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2024年4月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は63件 初の2カ月連続60件台、月間で過去2番目の水準

「ゼロゼロ融資」利用後の倒産状況


 2024年4月に「ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)」を利用した企業の倒産は、63件(前年同月比43.1%増)で、初めて2カ月連続で60件台に乗せた。
 4月の63件は月間最多を記録した前月(67件)に次いで、2023年3月(63件)と並ぶ過去2番目の高水準。ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産は、第1号が発生した2020年7月から累計1,433件となった。

 産業別は、最多がサービス業他の17件(前年同月比112.5%増)で、全体の約3割(構成比26.9%)を占めた。サービス業他には、業種中分類別で最多の「飲食店」6件を含む。
 負債額別は、1億円以上5億円未満が27件(前年同月比58.8%増)で最多。1億円以上は合計35件(同59.0%増)で過半数(構成比55.5%)を占め、中堅規模に倒産が広がっている。

 コロナ禍の窮状をゼロゼロ融資などの各種金融支援でしのいだ企業のうち、副作用で過剰債務に陥った企業も少なくない。平時に戻り、売上回復と同時に資金需要が活発になった企業も増えているが、債務過多の企業は金融機関からの新たな資金調達は難しい。そこに円安に伴う物価高や人件費高騰などのコスト上昇が追い打ちをかけ、倒産に追い込まれる企業や廃業が増えている。

 2024年4月、民間ゼロゼロ融資の返済開始が最後のピークを迎えた。これを契機に資金繰りに行き詰まる企業の動向が注目されている。政府は、借換保証などのコロナ資金繰り支援を6月末まで延長し、7月以降はコロナ前の支援水準で経営改善や再生支援に重点を置いた資金繰り支援を基本とする方針を打ち出している。ただ、支援対象は、本業での事業活動が順調であることが前提で、支援の網からこぼれ落ちる企業が一定数発生する可能性を残している。
 また、日本銀行が3月19日にマイナス金利解除を決定したため、今後の企業向け貸出金利も注目される。低金利で収益モデルが作られた中小・零細企業には、僅かな金利上昇も痛手となるため、倒産を押し上げる要因になりかねない。

※本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


2024年4月の「ゼロゼロ融資」利用後倒産は63件、月次で過去2番目の水準

 2024年4月の「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は63件(前年同月比43.1%増)で、2カ月連続で前年同月を上回った。月間で過去最多を記録した前月(67件)に次いで、2023年3月と並び過去2番目の高水準となった。
 負債総額は176億8,900万円(前年同月比75.2%増)で、初めて2カ月連続で150億円を超えた。件数、負債総額ともにハイペースの推移が続いている。

ゼロゼロ融資利用後倒産 月次推移

【産業別】サービス業他が最多で約3割

 産業別では、最多のサービス業他が17件(前年同月比112.5%増)で前年の2.1倍に増加し、全体の約3割(構成比26.9%)を占めた。
 次いで、製造業が13件(前年同月比44.4%増)、建設業12件(前年同月同数)、小売業8件(前年同月比166.6%増)、卸売業7件(前年同月同数)、運輸業4件(同ゼロ)、不動産業(前年同月同数)と情報通信業(前年同月比66.6%減)が各1件の順。
 前年同月より増加が4産業、減少が2産業、同数が4産業だった。

産業別状況(4月)

【業種別】飲食店が最多

 業種別(中分類)では、「飲食店」6件が最多。インバウンド需要が回復する一方、原材料費や光熱費の高騰、人手不足に伴う人件費の上昇を吸収できず、事業継続を断念したケースが多かった。
 次いで、「総合工事業」と「職別工事業」が各5件で続く。材料費や労務費の高騰が収益を圧迫したほか、工期遅れも招き、資金繰りに行き詰まった。
 このほか、「食料品製造業」4件、「道路貨物運送業」3件などが続く。

業種分類別倒産状況(4月)

【形態別】消滅型が9割、再生型は2件のみ

 形態別は、破産が56件(前年同月比43.5%増)で最多。特別清算1件(前年同月同数)と合わせた『消滅型』倒産は57件(前年同月比42.5%増)で9割(構成比90.4%)を占めた。
 対する『再建型』は民事再生法が2件(前年同月ゼロ)で、会社更生法は集計開始以来、発生していない。
 このほか、私的倒産の取引停止処分が4件(前年同月同数)発生した。

【従業員数別】10人未満が約7割

 従業員数別の最多は、5人未満の31件(前年同月比82.3%増)だった。次いで、5人以上10人未満が13件(同8.3%増)、10人以上20人未満が11件(前年同月同数)、20人以上50人未満が6件(前年同月比50.0%増)、50人以上300人未満が2件(前年同月ゼロ)の順。300人以上は前年同月と同様に発生しなかった。
 10人未満が合計44件(前年同月比51.7%増)で、全体の約7割(構成比69.8%)を占めた。

【地区別】関東が最多で4割を占める

 地区別の最多は、関東の26件(前年同月比36.8%増)で、4割(構成比41.2%)を占めた。次いで、東北(前年同月3件)と九州(同7件)が各10件、中国6件(同ゼロ)、中部(同5件)と四国(同2件)が各4件、北海道2件(同1件)、近畿1件(同6件)の順で続き、北陸(同1件)は発生しなかった。
 都道府県別では、東京都が11件(前年同月14件)で、唯一10件を超えた。次いで、宮城県6件(同1件)、群馬県(同1件)と広島県(同ゼロ)が各5件、神奈川県4件(同1件)が続く。

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