• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

脱毛サロン大手「銀座カラー」、被害者10万人を抱えて突然の破産

 街にはクリスマスソングが流れ、年の瀬も押し詰まった週末の12月15日、脱毛サロン「銀座カラー」を全国展開する(株)エム・シーネットワークスジャパン(TSR企業コード:293063664、東京都港区、以下エム社)が東京地裁に破産を申請し同日、破産開始決定を受けた。
 同社HPでは、破産と同時に全店舗を閉鎖し、予約済みの施術などは全てキャンセルすることが公表されている。
 前金方式のため、すでに料金を支払いながら事業停止で施術を受けられなくなった被害者などを含め、債権者は約10万人が見込まれる。負債総額が約58億円にのぼる大型倒産の背景を探った。


多店舗展開で急成長

 エム社は1993年に脱毛専門のエステサロン経営を目的に設立された。当初は銀座店1店舗で運営されていたが、2010年代から「銀座カラー」の屋号で積極的に全国出店に打って出た。
 脱毛専門サロンの分野では、銀座に置いた本店や長い業歴もあって一定の信頼を得ていた。さらに、通い放題プランなどを全面に押し出し、若年女性を中心に顧客を獲得していた。また、知名度の高い女優や俳優を起用したCM戦略もあたり、大々的なメディア広告で新規集客を募っていた。
 ただ、会員が増えると「予約が取りにくくなる」のが脱毛サロンの常だ。エム社は、「予約が取りにくい」というマイナスイメージを払拭し、新規契約を増やすため、予約枠を確保する手段として多店舗展開を図っていた。
 銀座や渋谷、横浜など、首都圏の一等地を中心に、各地の主要都市にも進出し、店舗網を拡大。ピーク時は全国に約50店舗を構え、80万人以上の顧客を抱えていた。
 こうした拡大策が功を奏し、売上高は2010年4月期の約19億円から、10年後の2020年4月期には125億6,130万円と6倍以上に急増。知名度もアップし、脱毛サロン大手の一角を担うまでに急成長した。

コロナ禍で事業環境が激変

 ところが、新型コロナ感染拡大で事業環境が暗転する。コロナ禍で多くの店舗が一時的に休業や営業制限を迫られ、外出自粛などの浸透も利用者の急減に拍車をかけた。
 コロナ禍の2021年4月期の売上高は約100億円にダウンし、同期は11億753万円の最終赤字を計上して債務超過に転落した。
 長引くコロナ禍で新規集客が遅れる一方で、医療脱毛の低価格化が進み、競合はさらに激しさを増していた。厳しい環境が続き、生き残りをかけ店舗の統廃合を進めたが、事態は改善せず、ついに運転資金が枯渇して破産に追い込まれた。

前金ビジネスの頓挫

 エム社の成長を支えてきたのは顧客からの前金方式によるサービス料だった。
 前金方式では、顧客が右肩上がりに増え続ける間は、集めた前金を人件費や出店費用などの設備投資に充てることができる。だが、ひとたび顧客が減少に転じると、一気に資金繰りに狂いが生じる。
 東京商工リサーチの調査では、資産の乏しいエム社は従来から銀行借入は少なく、2021年4月期末ではゼロだ。これは一方で、前金に依存した資金繰りを続けていたことを意味するとみられる。
 コロナ禍での顧客減少という想定外の事態に陥ったとはいえ、身の丈に見合う経営だったのか。急成長が目くらましになっていなかったのか、客観的な検証が必要だろう。

繰り返される前金ビジネスの破たん劇

 過度に前金に依存した資金繰りが破たんし、顧客を巻き込み社会問題化したケースはこれまでも後を絶たない。
 2023年は特に同様のケースが目立つ。エム社と同じ大手脱毛サロンとして知られた「C3」の運営会社である(株)ビューティースリー(TSR企業コード:297178202、江東区)や、男性専門脱毛サロン「ウルフクリニック」の経営に携わっていた(株)TBI(TSR企業コード:138345503、東京都港区)、「東京プラス歯科矯正歯科」のクリニック名でマウスピース矯正を手掛けていた(医)社団友伸會(TSR企業コード:294157441、豊島区)など、美容関連の「前金ビジネス」の破たんが相次いでいる。



 最近の美容関連の経営破たんは、コロナ禍という特殊要因が少なからず関係している。だが、サービスの利用者確保には自ずと限度があり、コロナ禍でなくてもいずれは拡大策に限界が訪れるのは自明の理だったはずだ。
 前金ビジネスは美容関連だけにとどまらないが、美容業界では特に、若者を中心に多数の被害者を生む悲劇は幾度となく繰り返されてきた。それでもなくならないのは、あくなき美への追求という永遠の憧れがある。
 消費者心理に便乗した前金ビジネスには危うさがあることは否めず、消費者保護の観点からは、慎重な事業計画の監視も求められる。

「銀座カラー」渋谷109前店の看板

「銀座カラー」渋谷109前店の看板



(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年12月19日号掲載予定「WeeklyTopics」を再編集)


Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