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全国156万8,602社の“メインバンク“調査 取引先企業の増収増益ランキング1位は商工中金

~ 2023年 「企業のメインバンク」調査 ~


 全国156万8,602社に選ばれた“メインバンク”のトップは、三菱UFJ銀行(単独)が2013年の調査開始以来、11年連続で守った。メインバンクとして取引社数が1万社を超えた銀行グループは、新たに百五銀行が加わり、31グループとなった。また、金融再編が加速しているが、 1県1行体制(グループ、子会社化含む)は、長野県の八十二銀行と長野銀行、神奈川県の横浜銀行と神奈川銀行が経営統合し、2023年は10県に広がった。倒産増や人口減少など、将来を見据えた基盤強化を狙う統合は今後も進みそうだ。

※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから2013年-2023年の各3月末のメインバンクを集計、分析した。  
商号変更や統合等は、2023年6月末を採用。メインバンクが複数の場合、最上位行をメインバンクとした。
※ 統合した金融機関の統合前の社数は単純に合算し、順位も合算後の順位を採用した。
※ 1県・1行体制は、経営統合や子会社化、合併の予定も含み、本店所在地を基に集計した。


2023年 銀行持株会社(予定含む)/銀行(単独)1万社超メインバンク社数ランキング

業態別ランキング(単独) 三菱UFJ銀行、京都中央信金、茨城県信組がトップを守る

 銀行では、メガバンクの三菱UFJ銀行(12万5,942社)、三井住友銀行(9万9,225社)、みずほ銀行(8万424社)は盤石。しかし、みずほ銀行は前年から196社減少し、3メガとも構成比は前年を下回った。以下、りそな銀行(3万9,160社)、北洋銀行(2万6,014社)、千葉銀行(2万3,747社)、福岡銀行(2万2,036社)、西日本シティ銀行(2万680社)と地銀の雄が上位に並んだ。
 信用金庫は、トップの京都中央信金(8,643社)を、2位の大阪シティ信金(7,227社)、3位の多摩信金(7,068社)が僅差で追う。4位の尼崎信金(6,637社)、5位の横浜信金(6,610社)も差はわずか。信用組合は、トップの茨城県信組(3,110社)、2位の広島市信組(1,343社)も取引数を伸ばす。3位は新潟縣信組(1,218社)、4位は山梨県民信組(1,165社)と上位は変動なし。


”銀行”メインバンク取引社数ランキング

”信金”メインバンク取引社数ランキング

”信組”メインバンク取引社数ランキング

都道府県別シェア (東日本) 

【北海道】地銀トップの社数を誇り、北海道拓殖銀行からの営業譲渡や札幌銀行と合併した北洋銀行(シェア36.2%)が2万社超えでトップ。2位は1万社超えの北海道銀行(同16.0%)で「ほくほくFG」を形成。3位は北海道信金(同5.5%)でシェア伸ばす。4位は旭川信金(同4.4%)、5位に帯広信金(同3.5%)が続く。6位は「ほくほくFG」の北陸銀行(同2.8%)。

【東北】青森は、プロクレアHDの1位青森銀行(同42.4%)と2位みちのく銀行(同29.0%)が合併予定。「青森みちのく銀行」となり1万社超の1県1行へ。岩手は、岩手銀行(同45.2%)がトップ。2番手争いの2位の東北銀行(同16.7%)、3位の北日本銀行(同15.9%)は僅差。宮城は、1万社超の七十七銀行(同56.5%)がトップ。2位は「じもとHD」の仙台銀行(同13.2%)。秋田は、1位の秋田銀行(同53.9%)が安定、2位の「フィデアHD」の北都銀行(同29.6%)も高シェア。山形は、トップ山形銀行(同37.1%)、2位「じもとHD」のきらやか銀行(同24.3%)、3位「フィデアHD」の荘内銀行(同18.4%)が激戦。福島は、トップの東邦銀行(同40.7%)が1万社超え。2位は大東銀行(同9.6%)、3位はSBIHDと提携の福島銀行(同8.7%)が続く。
 
