• TSRデータインサイト

「負債1,000万円未満の倒産」上半期(1-6月)件数は244件、3年ぶりに前年同期を上回る

~ 2023年上半期(1-6月)「負債1,000万円未満の倒産」状況 ~


 2023年上半期(1-6月)の負債1,000万円未満の企業倒産は244件(前年同期比10.9%増)で、上半期では2020年同期以来、3年ぶりに前年を上回った。負債1,000万円以上(同32.0%増)に加え、同1,000万円未満の倒産も増勢に転じた。また、「新型コロナ」関連倒産は82件(前年同期57件)だった。 
 コロナ禍からの業績回復の遅れ、過剰債務、物価高、人手不足など、事業規模を問わず、さまざまな経営課題が企業に重くの圧し掛かっている。


 産業別は、最多がサービス業他の110件(前年同期比17.0%増)。次いで、建設業の41件(同16.3%減)、小売業の30件(同11.1%増)と続く。
 原因別は、販売不振が184件(同19.4%増、構成比75.4%)で、全体の70%超を占めた。経済活動がコロナ前に戻るなか、業績回復が遅れた小・零細企業の息切れが鮮明となってきた。
 資本金別は、1千万円未満(個人企業他を含む)が228件(前年同期比9.0%増)で、9割(93.4%)を占めた。
 形態別は、消滅型の破産が240件(前年同期比9.5%増、構成比98.3%)と大半を占めた。負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業がほとんどで、経営再建の難しさを物語っている。
 「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」の元利返済がピークを迎える。しかし、業績回復が遅れ返済原資を捻出できない企業は多く、そこに物価高や人件費上昇が押し寄せ、コスト負担が増している。小・零細企業は価格転嫁がなかなか進まず、売上増が資金需要を活発にし、収益改善にはつながらずに資金繰りが多忙になる悪循環に陥っている。経済活動は平時に戻りつつあるが、収益悪化が続く小・零細企業の小規模倒産は、秋以降、本格的に増勢をたどる可能性が高まっている。

※本調査は、2023年上半期(1-6月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。


上半期倒産244件、3年ぶりに前年同期を上回る

 2023年上半期(1-6月)の負債1,000万円未満の倒産は244件(前年同期比10.9%増)で、上半期としては3年ぶりに前年同期を上回った。
 上半期の件数は、2020年同期の302件、2010年同期の283件、2018年同期の259件に次いで、過去15年間で4番目の多さ。コロナ支援効果が薄れる一方で、物価高や人手不足が深刻さを増し、企業の収益悪化に拍車をかけている。負債1,000万円以上(4,042件、前年同期比32.0%増)は15カ月連続で増加するが、同1,000万円未満の倒産も増勢に転じた。 
 負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業が大半で、コロナ禍の資金繰り支援策の終了とともに、経済環境の変化に対応できない企業の脱落が顕在化してきた。

負債1,000万円未満 件数推移(上半期:1-6月)

【産業別】10産業のうち、7産業で前年同期を上回る

 産業別では、10産業のうち、建設業、製造業、金融・保険業を除く、7産業で前年同期を上回った。
 最多は、サービス業他の110件(前年同期比17.0%増)で、上半期としては3年ぶりに前年同期を上回った。構成比は45.0%(前年同期42.7%)だった。
 このほか、不動産業10件(前年同期比42.8%増)が3年連続、農・林・漁・鉱業4件(同100.0%増)と小売業30件(同11.1%増)が2年ぶり、卸売業17件(同41.6%増)と運輸業11件(同175.0%増)、情報通信業12件(同9.0%増)が3年ぶりに、それぞれ前年同期を上回った。
 一方、建設業41件(同16.3%減)と製造業8件(同38.4%減)が、それぞれ2年ぶりに前年同期を下回った。金融・保険業が前年同期を同件数の1件だった。


 業種別では、食堂,レストラン(6→12件)、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所(3→9件)、一般貨物自動車運送業(1→7件)経営コンサルタント業(4→6件)。また、建築リフォーム工事業(前年同期2件)、不動産代理業・仲介業(同3件)、自動車一般整備業(同1件)、労働者派遣業(同3件)が各4件、野菜作農業、大工工事業、給排水・衛生設備工事業、貨物軽自動車運送業、生鮮魚介卸売業、電気機械器具小売業、中古品小売業、表具業が各3件など、それぞれ前年同期を上回った。

負債1,000万円未満の倒産 産業別(上半期:1-6月)

【形態別】消滅型の破産がほとんど

 形態別件数は、「破産」が240件(前年同期比9.5%増)で、3年ぶりに前年同期を上回った。構成比は98.3%(前年同期99.5%)だった。
 負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業が人的リソースだけでなく資金面でも制約があるため経営再建への取り組みが難しく、再建を諦めて破産を選択しているようだ。
 このほか、民事再生法1件と取引停止処分2件が、2年ぶりに発生した。
 特別清算は前年同期と同件数の1件だった。

【資本金別】1千万円未満が9割超

 資本金別件数は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が228件(前年同期比9.0%増、前年同期209件)で、3年ぶりに前年同期を上回った。構成比は93.4%(前年同期95.0%)で、上半期としては5年連続で90%台になった。内訳は、「1百万円以上5百万円未満」86件(前年同期比3.6%増、前年同期83件)、「個人企業他」80件(同15.9%増、同69件)、「1百万円未満」39件(同2.5%減、同40件)、「5百万円以上1千万円未満」23件(同35.2%増、同17件)。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が16件(同45.4%増、同11件)で、3年ぶりに前年同期を上回った。「5千万円以上1億円未満」が5年連続、「1億円以上」は4年連続で、それぞれ発生がなかった。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