• TSRデータインサイト

ネット銀行が「メインバンク」の企業が急増、11年間で6.4倍  コロナ禍もデジタルで先行、利便性で金融機関に一石を投じる

~ 2023年 「ネット銀行メインバンク」調査 ~


 2000年にジャパンネット銀行(現PayPay銀行)が営業を開始以来、ネット銀行(インターネット専業銀行)の快進撃が止まらない。ネット銀行がメインバンクの企業は、2013年はわずか665社だった。ネット銀行の認知が広がり2018年は1,751社、そして2023年は4,322社と、コロナ禍を含む5年間で約2.5倍に増えた。対前年増加率は過去2番目の25.4%増と大幅に伸びている。24時間営業で送金などの手数料が安く、融資審査も簡易で早いなど、利便性の高さでメインバンクに選ぶ企業が増え続けている。

 TSRの全国156万8,602社の企業データベースで、ネット銀行をメインバンクとしている企業を集計した。TSRが独自抽出したネット銀行9行(対象:auじぶん銀行、GMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、大和ネクスト銀行、みんなの銀行、楽天銀行、UI銀行)のうち、2023年のメイン取引社数トップは、楽天銀行の1,607社だった。2位はPayPay銀行の1,453社。3位は住信SBIネット銀行の842社、4位はGMOあおぞらネット銀行の407社と続く。

 ネット銀行の強みは、デジタルへの特化だろう。法人の口座開設がオンラインで手続きができ、完了までの期間も短い。さらに、振込などは手数料コストが安く、24時間対応している。また、決算書を提出しなくても借入可能なネット銀行もある。こうした利便性が評価されているようだ。
 設立間もない企業は、近隣の金融機関の店舗に取引口座を開設し、預金積立や決算書で信用を蓄積する。そして、借入金などを通じてメインバンクとの関係を築く。だが、利便性や効率を求める経営者が増え、メインバンクの選択肢が広がってきた。
 
 とはいえ、メイン取引社数はメガバンクや地銀と比べ、まだ大きな開きがある。ただ、楽天銀行の1,607社は、2023年メイン取引社数ランキングでは160位前後の信用金庫とほぼ同水準になった。既存金融機関もデジタル化を急ぐが、従来の審査システムなどのマニュアルに依存する限り、デジタル分野で先行するネット銀行をメインバンクに選ぶ企業は増えるだろう。

※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから2013年-2023年の各3月末のメインバンクを集計、分析した。  
   商号変更や統合等は、2023年6月末を採用。メインバンクが複数の場合、最上位行をメインバンクとした。
※ ネット銀行は、auじぶん銀行、GMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行、大和ネクスト銀行、みんなの銀行、楽天銀行、UI銀行の9行を対象とした。
※ 統合した金融機関の統合前の社数は単純に合算し、順位も合算後の順位を採用した。


全金融機関の順位も高い伸び

 全金融機関の取引社数では、全体トップの三菱UFJ銀行が12万5,942社、地銀トップの北洋銀行も2万6,014社と、ネット銀行とは大きな開きがある。ただ、楽天銀行の1,607社は、全金融機関では166位で、前年(182位)から順位をあげた。2位のPayPay銀行も177位(前年197位)、3位の住信SBIネット銀行は233位(同283位)、4位のGMOあおぞらネット銀行は346位(同438位)と、高い伸びを示している。

ネット銀行をメインバンクとする企業が急増




人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「美容室」倒産が急増 1‐4月は最多の46件 人件費や美容資材の価格上昇が経営を直撃

コロナ禍を抜けたが、美容室の倒産が急増している。2024年1-4月「美容室」倒産は、累計46件(前年同期比48.3%増)に達した。同期間の比較では、2015年以降の10年間で、2018年と2019年の32件を抜いて最多を更新した。

2

  • TSRデータインサイト

約束手形の決済期限を60日以内に短縮へ 支払いはマイナス影響 約4割、回収では 5割超がプラス影響

これまで120日だった約束手形の決済期限を、60日に短縮する方向で下請法の指導基準が見直される。約60年続く商慣習の変更は、中小企業の資金繰りに大きな転換を迫る。 4月1~8日に企業アンケートを実施し、手形・電子記録債権(でんさい)のサイト短縮の影響を調査した。

3

  • TSRデータインサイト

「人手不足」企業、69.3%で前年よりも悪化 建設業は8割超が「正社員不足」で対策急務

コロナ禍からの経済活動の再活性化で人手不足が深刻さを増し、「正社員不足」を訴える企業が増加している。特に、2024年問題や少子高齢化による生産年齢人口の減少などが、人手不足に拍車をかけている。

4

  • TSRデータインサイト

コロナ破たん累計が1万件目前 累計9,489件に

4月は「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円以上)が244件(前年同月比9.9%減)判明した。3月の月間件数は2023年3月の328件に次ぐ過去2番目の高水準だったが、4月は一転して減少。これまでの累計は9,052件(倒産8,827件、弁護士一任・準備中225件)となった。

5

  • TSRデータインサイト

【破綻の構図】テックコーポレーションと不自然な割引手形

環境関連機器を開発していた(株)テックコーポレーションが3月18日、広島地裁から破産開始決定を受けた。 直近の決算書(2023年7月期)では負債総額は32億8,741万円だが、破産申立書では約6倍の191億円に膨らむ。 突然の破産の真相を東京商工リサーチが追った。

TOPへ