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大手外食、昨年から7割超の企業が値上げ 複数回の値上げが約4割に 卵メニューの休止・置き換えは34業態【「大手外食チェーン値上げ・価格改定」調査 】

 2023年も大手外食チェーンの値上げが止まらない。円安や原材料価格の上昇などで仕入コストアップに悩まされてきたが、2022年秋以降は人件費や光熱費の上昇も店舗運営に重く圧し掛かっている。
 大手外食チェーン122社のうち、 2022年1月から2023年4月上旬までに値上げを実施・公表したのは86社(構成比70.4%)と7割を超えたことがわかった。このうち、48社・58業態で複数回の値上げを実施した。
 また、鳥インフルエンザ等による卵不足から、卵を使用したメニューの休止や見直しを公表したのは27社・34業態で、ファミリーレストランやラーメンなどを中心に急増している。
 東京商工リサーチ(TSR)は、国内の大手外食チェーン122社を対象に、2022年1月から2023年4月上旬までの値上げ、および価格改定を調査した。
 大手外食チェーン122社のうち、2022年1月以降、メニュー価格の値上げを公表したのは86社(構成比70.4%)と7割を超えた。また、86社のうち、2回以上の値上げを表明したのは48社(同55.8%)だった。原材料高や円安による輸入食材の価格高騰に加え、サービス業でも深刻な人件費上昇、光熱費上昇を値上げの理由に挙げる企業が相次ぎ、店舗のジャンルを問わず値上げトレンドが広がっている。外食の値上げ公表は、2023年(1-4月)は32社・37業態で、前年同期(22社・24業態)と比べ社数で45.4%増、業態数で54.1%増と増勢を強めている。
 鶏卵不足によるメニューの休止・見直し(置き換え含む)は27社・34業態が公表し、2023年2月以降に急増。その影響はラーメン店の味玉、カフェチェーンのたまごサンドのほか、すき焼きに欠かせない生卵の有料化など、料理のジャンルを問わず多岐にわたっている。
※ 本調査は、国内の主な外食大手122社を対象に、2022年1月1日以降に値上げを実施、または、実施予定を文書、ウェブ、開示資  
料等で公表した企業を集計した。調査は2022年7月、9月、11月に続き4回目。


【実施の内訳】「値上げ1回」「2回」がともに約3割で拮抗、「3回以上」も1割超

 大手外食チェーン122社のうち、2022年1月以降に値上げしたのは86社(構成比70.4%)に達した。
 値上げ回数は、「1回」が38社(同31.1%)、「2回」が35社(同28.6%)、3回以上は13社(同10.6%)だった。「値上げしていない」企業は36社(同29.5%)で、3割を切った。
 前回調査(2022年11月)からの増加は「2回」(25社→35社)と「3回以上」(3社→13社)。減少は「1回」(54社→38社)と「値上げしていない」(40→36社)で、1度値上げした企業が2回目以上の再値上げに踏み切るケースが目立った。


【ジャンル別】中華・ラーメン最多、小麦・スープ原料の高騰続く

 「中華・ラーメン」が20業態で最多だった。麺原料の輸入小麦の価格上昇が続くなか、スープ原料の業務用魚介だしも今春、メーカー各社で再び値上げをオファーし、今後もラーメンの提供価格を押し上げそうだ。

 次いで、「レストラン」「ステーキ・焼肉他」が各17業態、「ファストフード」14業態と続く。輸入牛肉の価格高騰で、2022年春にかけてファミレスや、ステーキ・ハンバーグ店の値上げが多発したが、2022年末以降も仕入価格の上昇などにより、牛肉を使用するメニューの価格見直しの波が再び起き、件数を押し上げた。


【値上げの理由別】「原材料」高騰がトップ、「光熱費」「人件費」「円安」が大幅増

 値上げの理由では、最多は「原材料」の高騰で101業態(前回調査89業態)で、前回から12業態増加した。次いで、「物流」66業態(同53業態)と続く。前回調査からの増加率は、「光熱費」210.0%増(10→31業態)、「円安」133.3%増(12→28業態)、「人件費」78.2%増(23→41業態)と続く。電気・ガスなどの光熱費に加え、雇用維持の人件費は、人手不足から今後も長期的な経営課題となりそうで、価格転嫁の値上げが繰り返される可能性が高い。


【卵メニューへの影響】34業態が休止・または見直し

 鳥インフルエンザのまん延などで生じた鶏卵不足で、卵メニューの休止や代替メニューへの見直しを行った業態を調べた。影響を公表したのは27社・34業態に及ぶ。最多は、中華・ラーメンの8業態で、煮卵の提供制限や天津飯の販売休止が相次いだ。

 レストランでも7業態あり、デザートの種類見直しや、モーニングの目玉焼きを代替品に置き換える動きが目立つ。コーヒーは5業態で、サンドウイッチの卵抜き、自社製カスタードクリームの提供中止があった。定食では鶏南蛮に添えるタルタルソースに使用する卵の不足から提供を一時休止するチェーンもあった。



 大手外食チェーン122社で、2022年1月以降の値上げは86社・115業態に及ぶ。そのうち、複数回の値上げに踏み切ったのは48社・58業態に増え、手軽な庶民の味にも影響が広がっている。
 今春まで継続して値上げが行われたマクドナルドのハンバーガーは3回の値上げを経て、2022年年初の110円から170円に、はなまるうどんのかけうどん(小)は2回の値上げで240円から290円に、築地銀だこは8個入りたこ焼きが538円から580円に改定されている。
 さらに、2023年は異例の鶏卵不足で、値上げと同時に卵メニューの休止や別食材への置き換えがアナウンスされた。メニューへの影響は、公表分だけで4月上旬で34業態に増えている。サンドウイッチで使われるゆで玉子やモーニングセットの目玉焼き、中華チェーンの天津飯など、今春以降、店頭から消えてしまったメニューも複数ある。物価の優等生だった卵の供給不足で、外食各社は原材料の高騰とはまた異なる不安を抱えている。ウクライナ情勢や物流コストアップなどの負担に加え、採用難や人件費高騰も加速し、値上げの波は今後も続く可能性が高い。

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