• TSRデータインサイト

2024年7月の「物価高」倒産 69件 2024年は6月を除く6カ月で前年同月を上回る

~ 2024年7月 「物価高」倒産状況 ~


 2024年7月の「物価高」に起因する倒産は、69件(前年同月比18.9%増)だった。今年に入り、6月を除く6カ月で前年同月を上回り、物価上昇が企業経営に影響を及ぼしている。
 負債総額は192億1,800万円(同27.0%増)で、3カ月ぶりに前年同月を上回った。

 7月前半は一時、1ドル=161円94銭まで円安が進行したが、政府・日銀が5兆5,348億円(6月27日~7月29日における外国為替平衡操作額)の為替介入を実施し、7月31日には日銀の金融政策決定会合で政策金利の0.25%程度引き上げを決定。8月5日は一時、141円台まで急激な円高に振れた。
 ただ、加速する円高でも物価に直ちに反映される可能性は低く、企業の安定した収益確保にはしばらく時間を要する見込み。

 産業別では、最多は運輸業の16件(前年同月比14.2%増)。以下、製造業14件(同40.0%増)、建設業(同62.5%増)と卸売業(同160.0%増)が各13件の順。運輸業や製造業、建設業では、下請企業が多く、燃料や資材の価格上昇分を価格転嫁できない状況を映し出している。
 負債額は、負債1億円以上が47件(同80.7%増、構成比68.1%)を占めた。また、形態別では、破産が62件(同19.2%増、同89.8%)と圧倒的に多い。

 人材確保のための人件費上昇や借入返済に加えて、じわりと金利が上昇局面に入りつつあり、企業収益は圧迫感を増している。物価安定にはなお時間がかかるとみられ、コロナ禍からの業績回復が遅れた企業を中心に、物価高を一因とした倒産は増勢が続く見込み。

※本調査は、2024年7月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。


「物価高」倒産月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年3月期決算(6月20日時点) 役員報酬1億円以上の開示は117社・344人

2025年3月期決算の上場企業の株主総会開催が本番を迎えた。6月20日までに2025年3月期の有価証券報告書を510社が提出し、このうち、役員報酬1億円以上の開示は117社で、約5社に1社だった。

2

  • TSRデータインサイト

「想定為替レート」 平均1ドル=141.6円 前期比1.9円円高を想定、4期ぶり円安にブレーキ

主な株式上場メーカー98社の2025年度決算(2026年3月期)の期首ドル想定為替レートは、1ドル=140円が48社(構成比48.9%)と約5割にのぼった。平均値は1ドル=141.6円で、前期に比べ1.9円の円高となった。

3

  • TSRデータインサイト

代金トラブル相次ぐ、中古車販売店の倒産が急増

マイカーを売却したのに入金前に売却先の業者が破たん――。こうしたトラブルが後を絶たない。背景には、中古車価格の上昇や“玉不足”で経営不振に陥った中古車販売店の増加がある。倒産も2025年1-5月までに48件に達し、上半期では過去10年間で最多ペースをたどっている。

4

  • TSRデータインサイト

日産自動車の役員報酬1億円以上開示は5人 内田前社長の報酬額は3億9,000万円

 経営再建中の日産自動車が、2025年3月期決算の有価証券報告書を提出した。報酬額1億円以上の個別開示の人数は5人で、前年と同数だった。

5

  • TSRデータインサイト

2024年上場企業の「個人情報漏えい・紛失」事故 過去最多の189件、漏えい情報は1,586万人分

2024年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は、189件(前年比8.0%増)で、漏えいした個人情報は1,586万5,611人分(同61.2%減)だった。 事故件数は調査を開始した2012年以降、2021年から4年連続で最多を更新した。

TOPへ