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“円安値上げ”の割合が拡大 値上げメーカーの53.8%を占める

主要飲食料品メーカー200社の「価格改定・値上げ」調査


 2023年11月の飲食料品メーカー200社の値上げ商品は75品で、今年1月以降、初めて2桁台の低水準となった。2023年の値上げ商品数は3万1,848品に達し、2024年分の値上げ公表分もすでに476品判明している。商品の値上げペースは夏以降鈍化しているが、長引く円安や不透明な国際情勢を背景に、海外要因の値上げ割合は拡大している。輸入食材を原材料に使用する商品を中心とした“円安値上げ”を中心に、再び大規模な値上げの波も起きかねない。

 東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月以降に価格改定(値上げ)される商品を調査した。200社のうち、2023年1月以降の出荷・納品分の値上げ(見込みを含む)を公表したのは167社(構成比83.5%)で、対象商品は2023年分が3万1,848品、2024年分も476品に達する。長引く円安やエネルギー価格の高騰、異常気象による原材料の品薄感から、2024年にかけても食料品の値上げの公表が続く。10月判明分(13社、453品)では値上げ社数の53.8%(7社)、品目数の44.8%(203品)が輸入コスト増・円安が主要因で、今後も増勢ペースが強まる可能性を残している。政府による輸入小麦売渡価格が10月から5銘柄平均11.1%引き下げられ、製粉大手各社は2024年1月早々に業務用などの小麦粉販売価格を値下げする。一方で、他の輸入食材は為替の影響や国際的な主産地での不作により値上げが続く状況にあり、依然として日本国内の消費者には厳しい流れが続きそうだ。

※ 本調査は、国内の主な飲食料品メーカー200社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を開示資料等を基に集計した。
※ 本調査の実施は2023年9月に続き10回目。1回の値上げで複数商品の値上げが行われる場合、値上げ幅は平均値を集計した。値上げ、価格改定は2023年10月26日公表分まで。


【値上げ理由別】原材料高騰がトップ

 2023年の値上げ対象の3万1,848品の理由別では、「原材料」が2万9,684品(構成比93.2%)でトップ。次いで「資源・燃料」が2万6,165品(同82.1%)、「物流」2万1,095品(同66.2%)と続く。
 原材料は、小麦製品の値上げに一服感が出る一方、飼料価格の急騰でバター類が12月に乳製品大手で軒並み値上げとなる。
 円安が長期化する為替の影響は日毎に強くなっている。「為替」の10月の構成比は12.6%と9月(12.3%)から0.3ポイント上昇。今後の動向次第では、さらに「為替」影響の値上げが増加する可能性が高い。

値上げ理由別

【海外・為替要因の値上げ割合】8月以降高水準で推移、急激な円安基調が背景

 海外からの調達コスト上昇(飼料含む)や、円安を主要因にした値上げが8月以降目立つ。公表月別の値上げ品目数と社数の割合は、品目数・社数ともに30%未満で推移していたが、8月以降上昇し、10月は品目で44.8%と4割を超え、社数も53.8%と最高を更新した。
 1月はロシアのウクライナ侵攻による運搬コストの上昇や小麦価格の上昇によるものが大半を占めていたが、ドル円相場は、8月中旬に1ドル=145円台を付け、9月下旬には同149円、10月初旬には同150円台に突入した。飲食料品も、国内での原材料調達や物流コスト以上に、海外からのコスト高を要因とした値上げの割合が高まっている。終わりの見えない円安は、今後さらなる値上げの誘発要因となる可能性が高い。

海外・為替要因の値上げ割合推移(判明月別)
 

【分類別】「調味料」がトップで9,000品超、輸入品で調達コスト増

 2023年値上げ分の3万1,848品の分類別では、最多は調味料(9,327品、構成比29.2%)で、約3割を占めた。調味料は、ドレッシングや業務用スープ類に加え、輸入原料に頼るごまに関連する調味料や中華調味料、香辛料などが目立つ。
 次いで、加工食品(7,955品、構成比24.9%)は、漬物やかまぼこ類など食卓に身近な商材に加え、冬に最需要期を迎える中華まんも販売大手で値上げを公表している。

2023年分類別の品目数


 主要飲食料品メーカー200社が公表した2023年の出荷・納品分の価格改定は、3万1,848品に達した。2024年実施分もすでに476品が判明している。実施ペースは春に比べ緩やかになってきたが、輸入原材料を中心に、調達コストは上昇含みで先行きは不透明になっている。
 海外からの調達コスト(飼料含む)や為替の円安を主要因とした値上げは、8月以降、高まっており、10月に値上げが公表された13社・453品中、社数では53.8%に当たる7社、品目数は44.8%に当たる203品が為替、または原材料輸入のコスト高を主要因に挙げている。
 10月初旬にドル円相場は2022年10月以来、一時、1年ぶりの水準となる1ドル=150円台に乗せた。終わりの見えない円安と、イスラエル・パレスチナ情勢を受け、今後はエネルギー価格の上昇も懸念されている。こうした状況を背景に、輸入食材を原材料や資材に用いる商品を中心に、今冬に向けてさらに価格転嫁を迫られるメーカーが増えることが危惧される。

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