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高騰した電力調達価格、「コロナ禍当初は5倍」 「みんな電力」のUPDATER・大石社長 単独インタビュー(前編)

 コロナ禍以降、新電力業界を取り巻く環境が激変している。日本卸電力取引所(以下、取引所)のスポット価格は2021年1月に月平均最高値の63.07円(キロワット/時)を記録し、前年同月の8倍以上まで膨らんだ。市場価格の高騰を受け、新電力業界は老舗プレーヤーの(株)F-Power(TSR企業コード:297969072、2021年3月会社更生法申請)を皮切りに、破たんする企業が相次いだ。
 価格高騰のピークは過ぎたが、高値取引の常態化で新電力195社の決算は、赤字が91社(構成比46.6%)と約半数を占めた。
 こうした厳しい環境下で、“100%再生可能エネルギー”による電力提供の「みんな電力」 は、“市場に頼らない”発電所との直接契約など独自の取り組みで玉石混淆の新電力業界で異彩を放つ。運営する(株)UPDATER(TSR企業コード: 298695499、東京都)の大石英司・代表取締役社長に、新電力業界の現状と今後の業界見通しなどを聞いた。


―2021年以降、新電力の破たんが相次いだ

 我々のような電力販売会社は、取引所からの“仕入れ手”である。市場価格が上がるとサービスそのものの付加価値がなくなる。電気を安く取引所から調達できていた時期は「安く売りますよ」という誘い文句で次々と契約した。なので、ただ市場から電力を仕入れてユーザーに売るだけのサービスは、付加価値も経営努力もない。私は以前から、「根拠のない安さほど怪しいものはない」と言い続けてきた。


―電力自由化の始まった2016年から数年間、「新電力=安い」と認識される状況が続いた

 当時、多くの新電力が安さの根拠を説明せずに「安くなりますよ」と言って営業していた。契約が取れるためだが、その後破たんした新電力は1社、2社ではない。1)市場から仕入れている、2)安さの根拠が明らかでない、3)その上で安売りしまくっている――など、破たんした新電力には共通項がある。

価格を下げて自治体の入札に参加する会社の破たんも目立った。入札を仲介するような会社もあるが、彼らは安く契約できる候補を探す。市場が安値安定時は、誘い水として「安く(電気が)使えますよ」と言っていたのに、急にユーザーに値上げを通知するのでクレームになる。当然、その会社の悪評が出回る。
 新電力の破たんには複数のパターンがある。市場価格の高騰をヘッジできず、安売り契約になっている“差分”で行き詰まるケース。もう一つは、安売りするのは一緒だが、市場価格の高騰後、高騰分を丸ごとお客様に転嫁するケース。これは最悪だ。10倍以上も電気料金が上がった事例も耳にする。契約者は、ある日突然10倍になるなんて思いもしない。
 後者は、迷惑というか、我々も一緒くたに見られてしまう。調達先やサービス自体は全然違うが、同じに見られる。なので、消費者側も電力会社を選択する際は、「この会社は安いけれど、契約体系はどうなっているのか」と立ち止まって考えてほしい。


―市場の取引価格は一時期に比べ落ち着いた

 我々も、過去に何回も市況の影響で経営に痛手を負った瞬間があった。直近だと2022年の上半期に大きなダメージを受けた。ただ、我々の場合は、供給する再エネの半分しか市場連動していない。半分は固定価格の「ハーフ&ハーフ」で運営している。なので、受けるダメージは、すべてを市場に頼る他社よりも少ない。契約者の電気料金への影響も市場取引分の半分しか転嫁されない。その分、下がるときも半分だ。2022年以降、値上げ要請を3回したが、解約はほとんどない。

 地道な作業だが、仕入を明確にして、透明性を高める。これが電力供給でも必要だ。我々は、“顔の見える”再エネという付加価値が明らかであるし、説明も重ねている。今、使っている電力が「なぜ上がるのか、下がるのか」という理由を契約者は明確に知りたい。我々は契約者へ説明会もしている。


―電気は日用品や飲食料品と違って「値上げを受け入れるしかない」と思いがちだ

 値上げの連続では、「電力会社に騙されているのではないか」という意識が生まれる。根拠を示さない値上げは不信感を生む。破たんする会社が出てくると、不信感はさらに増し、新電力自体を疑うことになる。

―新電力企業の淘汰は続くのか

 生き残っていけないところもあると思う。ただ、また市況の安い時に参入して「安売りします」みたいなことを言うプレーヤーは出てくるだろう。無責任に契約をとって、市況が高騰したら破たんというケースは、また出てくるだろう。

 安売りを“しまくる”会社は、一時的に高い成長率を示す。一方、仕入用に別の新電力(会社)を作る。そこには売上と支払いのギャップが生まれ、キャッシュが残る。仕入用の新会社から仕入れることにすると、決算に(仕入分が)のっからなくなる。それで黒字に見せやすくなり、急成長しているように見える。ただ、3、4年経つと、そのカラクリが維持できなくなる。その間に上場したり、資金調達を頻繁にするが、何年かすると辻褄が合わなくなる。


―野放しにしないための方策は

 ガイドライン はある。参入する際に関係省庁から「御社はどういうところから電気を仕入れるんですか」、「常時バックアップできる固定電源はあるんですか」といった聞き取りがある。数年に一度、関係省庁へ報告する機会もある。でも、どの会社も運営継続できているということは、いい加減な部分もあるのではないか。ただ、消費者の方には、安い電力契約はリスクとなることもきちんと知っていただきたい。


―コロナ禍の調達価格が大きく変動した

 コロナ禍当初の2020年、LNGが日本に入ってこなくなった時期が一番大変だった。当初は、乗り越えるためのノウハウがなかった。LNGが入らないことに対する心の準備や対策ができていなかった。

 例えば、2020年の市場価格の高騰は、市場連動分で5倍仕入値が上がった。これは、かなりの資金ギャップに繋がる。年間売上1~2億円ぐらいの時期なら、多少上がっても資金調達すればなんとかなるだろう。ただ、規模が大きくなると、より難しくなる。小売主体の電力ベンチャーで、当社ぐらいの規模の会社はもう1社ぐらいしかない。そちらも再エネを扱っていたが、今はもう化石燃料系に変わり、完全に市場連動へ移行した。


―高圧の新規ユーザー受付を一時停止した

 当社は、半分固定価格・半分市場連動と、市場連動のみのプランを提供しているが、契約数が増えすぎると固定化比率が低下する。なので、枠数を限定している。再エネ100%で「半分固定・半分市場連動のプランです」と言って売り出したら、受付開始後、すぐ売り切れた。ようやく枠に余裕ができて募集を再開できた。


―昨秋には、いわゆる「電力難民」となる企業も出現した

 最終保障契約が切れる企業を中心に、次期の契約がまとまらず、代替となる電力会社も見つけられない企業が続出した。「最終保障期日に電気を止めますと言われた」という声も一定数あった。そういった企業では「(価格が)市場連動でもいいから使いたい」という要望もあり、「電力難民」と呼ばれた層のリカバーをしようと昨年7月、市場連動プランを開放した。

ただ、「来年こそは、(電気代を)半分固定にしたい」という声も多くあった。なので、2023年4月に向けて、さらに仕入を拡充して4月から枠数を増やし、募集を再開した。ただ、すぐに枠が埋まってしまった。これの繰り返しで少しずつしかユーザーを増やせない。拡充させるためには、どうするかということを検討している。

(続く)


取材に応じる大石社長(6月初旬)

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