企業の52.0%が昨年1月比でコストアップ「1割超」自社からの申し出で改定、最低は「運輸業」5.9%
~ 「価格改定に関するアンケート」調査 ~
円安、物価高で企業活動にかかわるコスト上昇が止まらない。東京商工リサーチ(TSR)が8月1日~13日までに実施した企業アンケートで、昨年1月と比較して主要な製品・サービスにかかわるコストが増加していると回答した企業は9割を超えた。昨年1月時点でも人件費や原材料価格の高騰、エネルギーコストの上昇に直面していたが、その後もコスト高が続き経営を圧迫していることが改めて浮き彫りとなった。
「コストが上昇していない」と回答した企業は8.4%にとどまり、9割を超える企業が原価抑制に苦慮している。また、コストが1割超上昇した企業が5割を超えた。業種も製造業、サービス業他、建設業、卸売業など多岐にわたる。企業活動を支える人件費をはじめ、原材料やエネルギーコストが、引き続き重くのしかかっていることを物語る。
コストが上昇する限り、適切な価格改定の取り組みは欠かせない。主要な製品やサービスの価格改定への交渉・調整は、「自社から販売先(得意先)への申し出」が交渉開始のトリガーとの回答が7割を超えた。一方で、「所属する業界団体・組合などを介する」は1割に届かず、立場的に弱い中小や下請企業の側に立った交渉の仕組み作りが急がれる。また、「販売先からの自社への申し出」をトリガーとする回答は2割程度だった。サプライチェーン維持や専属的な契約形態などが背景にあるとみられる。
※本調査は、2024年8月1日~13日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,083社を集計・分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
Q1.近年のコスト高について伺います。貴社の主要な製品・サービスにかかわるコストは昨年1月と比較して、何%上昇していますか?整数で回答ください。
◇「上昇」は91.6%
「10%以下(上昇していないは除く)」は39.5%(3,332社中、1,319社)だった。また、「10%超20%以下」は31.1%(1,038社)、「20%超30%以下」は12.6%(423社)と続く。「上昇していない」は、8.4%(280社)にとどまった。中央値は「15%」だった。
「20%超」と回答した企業を業種別(業種中分類、母数10以上)でみると、「情報通信機械器具製造業」が72.7%(11社中、8社)で最も割合が多かった。部材調達で為替の影響を受けやすい業種だ。次いで、旅行や葬儀、結婚式場業などが含まれる「その他の生活関連サービス業」の61.1%(18社中、11社)だった。
Q2.貴社の主要な製品・サービスの価格改定について伺います。販売先(得意先)へ価格改定について、交渉・調整はどのように実施されますか?(複数回答)
◇「自社から申し出」が大半
最多は「自社から販売先(得意先)への申し出で協議開始」の70.7%(5,083社中、3,598社)だった。価格改定に向けたアクションは、まずは自発的に動く商慣習が根付いているようだ。
また、「販売先(得意先)から自社への申し出で協議開始」は15.4%(784社)にのぼった。こうした形態は自社に価格決定権がない(もしくは弱い)ことも想定され、過当競争など値下げ局面では不利に働くこともある。一方、「自社が所属する業界団体・組合などを介して」は、「協議開始」が4.0%(207社)、「協議なく価格改定」は2.2%(116社)にとどまった。
「その他」では、「認めてもらえない。他にやるところあるぞ、と言われる」(建具工事業、資本金1億円未満)など。
産業別 運輸業は「販売先への申し出で価格改定」が最低
「自社から販売先(得意先)への申し出で協議開始」は運輸業や製造業で8割を超えた。
「自社から販売先(得意先)への申し出で価格改定」は運輸業が5.9%(236社中、14社)にとどまり、全産業で最低だった。燃料費の高止まりや人手不足が深刻だが、他社との競合のなかでは価格改定も容易ではないようだ。