• TSRデータインサイト

「エステサロン」の倒産急増、年度最多の95件 コロナ禍の落ち着き後も客足戻らず

~ 2023年度「エステティック業」倒産の状況 ~

 コロナ禍が落ち着く一方で、脱毛や痩身を目的としたエステサロン(以下、エステティック業)の苦境が鮮明になってきた。2023年度のエステティック業の倒産(負債1,000万円以上)は95件(前年度比69.6%増)と前年度の1.7倍に急増。2004年度以降の20年間では、2019年度の76件を超えて最多を記録した。
 エステティック業の倒産は、コロナ禍の資金繰り支援で2020年度52件、2021年度45件、2022年度56件と落ち着いていた。だが、支援策の縮小・終了を境に増勢に転じ、2023年度は95件と大幅に増えた。
 対面サービスを基本とするエステティック業は、コロナ禍の営業制限や感染リスクの回避で来店客が減少した。一方、自宅で施術が可能なセルフエステが注目されたこともあり、コロナ禍の収束後も客足の戻りが鈍い。これを裏付けるようにエステティック業の「新型コロナウイルス」関連倒産は、2023年度は34件(前年度26件)と増勢が続いている。
 負債額別では、負債1億円未満が83件(構成比87.3%)と9割近くを占めているが、1億円以上も12件(前年度5件)と増加、中堅規模にも広がっている。これはサロンの規模に関係なく、コロナ禍で遠のいた客足が戻っていないことを示す。主な倒産は、脱毛サロン「銀座カラー」経営の(株)エム・シーネットワークスジャパン(TSR企業コード:293063664、負債約58億円)で、利用者約10万人に被害が及び、社会問題化した。
 エステティック業は参入障壁が低く、小資本での開業も可能だ。ただ、競合先が多いほか、低価格での施術を売りにして顧客の前払い金を事業拡大の原資にするビジネスモデルが問題視されている。いったん倒産や事業停止をすると、多くの一般顧客を巻き込むため、一定の規制が必要な時期を迎えている。
※本調査は、日本産業分類の「エステティック業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。脱毛、痩身、美肌などを含む。


エステティック業の倒産 年度推移


◆原因別は、最多が「販売不振」で77件(構成比81.0%)と8割を占めた。コロナ禍から客足が戻らず、業績が回復しないまま事業継続を断念したケースが多い。

◆形態別は、最多が消滅型の「破産」の91件(構成比95.7%)。一方、再建型の「民事再生法」

は3件(前年度6件)にとどまり、3件はすべて個人企業の小規模個人再生手続だった。

◆資本金別は、零細規模の「個人企業他」が最多の43件(構成比45.2%)。エステティック業倒産の約半数を占めた。一方、資本金1億円以上は1件(前年度ゼロ)で、幅広く発生した。

◆負債額別は、「1千万円以上5千万円未満」が79件(構成比83.1%)と8割超を占めた。「10億円以上」と「5億円以上10億円未満」が各2件で、最大の負債総額は約80億円だった。

◆従業員数別は、「5人未満」が84件(同88.4%)、「20人以上50人未満」と「5人以上10人未満」が各3件と続く。5人未満が約9割を占め、エステ業界の身軽な体質を象徴している。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

【TSRの眼】「トランプ関税」の影響を読む ~ 必要な支援と対応策 ~

4月2日、トランプ米国大統領は貿易赤字が大きい国・地域を対象にした「相互関税」を打ち出し、9日に発動した。だが、翌10日には一部について、90日間の一時停止を表明。先行きが読めない状況が続いている。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

ホテル業界 インバウンド需要と旅行客で絶好調 稼働率が高水準、客室単価は過去最高が続出

コロナ明けのインバウンド急回復と旅行需要の高まりで、ホテル需要が高水準を持続している。ホテル運営の上場13社(15ブランド)の2024年10-12月期の客室単価と稼働率は、インバウンド需要の高い都心や地方都市を中心に、前年同期を上回った。

4

  • TSRデータインサイト

2024年度の「後継者難」倒産 過去2番目の454件 代表者の健康リスクが鮮明、消滅型倒産が96.6%に 

2024年度の後継者不在が一因の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、過去2番目の454件(前年度比0.8%減)と高止まりした。

5

  • TSRデータインサイト

2025年「ゾンビ企業って言うな!」 ~ 調達金利の上昇は致命的、企業支援の「真の受益者」の見極めを ~

ゾンビ企業は「倒産村」のホットイシューです、現状と今後をどうみていますか。 先月、事業再生や倒産を手掛ける弁護士、会計士、コンサルタントが集まる勉強会でこんな質問を受けた。

TOPへ