【北関東】茨城の常陽銀行(同48.3%)と栃木の足利銀行(同46.9%)のトップ2行は「めぶきFG」を形成し、ともに1万社超え。2位は茨城が筑波銀行(同18.7%)、栃木が栃木銀行(同23.6%)。茨城3位は信組トップの茨城県信組(同9.7%)。群馬は、1万社超の群馬銀行(同50.6%)が圧倒。2位はしののめ信金(同7.9%)、3位の東和銀行(同6.7%)はSBIHDと提携。

【首都圏】 埼玉は、りそなHDの埼玉りそな銀行(同28.6%)がトップ。2位の武蔵野銀行(同11.9%)は、千葉銀行と「千葉・武蔵野アライアンス」で提携中で、両行は仕組み債の販売をめぐり金融庁から業務改善命令を受けた。千葉は、千葉銀行(同41.3%)が2万社超で圧倒。2位の京葉銀行(同14.0%)はりそなHDと戦略的業務提携、3位は千葉興業銀行(同8.4%)。東京は、三菱UFJ銀行(同23.1%)、みずほ銀行(同20.9%)、三井住友銀行(同17.7%)の3メガが強い。神奈川は、トップは1万社超の横浜銀行(同21.9%)。東京14位の東日本銀行と「コンコルディアFG」を形成。横浜銀行は4月、神奈川銀行(同1.6%)を子会社化し、1県1行(1グループ)体制に。千葉銀行と横浜銀行は、「千葉・横浜パートナーシップ」で提携している。
  
【甲信越】新潟は、統合した第四北越銀行(同59.6%)が1万社超で、約6割のシェア確保。2位はSBIHD提携の大光銀行(同11.4%)。2023年11月、はばたき信組と三條信組、新潟鉄道信組が合併する予定。山梨は、トップの山梨中央銀行(同57.3%)が1県1行で、静岡銀行と「静岡・山梨アライアンス」で提携。長野は、トップが1万社超の八十二銀行(同55.4%)。2位の長野銀行(同8.0%)と経営統合し、1県1行に。2025年度をめどに合併方針。

【中部】岐阜は、トップの十六銀行(同33.7%)を、2位の大垣共立銀行(同20.5%)が追う。静岡は、1万社超の静岡銀行(同39.2%)が高シェア、名古屋銀行と「静岡・名古屋アライアンス」で提携。愛知は、トップが三菱UFJ銀行(同23.4%)、2位名古屋銀行(同10.6%)。3位の愛知銀行(同8.1%)と6位の中京銀行(同4.2%)が2025年に合併予定で、「あいち銀行」が誕生へ。三重は、トップの百五銀行(同44.3%)を、2位の三十三銀行(同27.6%)が追う。

2023年 都道府県別メインバンク取引社数ランキング(東日本)

都道府県別シェア (西日本)

【北陸】富山は、北海道銀行と「ほくほくFG」形成の北陸銀行(シェア48.3%)が強い。2位は富山第一銀行(同13.7%)、3位は富山銀行(同7.6%)。北陸銀行は石川で2位、福井で3位と、北陸3県で高シェア維持。石川は、1位北國銀行(同53.9%)で1県1行。福井は、福井銀行(同47.9%)が高シェア維持で、4位の福邦銀行(同8.7%)を子会社化し、1県1行(1グループ)に。

【近畿】滋賀は、1県1行の滋賀銀行(61.0%)がシェア6割超え。京都は、1県1行の京都銀行(同32.8%)が1万社超の1位。2位の全国信金トップの京都中央信金(同25.3%)が追いかける。大阪は、トップの三菱UFJ銀行(同19.8%)、2位の三井住友銀行(同19.0%)がともにシェアを落としながら激戦続く。「りそなHD」の3位りそな銀行(同12.7%)と4位関西みらい銀行(同9.9%)はシェア上昇し、合算では約3万社でシェア20%超のトップに。兵庫は、トップが三井住友銀行(同21.7%)、2位に「りそなHD」のみなと銀行(同12.6%)。奈良は、南都銀行(同59.9%)、和歌山は、紀陽銀行(同62.3%)が他を圧倒。ともに1県1行だが、1万社に届かず。

