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「機能性表示食品」届出は1,671社 22社が倒産や廃業 データベース未更新も15%

「機能性表示食品届出企業」動向調査


 小林製薬(株)(TSR企業コード:570069335)の「紅麹」成分が入ったサプリメントを摂取した健康被害が広がっている。 東京商工リサーチ(TSR)は緊急点検が決まった「機能性表示食品」を届け出ている1,671社を分析した。1,671社は、資本金1億円未満の中小企業が7割超(74.2%)を占め、13社が倒産、9社が休廃業・解散していることがわかった。消費者庁は半年に一度の情報更新を要請しているが、製品のうち約15%が未更新となっており、届出企業のモラルとデータベースの信頼性も根底から問われている。

 国が審査し、食品ごとに消費者庁長官が許可する「特定保健用食品(トクホ)」とは異なり、「機能性表示食品」は許可でなく、消費者庁に事業者の責任で科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示することを届け出る仕組みになっている。小林製薬の健康被害を受け、消費者庁は約6,800製品の緊急点検の実施を決め、登録企業への質問状送付などの対応に追われている。

 「機能性表示食品」の届出情報は消費者庁のデータベースで確認できる。3月27日14時時点の届出情報を抽出し、TSRの企業情報とマッチングして分析した。

 届出の撤回を除く食品総数は6,770製品で、うち法人番号の登録がない21社を除く6,749製品の届出企業を調査した。届出企業数は重複を除き1,671社で、資本金1億円未満が1,241社(構成比74.2%)を占めた。また、倒産13社、休廃業・解散9社が判明。6,749製品のうち、982製品(構成比14.5%)が未更新で、倒産企業だけでなく大手企業の一部製品も未更新のままデータベースに残っていることがわかった。

 「機能性表示食品」への信頼が根底から揺らぐなか、「機能性表示食品」の安全性確保や正確な情報更新など消費者が安心できる仕組み作りの検証が急がれる。

※ 本調査は、「機能性表示食品」の届出情報検索サイトから3月27日14時時点の届出企業を抽出し、撤回と法人番号の記載がない企業を除く1,671社とTSR企業データベースをマッチングして分析した。
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満を中小企業と定義した。


届出企業 7割超が資本金1億円未満

 「機能性表示食品」を届け出ている1,671社の資本金を分析した。資本金1億円以上は430社(構成比25.7%)にとどまった。
 一方、1億円未満(外国法人や一般社団法人など含む)は1,241社(同74.2%)で、 「機能性表示食品」を届け出ている企業は、中小企業が7割超と圧倒的に多かった。

「機能性表示食品」届出企業 資本金別

売上高別 100億円以上が375社

 売上高別(判明分)では、100億円以上が375社(構成比28.6%)だった。次いで10億円以上50億円未満が337社(同25.7%)、1億円以上5億円未満が231社(同17.6%)、5億円以上10億円未満が133社(同10.1%)、50億円以上100億円未満が127社(同9.6%)、1億円未満が107社(同8.1%)の順。
 売上高10億円未満が471社(同35.9%)と約4割に達し、規模の小さな企業の届出が多かった。

「機能性表示食品」届出企業 売上高別

都道府県別

 届出企業の本社地(実質上含む)を調査した。
 最多は、東京都の612社(構成比36.6%)で突出して多い。次いで、小林製薬の本社地でもある大阪府の153社(同9.1%)、福岡県の132社(同7.9%)と続く。

「機能性表示食品」届出企業 都道府県別

倒産・休廃業解散

 届出企業の倒産と倒産以外で事業を停止した休廃業・解散の件数を調査した。
 倒産企業は、13件が判明した。消滅型の破産が6件、特別清算が2件だった。再建型の民事再生法は3件、会社更生法は2件にとどまる。
 破産した6件を、消費者庁の機能性表示食品データベースで検索すると、販売状況はすべて未更新の「チェックなし」だった。
 休廃業・解散は9件だった。

「機能性表示食品」届出企業 主な倒産企業



 消費者庁によると、「機能性表示食品」データベースは半年に一度、届出をした企業に情報更新を要請している。しかし、更新に応じなかったり、応答がない企業もあり、半年以上更新していない企業については、「販売中」と「販売休止」のどちらにもチェックを入れない「チェックなし」とし、「本食品の販売状況は、約半年以上、届出者が更新していないため不明」と表示しているという。


 「チェックなし」の未更新は、倒産企業だけではない。事業を継続している企業も更新が滞り、すでに社名が変わっている企業が旧社名のまま登録されていたり、大手企業でも未更新の製品が多くみられた。

 このデータベース情報では、機能性表示の確認や問い合わせが十分にできない可能性もあり、消費者の信頼を失いかねない。特に、機能性表示食品を主力にする企業では、今回の問題によるレピュテーションリスクで深刻な打撃を受け、業績への影響は今後、より波及するだろう。小林製薬の事件を契機に、「機能性表示食品」の信頼回復には制度や運用の抜本的な見直しを検討すべきだ。


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