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私的整理を活用した事業再構築、中小企業の12.2%が「検討」を視野 ~ 第25回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査 ~

 新型コロナウイルス感染拡大の第8波の動向が懸念されるなか、政府は感染防止と経済活動の再活性化の両立を目指している。企業活動はコロナ禍の克服に動き出し、11月の売上高(単月)が前年を上回った企業は59.5%に達した。また、「宿泊業」と「飲食業」は、8割を超える企業が前年同月比で増収を果たした。全国旅行支援などの政策的な後押しに加え、感染防止への取り組みが浸透し、人流が回復していることが背景にあると見られる。

一方、私的整理手続きを活用して事業再構築を検討する可能性のある企業は10.9%に達した。業種別では、「飲食業」は29.6%、「宿泊業」は16.6%にのぼる。事業再生は将来キャッシュフローの見極めが重要だが、コロナ禍もほぼ3年が経過し、見通しの蓋然性を判断しやすくなっているようだ。「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」をはじめ、緊急避難的なコロナ支援で背負った債務への対応に本格的に取り組む企業が今後増えそうだ。
ただ、ゼロ・ゼロ融資について、すでに返済猶予を受けていたり、今後の返済に懸念を感じている中小企業は約3割(28.8%)に及ぶ。今年3月には「事業再生ガイドライン」が公表され、次の通常国会への提出が見込まれる「私的整理の法制化」の議論が活発だが、こうした声に配慮しないと「突然死」が多発し、予期せぬ法的整理の急増を招きかねない。


※本調査は12月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答5,211社を集計分析した。
※前回(第24回)調査は、2022年10月25日公表(調査期間:2022年10月3日~12日)。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義した。


Q. 貴社は、中小企業活性化協議会(旧・再生支援協議会)や事業再生ADRなどの私的整理手続きを活用して、収益性の向上のための新分野展開(新商品の開発など)や業態転換(商品の生産の効率化や費用の低減)などの事業再構築を検討する可能性はありますか?(択一回答)

「ある」、中小企業は12.2%

 「ある」は10.9%(4,445社中、488社)だった。規模別では、大企業の「ある」は3.2%(623社中、20社)、中小企業では12.2%(3,822社中、468社)だった。
「ある」と回答した企業を業種別(業種45分類、回答母数20以上)でみると、トップは「飲食業」の29.6%(27社中、8社)だった。

本調査結果の詳細はPDFファイルをご覧ください。

第26回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査[PDF:1.42MB]

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