【中国】山陰合同銀行は鳥取(同48.2%)、島根(同66.0%)でともにトップ、2県計で約1万社。鳥取2位の鳥取銀行(同27.4%)は中国銀行と相続関連業務で提携。島根3位の島根銀行(同8.0%)はSBIHDと資本提携。岡山は、「ちゅうぎんFG」の中国銀行(同48.7%)が1万社超で高シェア維持。2位はトマト銀行(同11.3%)。広島は、「ひろぎんHD」の広島銀行(同39.6%)が1万社超で強い。2位に「山口FG」のもみじ銀行(同17.3%)。山口は、「山口FG」の山口銀行(同59.5%)がシェア6割弱だが、1万社に届かず。「山口FG」には福岡の北九州銀行も参加。

【四国】徳島は、阿波銀行(同55.8%)が1位。2位は「トモニHD」の徳島大正銀行(同20.7%)。香川は、百十四銀行(同48.0%)がトップ。2位は「トモニHD」の香川銀行(同18.2%)。愛媛は、 四国唯一県内1万社超の伊予銀行(同57.6%)が圧倒。2位の愛媛銀行(同18.5%)は、山口FGと「西瀬戸パートナーシップ協定」で連携。高知は、トップの四国銀行(同51.1%)を2位の高知銀行(同29.1%)が追う。伊予銀行、百十四銀行、阿波銀行、四国銀行は「四国アライアンス」で連携。各県トップ阿波銀行、百十四銀行、四国銀行は高シェアだがいずれも1万社未満。

【九州・沖縄】福岡トップは「ふくおかFG」の福岡銀行(同36.7%)、2位「西日本FHD」の西日本シティ銀行(同32.4%)が僅差で、ともに2万社前後を確保。3位は北九州市地盤の福岡ひびき信金(同4.1%)。4位はSBIHDと提携の筑邦銀行(同3.6%)。5位は「ふくおかFG」の福岡中央銀行(同2.9%)。6位の北九州銀行(同2.3%)は「山口FG」。佐賀は、佐賀銀行(同57.2%)が圧倒的シェアだが、5,000社強にとどまる。2位は佐賀共栄銀行(同7.2%)。2行の動きに注目が集まる。長崎は、経営統合して1万社超の十八親和銀行(同83.1%)が全国トップのシェア。2位に「西日本FHD」の長崎銀行(同3.2%)。熊本は、「九州FG」の肥後銀行(同58.1%)が1万社超でトップ。2位に「ふくおかFG」の熊本銀行(同20.5%)。大分は、1位の大分銀行(同51.5%)は野村證券と業務提携。2位は豊和銀行(同11.8%)で、ともに1万社未満。宮崎は、宮崎銀行(同59.8%)が高シェアで1万社弱。2位は宮崎太陽銀行(同13.7%)。鹿児島は、「九州FG」の鹿児島銀行(同53.2%)が1万社に迫る。沖縄は、1位の琉球銀行(同41.8%)と2位の「おきなわFG」の沖縄銀行(同38.7%)は包括業務提携。3位は沖縄海邦銀行(同12.9%)。

2023年 都道府県別メインバンク取引社数ランキング(西日本)

