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勝者なき価格改定=2023年を振り返って(9)

 厚生労働省によると、実質賃金は2022年4月から今年10月まで19カ月連続で前年同月を下回る状況が続く。現金給与総額は、2022年1月から22カ月連続で上昇を続けるが、あらゆるものが値上がりを続け、終わりが見えない。2023年10月の月間現金給与総額(パートタイム・一般労働者)は27万9,172円で前年同月比1.5%増加した。ただ、値上げペースに追いつけず、実質賃金は1年半もの間、押し下げられている。
 今年10月の国内の消費者物価指数は主な10費目のうち、水道・光熱費を除く9費目で前年同月を上回り、食料は8.6%、日用品などを含む家具・家事用品が6.9%と値上げ幅が大きく、身近な商材での値上げが顕著で、生活の影響は日を追うごとに深刻化する。
 飲食料品の価格改定は年間通じて各社で実施された。ハム・ソーセージやだし類など1年に2回価格改定が行われた商品もあり、異例の事態だった。年初から春にかけてはスケソウダラなどの不足から練り物類が、さらに、鳥インフルエンザまん延による鶏卵不足からマヨネーズは大手3社すべてで価格が見直され、原因は「原材料の不足感」から来る値上げが大半で、油価や資材価格の高騰がそれに続いた。
 飲食料品主要200社での値上げ品目数は2月にピークの5,470品をつけた。その後も7月(3,701品)までは、1月と5月を除いて毎月3,000品以上が値上げされるハイペースだった。それらの要因に加え、夏場以降は、円安や海外原料の調達難を起因とする値上げの占める割合が上昇した。6月に公表された値上げ商品全体に占める円安・海外要因の割合は、8.4%と底を打っていたものの、8月には43.1%に上昇。11月には今年最大となる67.0%まで拡大。値上げを公表した企業の割合では、11月71.4%と、11月に値上げを打ち出した企業の7割以上が為替や海外産原料の調達難を理由としていた。
 メーカー各社は一定規模の値上げを打ち出した。ただ、製造原価の上昇を賄える水準まで改定できたのだろうか。TSRが4月に実施した「コスト上昇・価格転嫁に関するアンケート」調査によると、今年4月時点で自社の商品の価格転嫁を行った食料品製造業のうち、59.6%が「粗利率が低下した」と回答。約6割の企業が何らかの価格転嫁策を講じたにも関わらず、製造コストを実際には転嫁できなかった。この調査は1ドル=130円台前半のときに行われたもので、その後に円安がさらに追い打ちをかける。受注量の増減に関わらず、メーカーは価格改定を打ち出しても厳しい環境からは抜け出せない状況にあると言える。
 企業では、企業活動の継続、従業員の生活を守るために価格転嫁を講じる。一方、家計も相次ぐ飲食料品の値上げから、節約へ意識は向く。実質賃金はモノの値上げに追いつけず、下降を続けるしかない。円安による物価高が続き、具体的な消費喚起策もない状況で、2024年はさらなる「物価高疲れ」が企業、家計に影響しそうだ。

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