• TSRデータインサイト

2022年12月、日銀の政策修正の余波  企業の約2割が「金利引き上げを示唆」されたと回答

「金融政策に関するアンケート」調査

 2022年12月20日、日本銀行が金融政策を一部修正した。こうした状況から、今後の資金調達の借入金利について、「上昇する」と感じる企業が約8割(78.9%)にのぼることがわかった。日銀は、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の対象となる10年国債利回りの上限を0.25%から0.5%に拡大。為替相場は円高に振れたが、こうした状況に国内企業は機敏に反応している。

日銀の金融政策の修正後、金融機関から「金利引き上げをはっきり伝えられた」企業は2.2%にとどまる。だが、「金利引き上げの可能性を示唆された」企業は16.3%に達し、合計すると約2割(18.5%)の企業が金融機関から金利引き上げを言及されている。コロナ禍の資金繰り支援で過剰債務に陥った企業が多いなか、金利引き上げは事業継続へのハードルを高くする。
また、生産性向上に向けた投資など、前向きの借入金も調達コストが上昇し、経済活性化や賃上げ原資の確保に暗い影を落としかねない。
2016年2月の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入などで、超低金利が続いた。だが、コロナ禍の出口を前にした金利の上昇局面では利払い負担が増す企業の市場退出を誘発することも想定される。

  • 本調査は、2023年2月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,139社を集計・分析した。
  • 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。

Q1.昨年12月の日本銀行による金融政策の変更の影響について伺います。 資金調達の借入金利は今後どのように変化すると思いますか?(択一回答)


◇借入金利が「上昇する」が78.9%

 最多は「今年(2023年)中に上昇する」の55.5%(4,139社中、2,299社)だった。「来年以降、上昇する」は23.4%(970社)で、合計78.9%が今後の上昇を予想している。
「下落する」と回答した企業は、1.8%(75社)にとどまった。
規模別では、「今年中に上昇する」と回答した大企業は56.8%(510社中、290社)、中小企業は55.3%(3,629社中、2,009社)だった。また、「来年以降、上昇する」は大企業が21.5%(110社)、中小企業が23.7%(860社)で、それぞれ合計78.4%、79.0%が金利上昇に言及した。

金融政策

Q2.昨年12月の日本銀行による金融政策の変更に関連して、今後の資金調達の借入金利について、メインの取引金融機関からどのような説明がありましたか?(択一回答) 


◇「金利引き上げ」は2割弱

 2022年12月20日、日銀が金融政策を一部修正して以降の金融機関のスタンスについて聞いた。
企業の19.9%(3,919社中、782社)は、政策変更後に金融機関とやりとりがなく、56.2%(2,205社)は金融機関と金利に関する話し合いをしていない。
ただ、「金利引き上げをはっきり伝えられた」企業は2.2%(87社)、「金利引き上げの可能性を示唆された」企業は16.3%(640社)で、合計18.5%の企業がすでに金融機関から金利引き上げに言及されている。
「金利引き上げをはっきり伝えられた」、または「金利引き上げの可能性を示唆された」と回答した企業を業種別(業種中分類、回答母数20以上)で分析すると、構成比の最高は「窯業・土石製品製造業」の37.2%(43社中、16社)だった。
以下、「物品賃貸業」の37.1%(35社中、13社)、「鉄鋼業」の32.4%(37社中、12社)など、設備投資など多額の
事業資金の投入を要する業種が上位を占めた。

金融政策

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月の「人手不足」倒産が過去最多 「従業員退職」が前年の1.6倍増、初の年間300件超へ

2025年9月に「人手不足」が一因となった倒産は、調査を開始した2013年以降では月間最多の46件(前年同月比109.0%増)を記録した。また、2025年1-9月累計も、過去最多の285件(前年同期比31.3%増)に達し、人手不足はより深刻さを増していることがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

ケーキや和菓子は「高値の花」に、スイーツ店が苦境 倒産は過去20年で最多ペース、競合商品も台頭

街のスイーツ店が苦境に陥っている。材料コストの上昇、酷暑、人手不足が重なり、商品値上げによる高級化も購入機会の減少につながったようだ。2025年1-9月の菓子製造小売の倒産は、過去20年で最多の37件に達した。

3

  • TSRデータインサイト

2025年1-9月「後継者難」倒産が過去2番目 332件 高齢化が加速、事業承継の支援が急務

代表の高齢化が進み、後継者が不在のため事業に行き詰まる企業が高止まりしている。2025年1-9月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は332件(前年同期比4.5%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。だが、2025年は過去最多だった前年同期の348件に次ぐ、過去2番目の高水準だった。

4

  • TSRデータインサイト

2025年 全国160万5,166社の“メインバンク“調査

全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度上半期の「円安」倒産30件 仕入コスト上昇が卸売業を直撃

2025年度上半期(4-9月)の「円安」関連倒産は、30件(前年同期比31.8%減)だった。上半期では、2022年度以降の円安では前年度の44件に次いで、2番目の高水準になった。

TOPへ