• TSRデータインサイト

4月の運送業倒産30件で前年同月から倍増 人手不足と高齢化で「後継者難」、人件費・燃料費上昇も収益圧迫

 2024年4月の道路貨物運送業倒産は、件数が30件(前年同月比114.2%増、前年同月14件)で、2カ月連続で前年同月を上回った。前年同月に一時的に倒産件数が落ち込んだこともあり、件数は前年同月から倍増した。
 負債総額は36億5,400万円(同128.8%増)で、2カ月ぶりに前年同月を上回った。件数の増加に加え、前年同月に発生がなかった負債5億円以上10億円未満が2件発生し、負債総額を押し上げた。

 2024年1-4月の累計倒産件数は116件(前年同期比39.7%増、前年同期83件)に達した。同期間では2014年(108件)以来、10年ぶりに100件台に乗せ、2011年以降の最多を更新した。
 このうち、「後継者難」倒産が10件(前年同期3件)と3倍以上に増えた。人手不足のなか、代表者やドライバーの高齢化も進み、後継者の育成がままならない企業が増加している。また、「2024年問題」を背景に拍車がかかる「人件費高騰」による倒産も5件(同3件)と増加した。

 燃料費の高騰による 「物価高」関連倒産は1-4月累計で52件(前年同期比108.0%増、前年同期25件)と、前年の2倍のペースで増加。2023年6月以降は、2024年1月(9件)を除き、2ケタ台で推移している。資源エネルギー庁が公表する軽油小売価格は、2024年4月30日時点で154.4円/リットルと、依然として高止まりの状況が続く。

 人件費や燃料費など、あらゆるコストの上昇が運送業者の収益を圧迫している。下請企業が多く、価格転嫁が難しいことなどから、採算が悪化した企業を中心に、今後も倒産の増勢が続く懸念が高い。


道路貨物運送業の倒産 月次推移

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年の「学習塾」倒産 件数、負債が過去最多 少子化と競争が激化、淘汰の時代に

大学受験予備校などを含む「学習塾」の倒産は、2024年は53件(前年比17.7%増)に達し、2000年以降では2023年の45件を超えて、過去最多を更新した(速報値)。 また、負債総額も117億4,400万円(同827.6%増)で、2023年(12億6,600万円)の9.2倍増と大幅に増え、2000年以降で過去最多となった。

2

  • TSRデータインサイト

2025年の展望=2024年を振り返って(11)

2025年は「私的整理の法制化」が本格的に動き出すが、企業倒産は厳しい見方が有力だ。企業自ら自立し、将来ビジョンをしっかり地に足をつけて描くことが求められる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年の“周年企業”最長の900周年は「冠稲荷神社」  「100周年」は2,000社、創業100年超は4万6,601社

2025年は巳年。金運の象徴といわれる蛇にまつわる縁起の良い年と言われる。そんな年に創立900周年(1125年創業)を迎えるのが 「冠稲荷神社」(群馬県)だ。そして、800周年(1225年創業)は、「くじ取らず」の鉾として京都祇園祭で山鉾巡行の先頭を行く「長刀鉾保存会」が名を連ねる。

4

  • TSRデータインサイト

脱毛サロン「ミュゼプラチナム」3度の運営会社が変更 ~「船井電機」倒産余波の真相~

船井電機(株)が破産開始決定を受けて以降、脱毛サロン「ミュゼプラチナム」への関心が高まっている。これまでの運営会社の変遷をまとめた。

5

  • TSRデータインサイト

倒産増加と審査部の真価=2024年を振り返って(5)

審査担当者は長らく、肩身の狭い思いをしてきた。リーマン・ショックの影響が収まらない2009年12月、中小企業金融円滑化法が施行された。これは窮境状態にある企業に金融機関がとどめを刺すことを戒める法律で、返済猶予の件数報告が義務化された。これ以降、企業倒産は減少をたどった。

TOPへ