• TSRデータインサイト

新型コロナ破たん 5月は274件が判明(5月31日現在)

 5月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が274件(前年同月比6.6%増)判明した。3月の月間件数は2023年3月の328件に次ぐ過去2番目の高水準だったが、4月は一転して減少。5月は再び増加へ転じた。これまでの累計は9,326件(倒産9,101件、弁護士一任・準備中225件)となった。
 倒産集計の対象外となる負債1,000万円未満の小規模倒産は累計448件判明した。この結果、負債1,000万円未満を含めた新型コロナウイルス関連破たんは累計で9,774件に達した。
 国内の企業数(358万9,333社、2016年総務省「経済センサス」)を基にした比率では、コロナ破たん率は0.272%で500社に1社が破たんした計算となる。都道府県別で最も比率が高いのは東京都の0.477%、次いで福岡県の0.408%、宮城県の0.407%、群馬県の0.339%、大阪府と栃木県の各0.335%と続く。一方、最低は高知県の0.115%で、地域によってばらつきがある。
 脱コロナが進む一方で、コロナ禍の後遺症に苦しむ企業は多い。コロナ関連融資の返済や公租公課の支払いを前に資金繰りを維持できないケースが頻発している。コロナ関連破たんは一進一退を続けながらも、引き続き月間200件超えの水準で断続的に発生する可能性が高い。

【都道府県別】(負債1,000万円以上) ~ 300件以上は8都道府県 ~

 都道府県別では、東京都が1,897件と全体の2割強(構成比20.3%)を占め、突出している。以下、大阪府870件、福岡県525件、愛知県458件、兵庫県414件、神奈川県388件、北海道382件、埼玉県321件と続く。
 300件超えが8都道府県、200件~300件未満が6府県、100件~200件未満も7県に広がっている。一方、10件未満はゼロで、最少は鳥取県の20件。

【業種別】(負債1,000万円以上)~最多は飲⾷業の1,520件、建設、アパレル、食品関連が続く~

 業種別では、コロナ禍での来店客の減少に加え、食材や光熱費高騰の負担も重い飲食業が最多で1,520件に及ぶ。客足は戻っても売上の回復に至らず、経営体力の消耗による破綻や、あきらめ型が多い。
 次いで、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が1,133件に達した。このほか、小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)の658件。飲食業などの不振に引きずられた飲食料品卸売業が370件、食品製造が282件、扱い量の減少などが響いた貨物自動車運送業が266件、インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響したホテル,旅館の宿泊業が243件と、上位を占めている。

【負債額別】(負債1,000万円以上)

 負債額が判明した9,267件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の3,643件(構成比39.3%)、次いで1億円以上5億円未満が2,857件(同30.8%)、5千万円以上1億円未満が1,877件(同20.2%)、5億円以上10億円未満が473件(同5.1%)、10億円以上が417件(同4.4%)の順。
 負債1億円未満が5,520件(同59.5%)と約6割を占める。一方、100億円以上の大型破たんも23件発生しており、小・零細企業から大企業まで経営破たんが広がっている。

【形態別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した9,101件の形態別では、破産が8,232件(構成比90.4%)で最多。次いで取引停止処分が348件(同3.8%)、民事再生法が265件(同2.9%)、特別清算が226件、内整理が23件、会社更生法が7件と続く。
 「新型コロナ」関連倒産の9割超を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は約3%にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
 先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。

【従業員数別】(負債1,000万円以上)

 「新型コロナ」関連破たんのうち、従業員数(正社員)が判明した9,111件の従業員数の合計は7万9,213人にのぼった。平均すると1社あたり約9人となる。
 9,111件の内訳では従業員5人未満が5,501件(構成比60.3%)と、6割を占めた。次いで、5人以上10人未満が1,707件(同18.7%)、10人以上20人未満が1,052件(同11.5%)と続き、従業員数が少ない小規模事業者に、新型コロナ破たんが集中している。
 また、従業員50人以上の破たんは2022年は上半期で24件で、下半期も31件判明した。2023年上半期は27件、下半期は39件、2024年はこれまで26件判明している。

都道府県別破たん状況(負債1,000万円未満含む)

コロナ破たん率 都道府県別

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度上半期の「粉飾決算」倒産 11件 再生支援を求めて「粉飾告白」が急増

赤字決算を黒字に偽ったり、売上の過大な水増しや資金の不正流出などを隠ぺいする「粉飾決算」の発覚による倒産が急増している。特に、コロナ禍の業績悪化を隠ぺいして事業再生を目指す企業で目立ち、2024年度上半期(4-9月)は11件(前年同期比120.0%増)と、前年度同期の2.2倍に増えた。

2

  • TSRデータインサイト

中国の日本人駐在員、8割超の企業が「注意喚起」 企業の約3%、大企業の14%が日本人従業員を駐在

9月、中国・深センで日本人学校に通う男児が襲われ、死亡した事件が日本企業に波紋を広げている。東京商工リサーチ(TSR)が10月上旬に実施した企業向けアンケート調査で、企業の約3%が中国に日本人従業員を駐在させており、そのうちの8割超が駐在員に注意喚起したと回答した。

3

  • TSRデータインサイト

新総裁に期待する経済政策トップは 「内需拡大の推進」  企業の受け止め 「期待していない」6割、「期待する」4割

新総裁への期待度は、最多が「あまり期待していない」の38.5%、「全く期待していない」20.4%を合わせた「期待していない」は59.0%と約6割に達した。期待する経済政策では「内需拡大の推進」が46.1%を占め、「法人税の引き下げ」は大企業13.1%、中小企業23.3%と規模による格差が大きかった

4

  • TSRデータインサイト

上場企業の「早期退職」募集 46社 人数は前年同期の約4倍 複数回募集が増加、対象年齢は30歳以上など引き下げ傾向

2024年1-9月に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年同期30社)で、前年同期の1.5倍に達し、すでに2023年年間(1-12月)の41社を超えた。対象人員も、8,204人(同2,066人)と前年同期の約4倍と大幅に増加、上場企業の「早期退職」の募集が加速している。

5

  • TSRデータインサイト

2024年1-9月のラーメン店倒産 47件で年間最多を更新中 スープ味は「醤油・中華」27.6%、「とんこつ」21.2%で大差なし

2024年1-9月のラーメン店の倒産が47件(前年同期比42.4%増)に達し、集計を開始して以降で年間最多の2023年(1-12月)の45件を抜いた。

TOPへ