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商取引の電子化、「入金消し込みからの解放」だけではない業務へのインパクト

 手形・小切手の電子化だけではなく、「商取引の電子化」による業務効率化の機運が高まっている。背景にあるのは、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度だ。データ連携を進める全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)の担当者に話を聞いた。


半数以上の中小企業が売掛金の入金消込業務に月5時間以上費やし(※1) 、入金額が合わないと、請求書の控えとの確認や振込先への電話などでの確認等、非効率な業務が生じている。
従来の全銀システムの電文フォーマット(固定長)20桁の金融EDIでは桁数が少ないなどの課題があり、入金消込業務のため、商流情報(EDI情報)の添付拡張が求められた。
これを受け、2018年12月に企業間の国内送金電文で様々な商取引に係る情報を添付できる全銀EDIシステム(ZEDI)が稼働。大量の金融EDI情報を設定できるようになり、非効率業務の解消が見込まれていた。
ただ、実際は設定できる入力項目が増え、支払企業の負担が重くなる部分もある。さらに、紙・手作業等のアナログ処理が多いためデータ連携のハードルの高さや会計ソフトのZEDI非対応などで、利用率は国内すべての振り込みの0.01%にとどまっている。
ZEDIは苦戦が続いたが、普及に向けた環境が整いつつある。2022年1月、原則として紙で保存が義務付けられていた帳簿書類が電磁的記録(電子データ)での保存が可能となった。また、電子的な取引情報の保存義務などを定めた法律も施行された。
2023年10月にインボイス制度が始まる予定だが、先がけて2022年10月にデジタル庁からデジタルインボイスの標準仕様(JP PINT)が公開された。この動きを受け、商取引の電子化が進めば、請求データを負担なく自動的にZEDIと連携することも可能となり、業務効率化に繋がると注目され始めた。
全銀協傘下の全銀システムなどを運営する全銀ネットの担当者は、「ZEDIの利用促進のチャンス」と期待を膨らませる。
全銀ネットは、金融庁やデジタル庁、EIPA(デジタルインボイス推進協議会)など民間団体やベンダとの連携を強化している。また、これまでの大量データ連携の方針を転換し、JP PINTに対応した請求書番号など「必要最小限」(同担当者)の入力項目に絞る「DI-ZEDI」の策定を目指している。これにより相互運用性があるソフトウェアの開発に繋げる方針だ。
全銀ネットは「デジタルインボイス・決済連携サービス開発助成プロジェクト」の公募を2022年8月に実施した。その結果、助成先として19事業者を選定し、JP PINTとZEDIを連携させるソフト等の普及を進めている。
開発されたソフト等の導入により、受発注・請求から決済までの電子化と、一気通貫でのデータ連携の実現、商取引の見える化ができることから、アナログの受発注時に発生していた煩雑な事務からの解放(人手不足の解消)や、資金繰りの改善、コスト削減効果も期待される。

※1 平成29年度「中小企業・小規模事業者決済情報管理支援事業」の資料より。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2023年3月16日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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