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介護事業者の倒産は 過去2番目、休廃業 ・ 解散は 過去最多の 510件 人手不足、物価高で「訪問介護」の倒産は最多更新

 2023年「老人福祉・介護事業」の倒産、休廃業・解散調査


 介護事業者は、人手不足や競合、物価高などが重なり、淘汰の嵐に晒されている。2023年の「老人福祉・介護事業」の倒産は122件で過去2番目を記録した。このうち、「訪問介護事業者」の倒産は過去最多を大幅に上回る67件に達した。また、倒産以外でも事業を停止した介護事業者の休廃業・解散が510件と過去最多を記録、介護事業者の苦境が広がっている。

 高齢化社会の本格到来を前に、介護業界はひと足早く冬の時代が訪れている。2024年度の介護報酬は1.59%のプラス改定となったが、人手不足や競合激化が経営安定の前に立ち塞がる。業績のジリ貧や先行きが見通せない小規模事業者を中心に、年間600社強が市場から退出している。

※ 本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。
※ 調査開始年は、倒産が介護保険制度が始まった2000年、休廃業・解散は2010年。


倒産は過去2番目の高水準               

 2023年の「老人福祉・介護事業」の倒産は122件(前年比14.6%減)で、過去最多を記録した前年から一転、減少した。2022年にデイサービス運営の「ステップぱーとなー」グループ31社が連鎖倒産した反動だが、122件は過去2番目の高水準となった。

「老人福祉・介護事業」の倒産件数(1-12月)

休廃業・解散は過去最多を更新                 

 2023年の「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散は510件(前年比3.0%増)で、調査を開始した2010年以来、過去最多を更新した。人手不足などで経営が悪化し、倒産する前に早めに事業継続を断念した介護事業者が多いとみられる。

「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散件数(1-12月)

倒産:業種別、訪問介護事業が過去最多に

 業種別では、「訪問介護事業」が67件(前年比34.0%増、前年50件)と急増、2000年以降で過去最多だった2019年(58件)を上回った。ヘルパー不足や高齢化、燃料費の高騰などが影響した。
 次いで、デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の41件(前年比40.5%減、前年69件)と急減。前年からの大幅減は、「ステップぱーとなー」グループ31社の連鎖倒産の反動が出た。

倒産:原因別、売上不振が15.0%増

 原因別では、大手事業者との競合や人手不足で利用者の減少などを要因とした「販売不振(売上不振)」の92件(前年比15.0%増、前年80件)が最多。次いで、「他社倒産の余波」(同84.2%減、同38件)と代表者の死亡など「その他」(同100.0%増、同3件)が各6件だった。
 赤字累積の「既往のシワ寄せ」(同28.5%減、同7件)と「運転資金の欠乏」(前年ゼロ)が各5件で続いた。
  

倒産:形態別、再建型は2.4%にとどまる

 形態別では、破産が117件(前年比12.0%減、前年133件)と全体の9割超(構成比95.9%)を占めた。次いで、民事再生法が3件(前年同数)、特別清算が2件(前年比71.4%減、前年7件)の順だった。消滅型が119件(同15.0%減、同140件)と大半を占め、再建型はわずか2.4%にとどまった。

倒産:負債額別、1億円未満の小規模事業者が8割

 負債額別では、最多が1千万円以上5千万円未満の83件(前年比5.6%減、前年88件)。次いで、5千万円以上1億円未満が19件(同20.8%減、同24件)、1億円以上5億円未満が17件(同34.6%減、同26件)で続く。負債1億円未満の小・零細事業者が102件と全体の8割超(構成比83.6%)を占めた。
 

倒産:従業員数別、10人未満が8割超

 従業員数別では、5人未満の75件(前年比11.7%減、前年85件)が最多だった。次いで、5人以上10人未満が27件(同15.6%減、同32件)で続き、10人未満が102件と8割超(構成比83.6%)を占め、小規模事業者が大半だった。
 規模の大きな事業者では50人以上300人未満が3件(前年比25.0%減、前年4件)で、300人以上は発生がなかった。

倒産:地区別件数、関東が最多

 地区別では、全国9地区のうち、最多は関東39件(前年比32.7%減、前年58件)で、近畿23件(同8.0%減、同25件)、中部18件(同5.2%減、同19件)、九州12件(同33.3%減、同18件)、東北10件(同233.3%増、同3件)、中国8件(前年同数)、北海道7件(前年比40.0%増、前年5件)、四国4件(同33.3%増、同3件)、北陸1件(同75.0%減、同4件)の順。

倒産:都道府県別件数、大阪府が最多の18件

 都道府県別では、大阪府18件(前年17件)が最多。次いで、東京都15件(前年同数)、神奈川県10件(前年20件)、福岡県9件(同7件)、北海道(同5件)と愛知県(同9件)が各7件、埼玉県(同8件)と新潟県(同1件)が各5件、宮城県(前年ゼロ)と静岡県(同3件)が各4件と続く。

2023(令和5)年 老人福祉・介護事業 都道府県別倒産状況



 ヘルパーなど介護職員の人手不足や高齢化が深刻だ。2024年度の介護報酬改定で職員の賃上げなど処遇改善が一部で進むことが期待される。だが、飲食業など他業界との人材獲得は激しい競争が広がり、人手不足の解消は難しい状態が続いている。
 小・零細規模の事業者は、ICTの利用促進がコスト面や人材面でも容易ではない。一方、大手保険会社やファンドなどが介護業界に参入する動きも強まり、競合が激しさを増している。このため2024年は一段と小・零細事業者の倒産、休廃業・解散が増勢を強めるとみられる。

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