取引先企業の増収増益率ランキング 1位商工中金「伴走支援」、3位八十二銀行「課題解決」

 メインバンク別に、取引先企業(2022年1-12月期)の売上高、最終利益を対象とした増収増益率を算出した。コロナ禍の影響が徐々に薄れ、資金繰りや伴走の支援効果が出始めた金融機関が上位に並んだ。
 取引企業の増収増益率トップは、2年以内に民営化する法律が6月に成立した商工組合中央金庫(構成比38.8%)。商工中金は、「『企業の未来を支えていく。日本を変化に強くする。』のパーパス(存在意義)実現に向け、お客様が直面する経営課題を共有し、伴走支援に取り組んできた結果と考えている。これまで以上にお役に立てるよう、全力で努力を続ける」とコメント。ゼロゼロ融資など、中小企業向け支援の取り組みが取引先の業績改善に結びついたようだ。
 2位の北國銀行からはコメントを得られなかった。3位は、長野県内で圧倒的なシェアを持ち、メインバンク取引社数1万社超の八十二銀行。同行は、「これまで取り組んできた課題解決提案などの伴走支援がお客さまの業績改善に少しでも貢献できたのであれば幸い。今後は長野銀行との経営統合によるシナジー効果をお客さまに早期に実感をいただけるよう、両行のコンサルティング機能を結集し、“共創プロジェクト”に取組むなかで地域経済発展に寄与していきたい」とし、経営統合による事業領域の拡大や収益増強を進めていく意向だ。
 取引先企業の増収増益率は、「その他」を除き、1位が都市銀行(同34.3%) 。次いで、地方銀行(同32.3%)、第二地銀(同32.0%)、信用組合(同31.1%)、信用金庫(同30.5%)の順。

※ 増収増益率ランキングは、業績が判明し、メインバンク取引社数が1,000社以上を対象に集計した。

メインバンク取引先 増収増益率ランキング

倒産企業のメインバンク調査

 各年度(4-3月)に倒産した企業(負債1,000万円以上)のメインバンク(判明分)を分析した。2022年度の倒産は、メインバンク数が多い地方銀行が1,173社(構成比32.4%)で最多。次いで、信用金庫971社(同26.8%)、都市銀行757社(同20.9%)、第二地銀379社(同10.4%)、信用組合118社(同3.2%)の順だった。
 2022年度末(2023年3月末)の業態別メインバンクの取引社数を分母にして、倒産企業数を除した「倒産比率」(その他除く)は、信用組合の0.34%が最も高かった。次いで、信用金庫の0.28%、第二地銀の0.25%、都市銀行の0.20%、地方銀行の0.19%と続く。
 ゼロゼロ融資の返済や物価高などの影響で倒産が増加しており、小・零細企業向け融資が多い信用組合や信用金庫の特有の事情が大きいとみられる。

全国メインバンク取引社数ランキング


 コロナ禍で記録的な低水準をたどった企業倒産が一転して増勢に転じ、金融機関を取り巻く環境も変化している。人口減少やシステム投資、営業店やATM等のサービス維持コスト、過剰債務を抱える企業への支援、事業領域の拡大への負担増などで、銀行再編・統合も動き出した。
 単独ではメインバンク取引社数が1万社に満たない青森銀行とみちのく銀行、愛知銀行と中京銀行は、統合でメイン取引社数は1万社を超える。統合は、経営基盤の強化と経営合理化などシナジー効果につながる。都道府県別でも、グループ含めた1万社超は24都道府県に増え、半数に達する。1県1行は青森(青森みちのく銀行)、神奈川(横浜銀行・神奈川銀行)、山梨(山梨中央銀行)、長野(八十二銀行・長野銀行)、石川(北國銀行)、滋賀(滋賀銀行)、京都(京都銀行)、奈良(南都銀行)、和歌山(紀陽銀行)、鳥取(鳥取銀行)の10県に広がった。
 2023年の取引社数増加率(前年比、500社以上)トップは、住信SBIネット銀行39.1%増(842社)、2位は楽天銀行15.2%増(1,607社)、3位はPayPay銀行14.5%増(1,453社)で、ネット銀行が上位に並び、取引社数は少ないが着実にメインバンクの地位固めに動いている。
 一方、金融会社、IT企業など垣根を超えた連携も加速してきた。地域性や取引対象も様々で、1県1行体制やシェアを目的にする必要もない。ただ、地域の金融機関の経営が不安定になると、企業への支援、ひいては地域の雇用にも影響を及ぼす。それだけに与信費用の増加や人口減少、コスト増への対応の遅れは、否応なしに経営統合も選択肢の一つに入るだろう。



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