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日本生協連・土屋敏夫会長 単独インタビュー(前編)~ 約2年続く物価上昇、「消費者はギリギリの線でやりくり」 ~

 実質賃金が18カ月連続で減少し、飲食料品をはじめとして物価上昇が続く。消費者の生活防衛意識が高まるなか、生活必需品をお手頃な価格で提供する日本生活協同組合連合会(TSR企業コード: 291147925、以下日本生協連)の供給高(売上高)は堅調に推移している。
 東京商工リサーチ(TSR)は、代表理事・会長の土屋敏夫氏に現状の消費者の購買動向や今後の見通しなどを訊いた。


―消費者物価指数が上昇し、実質賃金も18カ月連続で落ち込み、生活防衛意識が高まっている。日本生協連の購買動向は

 今年の商品物販は、店舗と宅配が違う動きをみせ、宅配が苦戦している。宅配は前年比100%~101%で、価格転嫁が客単価アップにつながっていない。対して、店舗は比較的堅調で、一人当たりの単価が若干アップしている。店舗は新店も含め前年比102~105%。店舗の客数は102%ほどで推移している。

―店舗の客数が堅調な背景は

 消費者は地域の店での買い回っているのだろうと思う。暮らしの厳しさを反映し、食品を強化してきたドラッグストアや複数のスーパーマーケットにも行き、ECも活用する。全体では客数がアップし、1店舗あたり単価が102~103%に上がっている。ただ、食料品はウクライナ情勢や円安、鳥インフルエンザの影響もあり、ほぼ1年半上がり続けている。急激な食料品価格の上げ幅は品目にもよるが110~120%にも及ぶ。一方、店舗の売上の伸びはその半分ぐらいで、105%ほどにとどまる。単純に全員が同じものを買えば、店舗売上が110~120%まで上昇するが、伸び率が105%ということは消費者も懐具合を見ながらギリギリの線でやりくりしている。
 仮に食用油の価格が(ウクライナ情勢前の)2倍になり、お手頃価格のもの(900g当たり)が400円までに上がってしまうと、油の使い方も変わるし、消費量も変化する。精肉分野では畜種の変化も顕著で、肉商品から総菜や豆腐など買いやすい価格の消費に流れる。家庭では野菜炒めなどの価格を抑えた料理や、かさ増しの工夫もされるようになる。
 小売業は各社状況的に同様かと思うが、物価上昇と同様のペースで売上が伸びていくところはない。本当はもっと伸びていないと理屈が合わないが、我々のところは家計との兼ね合いもあり102~105%という厳しい局面にある。そのような状況から、お求めやすい価格を実現しようということで「くらし応援全国キャンペーン」(暮らしに身近な商品を期間限定、特別価格で販売する取り組み)を行っている。

―宅配の現状はどのように推移しているのか

 宅配は、限られた人が限られた仕組みの上に乗っており、価格を下げたり、据え置いたりすることで単純に利用者が増えるわけでもない。コロナ禍で増加したレベルから1~2ポイントほど利用者が減っている。
 また買い上げ点数が下がっている。一例では、今まで20点買っていた人が、そのうちの1点を買わなくなっている。値段の高いものから低いものへと買い替えも行われている。同じものを買っていれば客単価は上がるが、そうはなっておらず、セールアイテムや適正量目にシフトしている。理由はさまざまだが、インターネットで注文した際に、(カート内の)注文総額が明確なため、金額がいつもより高く見えると、「これまで買っていた嗜好品を減らそう」など、不要不急の商品を1個減らしたりする。店舗は買い回りもあり、物価高の状況でも来客数は増えるが、宅配は決まったメンバーが利用するので一人当たりの伸びがなければ全体の売上を下げてしまう。
 過去の値上げ局面では、節約疲れや、新しい価格と新しい商品の選び方が定着し、利用が回復することがあったが、今回の値上がりはずっと上がり続けているため、消費者も心理的に落ち着かず値ごろ感がつかみづらい。
 

―北日本では生協の灯油価格がベンチマークとなっているが、灯油価格については

 現状、灯油価格は1リットルあたり120円前後で推移し、120円台の攻防になっているのではないか。ウクライナ情勢以降のインフレや円安の影響は大きい。それ以前は100円を切っていたが、今は一缶あたり300円前後上昇しており、暮らしを直撃している。

―電気代も上がっているため、暖房を他のエネルギーに変えようとしても難しい

 北海道をはじめ寒冷地では灯油による暖房が当たり前で、代替燃料に変えることも難しい。現状、代替燃料が安くなる要因も見当たらない。この原油高で需要最盛期に突入するにあたり、国の補助金も入ってなんとか昨冬より少し下がっている。昨冬並みを維持できるのは、補助金を含めてのことだ。
 ただ、配達付きの値段は、配達する人の人件費やトラックによる輸送コストもかかっている。その中間コスト自体を含め、各家庭に届けており、そのコストがリッター価格に乗っている。燃料はライフラインを維持するための生命線で死活問題でもあり、削れない。昔から灯油の取り組みを続けるなかで、こうしたコストの問題も含めて価格決定の大事な交渉事項となっている。

取材に応じる土屋会長
取材に応じる土屋会長

―家計の苦しい世帯にとっては、灯油代の高騰は

 これまでの補助のあり方でいいのかという問いもある。灯油は生きていく上で必要なコスト。寒冷地向けの特別な対策は必要だ。補助金により全体を下げるのも大事だが、ここまで灯油も高くなっており、暮らしに苦しんでいる家計への補助のあり方を見直す必要もある。生活に余裕がないご家庭に対し「灯油クーポン」など適切に灯油を買える補助を広く展開するとか、貧困の問題が深刻になってきている中で、非常に厳しい方々のところへの福祉的支援のアプローチも必要になっている。

―政府の消費動向調査も悪化している。消費回復に向けた施策は

 食料品価格はウクライナ情勢以降では、2022年10月に大きく上がり、さらにピークがもう1回あった。毎月平均3%ほど上がっていて、ここ2年の上げ幅で言えば生鮮食料品は7~9%も上がっている。
 総合的な物価上昇は3%だが、暮らしの実感は3%ではない。
 生鮮品もこの天候不順の影響で高くなった。消費者の所得は春期の賃上げ、10月の最低賃金アップもあったが追いついていない。そのような中で、消費者は自己防衛するため、その時々の売り場においてお手頃価格のものを選んで買っている。給料日前はグッと抑えたりする。おやつや果物なども抑えているのではないか。生協としては、流通小売り事業者として消費者の暮らしに寄り添った新しい価格への対応やPBづくり、商品構成の見直しを進めていくことが重要と考える。
 行政の施策はいろいろあるが、まず一番苦しいところに対して重点的に最低限、健やかに生きていくための補助が必要ではないか。米や麺類など基礎的な食料、加えて燃料と、生きていく上で必要なコストに対し、適切な補助があってほしい。
 生協はフードバンクの活動や子どもの未来アクションなどの取り組みを通して、生活困窮者支援活動を活発に行っている。社会的には着実に賃上げによる所得アップを目指しながら、急激なインフレにおいては、行政によるセーフティーネットを万全なものにすることが重要だ。全体の底上げをするには、貧困に苦しむ家庭に対し、直接的な支援も求められるだろう。

(続く)


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年12月15日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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