• TSRデータインサイト

2月の「物価高」倒産は41件、資材高騰で建設業が急増

~ 2023年2月 「物価高」倒産 ~


 2023年2月の「物価高」が起因の倒産は41件で、前年同月(11件)の3.7倍増と大幅に増加した。「物価高」倒産は、2022年12月の56件をピークに、3カ月連続で40件超の高水準で推移している。
 円安に加え、エネルギーや原材料、食品などの価格上昇が続き、価格転嫁が難しい中小企業を中心にコスト負担が重く圧し掛かっている。

 
 産業別は、最多が建設業の10件(前年同月1件)で、資材価格の高騰が深刻さを増している。
 業種別は、燃料価格の高止まりで道路貨物運送業6件のほか、飲食店5件、食料品製造業4件、飲食料品卸売業3件など、食品関連が13件発生。全体の3割(構成比31.7%)を占め、個人消費に直結する業種の価格転嫁の難しさを浮き彫りにしている。

 資本金別は1千万円以上が21件(構成比51.2%)、負債額別は1億円以上が23件(同56.0%)と、「物価高」倒産は中堅クラスが半数以上を占めた。

 東京商工リサーチが2月に実施した「原材料・資材の『調達難・コスト上昇に関するアンケート』調査では、資材の調達コストが増加した企業は86.8%にのぼった。このうち、コスト増加分を販売価格に「転嫁できていない」企業は半数以上の53.8%で、「増加分をすべて転嫁できた」企業はわずか1.8%にとどまった。
 あらゆるものが値上げりする一方、1月の実質賃金が前年比マイナス4.1%と下落し、企業だけでなく個人の生活にも影響が及んでいる。経済活動は本格再開に動き出したが、中小・零細企業ほど物価高の負担が重く、今後の倒産を押し上げるファクターになっている。

※ 本調査は、2023年2月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等により倒産(私的・法的)した企業を集計、分析した。


2023年2月の「物価高」倒産、前年同月の3.7倍増


 コロナ禍に加え、エネルギーや穀物の価格上昇が企業に深刻な影響を及ぼしている。2023年2月の「物価高」倒産は41件で、前年同月(11件)の3.7倍に急増した。四半期別は、2022年1-3月期が平均11件、同4-6月期は同18件、同7-9月期は同22件と徐々に増勢をたどり、同10-12月期は同43件に増加した。続く、2023年1-2月も同41件で高水準で推移している。
 2月の「物価高」倒産は、最多が建設業の10件で、製造業と卸売業が各8件、運輸業6件と続く。業種別では、資材価格が高騰している建設業、燃料価格が上昇する運送業が打撃が大きいようだ。ただ、飲食・食品関係も、物価上昇で節約に動く消費者に直結するだけに価格転嫁が容易でなく、倒産が目立つ。

「物価高」倒産 月次推移

【産業別】建設業が10件で最多


 10産業のうち、6産業で増加した。
 最多は建設業の10件(前年同期比900.0%増、前年同月1件)。工期が長く、その間の建設資材の高騰などが収益を圧迫する悪循環に嵌っているようだ。次いで、製造業と運輸業が各8件(同300.0%増、同2件)、卸売業が6件(同100.0%増、同3件)の順。
 コロナ禍からの経済活動の再開過程にあるが、原油やエネルギー、穀物などで様々なものの価格が上昇し、幅広い産業に影響が及んでいる。

「物価高」倒産 産業別状況

【業種別】総合工事業と道路貨物運送業が各6件


 産業別を細かく分類した業種別(業種中分類)では、最多が総合工事業と道路貨物運送業の各6件だった。総合工事業では、建築工事業が多く、建築資材の高騰の影響が深刻になっている。道路貨物運送業は燃料価格や人件費が上昇しているが、荷受け単価がアップせず、一方で価格転嫁も難しいことが背景にある。
 このほか、飲食店が5件、食料品製造業が4件、飲食料品卸売業が3件と、食品関連業種が並ぶ。

【負債額別】負債1億円以上が5割超


 負債額別は、最多が1億円以上5億円未満の18件で、全体の4割超(構成比43.9%)を占めた。
 このほか、5億円以上10億円未満3件、10億円以上2件で、1億円以上は合計23件(同56.0%)に達し、中堅規模にも影響が広がっている。

「物価高」倒産 負債額別状況

【形態別】破産が9割


 形態別は、消滅型の破産が37件(構成比90.2%)と9割を占めた。次いで、取引停止処分が3件(同7.3%)、特別清算が1件だった。
 コロナ禍で業績回復が遅れ、資金繰り支援策の副作用で過剰債務に陥った企業は多い。
 円安に加え、原材料やエネルギーなどの物価が上昇し、コストアップが直撃している。さらに、新たな資金調達も限界に達し、事業継続も困難な企業は、ほとんど破産を選択する実態が透けて見える。

【従業員数別】10人未満が6割


 従業員数別は、10人未満が25件で「物価高」倒産の6割(構成比60.9%)を占めた。このうち、5人未満が13件(同31.7%)、5人以上10人未満が12件(同29.2%)。
 このほか、20人以上50人未満が3件、50人以上300人未満が1件で、300人以上は発生しなかった。
 物価の上昇は、小規模から大企業まで幅広く影響を受けている。

【地区別】関東が最多の9件


 地区別は、最多が関東の9件(前年同月2件)で、「物価高」倒産の2割(構成比21.9%)を占めた。次いで、中部(前年同月1件)と近畿(同ゼロ)が各7件、東北(同4件)と九州(同2件)が各5件と続く。
 

 都道府県別では、24都道府県で発生した。
 最多が東京都の4件で、以下、北海道、宮城県、静岡県が各3件、埼玉県、神奈川県、三重県、大阪府、兵庫県、和歌山県、福岡県、鹿児島県が各2件で続く。

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