最高が北陸の4.58%で、次いで、関東4.55%、北海道4.49%、東北4.27%の4地区が全国平均(4.24%)を上回った。一方、交代率の最低は、四国の3.55%で、近畿3.83%と合わせた2地区が3%台だった。
【産業別】社数はサービス業他が最多、交代率では金融・保険業がトップ
産業別で、最も代表者の交代が多かったのは、サービス業他で2万3,472社(構成比35.1%)だった。次いで、建設業が1万1,157社(同16.6%)で続き、この2産業で半数を占めた。このほか、製造業8,393社(同12.5%)、卸売業6,199社(同9.2%)の順。
一方、最も少なかったのは、農・林・漁・鉱業で1,335社(同2.00%)、金融・保険業1,363社(同2.04%)、情報通信業2,583社(同3.8%)の順だった。
全企業に対する代表者の交代率は、交代企業数では2番目に少ない金融・保険業が8.5%でトップだった。次いで、運輸業5.9%、交代企業数が最少の農・林・漁・鉱業5.84%、情報通信業5.80%と続く。
一方、代表者の交代率の最低は、建設業の2.6%で、唯一の2%台だった。交代率最高の金融・保険業とは5.9ポイントの開きがあった。
【代表者年齢】交代企業は16.7歳若返る
代表者の変更に伴う年齢の変化をみると、最多は20~30歳若返った企業が3,712社(構成比25.6%)で、4分の1を占めた。
次いで、30~40歳の若返りが2,496社(同17.2%)、10~20歳の若返りが2,277社(同15.7%)と続く。
一方で、代表者の年齢が同じ、もしくは上昇した企業も2,053社(同14.1%)あった。
ただ、代表者交代は高齢化への対応が中心のため、全体では1万2,440社(同85.8%)で若返りが実現した。
代表者交代により、平均年齢は71.1歳から54.4歳に16.7歳若返った。
【代表者姓】同一姓への交代は3割超
代表者の氏名のうち、姓の変更状況を調べた。
代表者の姓が変更した企業は、4万2,630社(構成比63.7%)で、全体の6割を超えた。一方、同一姓への代表者交代は2万4,232社(同36.2%)だった。
同一姓の代表者交代は、多くが配偶者や子、子の配偶者など一族間での事業承継と推測される。TSRが2023年11月に実施した「後継者不在率調査」では、後継者がすでに決まっている企業のうち、「同族継承」を予定している企業は65.0%だった。だが、今回の調査では、異なる姓への事業承継が6割を超える結果となった。代表者の交代は、資産相続、税金、債務者保証、家業などの問題に加え、本質的な経営者としての資質もあり、一筋縄では決断できるものではない。
だが、代表者の高齢化は年々、全国で進んでいる。スムーズな事業承継には十分な準備期間を必要とすることからも、その判断は「待ったなし」の状況になっている。