• TSRデータインサイト

倒産件数はコロナ禍前の水準に=2023年を振り返って(1)

 2023年5月、新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行した。これによりインバウンドと人流が回復し、経済活動にも活気が戻ってきた。だが、4年に及ぶコロナ禍の資金繰り支援や各種支援策が縮小・終了し、その反動は小さくない。そこに賃上げや人手不足、原材料高、円安などが重なり、企業を取り巻く環境は不透明さを拭えない状況が続く。
 小・零細企業の倒産増加、過去に類を見ない粉飾決算の相次ぐ発覚など、企業経営に絡んだ事象から2023年を振り返り、2024年を展望する。



 2023年の全国企業倒産は、1-11月累計で件数が7,880件(前年同期5,822件)、負債総額は2兆2,994億1,700万円(同2兆2,522億7,100万円)だ。
 四半期ごとの件数の増加率は第1四半期が前年同期比30.0%増、第2四半期34.0%増、第3四半期41.1%増、第4四半期(10・11月)35.9%増と、時間の経過とともに増勢を強めた。
 負債総額は1億円未満が7割超を占め、小規模中心の展開に変化はない。だが、パナソニック液晶ディスプレイ(株)(TSR企業コード:322101352、9月特別清算、負債5,836億円)、ユニゾホールディングス(株)(TSR企業コード:293391149、4月民事再生法、負債1,261億円)などの大型倒産も発生し、倒産企業の規模は広がってきた。
 長引くロシアによるウクライナ侵攻や円安で、原材料高や人件費上昇が経営を直撃した。コロナ関連の資金繰り支援効果が薄れ、コスト上昇分を価格転嫁できない中小企業は多く、「物価高」倒産(1-11月累計)は589件(前年同期比157.2%増、前年同期229件)と急増した。また、人手不足が深刻化し、人手確保のコストアップから「人手不足」関連倒産は、(同累計)541件(同19.6%増、前年同期452件)と増加した。なかでも「人件費高騰」は54件(同前年同期7件)で前年同期の7.7倍と際立った。
 コロナ禍で中小企業の資金繰りを支え、倒産抑制に劇的な効果を発揮した「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」の返済が本格化している。コスト上昇に返済が重なり、資金繰りに窮する「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は1-11月累計で587件(前年同期比46.0%増、前年同期402件)に達した。ゼロゼロ融資の返済は、2024年4月に最後のピークが来る。コロナ関連融資で過剰債務に陥り、業績回復が遅れた企業は正念場が待ち受けている。

増加傾向で推移する企業倒産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「マレリグループ」国内取引先調査 ~国内の取引先2,942社、影響懸念~

経営不振が続いたマレリグループの持株会社マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064、さいたま市北区)が6月11日(日本時間)、米国でチャプター11を申請した。東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースからマレリグループの取引先数(重複除く)は国内2,942社あることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

2025年1-5月の「病院・クリニック」の倒産 18件 前年上半期に並ぶ、ベッド数20床以上の病院が苦戦

コロナ禍を経て、病院やクリニックが苦境に立たされている。2025年1-5月に発生した病院・クリニックの倒産は18件で、すでに2024年上半期(1-6月)に並んだ。

3

  • TSRデータインサイト

「日産ショック」とマレリ、部品サプライチェーンの再編含み

マレリホールディングス(株)(TSRコード:022746064)と主要子会社は6月11日(日本時間)、チャプター11(連邦破産法第11条)を申請した。東京商工リサーチのデータベースによると、マレリグループの国内取引先は全国2,942社に及ぶ。

4

  • TSRデータインサイト

事前調整に明け暮れたマレリHDが再度破たん ~支援プレイヤーの場外乱闘の果て~

マレリHDを巡っては、準則型私的整理の一種である事業再生ADRでの再建を目指したが、海外金融機関の反対でとん挫し、前年の産業競争力強化法の改正で規定された民事再生の一部手続きを省略する簡易再生へ移行した。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の業績見通しに大ブレーキ 「増収増益」見込みが16.6%に急減

トランプ関税、物価高、「価格転嫁」負担で、国内企業の業績見通しが大幅に悪化したことがわかった。2025年度に「増収増益」を見込む企業は16.6%にとどまり、前回調査(2024年6月)の23.3%から6.7ポイント下落した。

TOPへ