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企業の9割超が電気代「値上がり」、でも「価格転嫁」できず

 直近1カ月の電気料金が前年同月より上がった企業は9割超(94.6%)に達した。電気料金の値上がり率は、4社に1社が前年同月比10%~20%未満(構成比23.9%)だったが、100%以上も6.2%あった。また、電気料金の増加分を、まったく価格転嫁できていない企業は90.9%に達し、急激な電気料金の上昇分の価格転嫁が追い付かないことがわかった。 
今年1月から8月までの使用分のうち、企業など高圧契約が3.5円/kWh、一般家庭などの低圧契約は7.0円/kWhの電気料金を値引きする国の負担軽減策が始まっている。しかし、東京電力HDの電力小売子会社は今年4月から法人向け料金の引き上げを予定するなど、多くの電力会社や新電力も値上げを実施または予定しており、今後も電気料金の負担増が続くとみられる。
企業は、省エネ製品の導入や節電などの対策を講じているが、業種によって電気利用量が違い、値上げの影響度も異なる。今後、価格転嫁の進捗次第では、電気料金の値上げが企業収益に深刻な影響を及ぼす可能性も強まっている。

  • 本調査は、2023年2月1日~8日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答4,434社を集計・分析した。
  • 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。


Q1.直近1カ月の電気料金は、前年同月より値上がりしましたか?(択一回答)

 直近1カ月の電気料金について、前年同月より「値上がりした」が94.6%(4,195社)に達し、ほぼすべての企業が値上げに巻き込まれている。一方、「値上がりしていない」は5.3%(239社)にとどまった。
規模別では、「値上がりした」は大企業が94.7%(555社中、526社)、中小企業が94.5%(3,879社中、3,669社)で差はなく、規模の大小を問わず値上がりが広がっている。
一方、「値上がりしていない」は大企業が5.2%(29社)、中小企業が5.4%(210社)と、ほぼ拮抗した。
電力会社との契約見直しや省エネ投資、節電などの経営努力があったと思われる。

電気料金アンケート

Q2.「値上がりした」と答えた方に伺います。直近1カ月の電気料金は前年同月より何%上昇しましたか?

 電気料金の値上がり率は、前年同月と比較して、10%単位で「10~20%未満」が23.9%(2,208社中、528社)で最多だった。
10~40%未満が56.4%(1,247社)と半数以上を占め、10%未満は15.5%(343社)にとどまった。
また、100%以上は6.2%(137社)で、契約条件や使用量により急上昇した企業も少なくない。

電気料金アンケート

Q3.Q1で「値上がりした」と答えた方に伺います。電気料金の増加分のうち、何%を価格転嫁できていますか?(複数回答) 

 Q1で、「値上がりした」と回答した企業のうち、3,266社から回答を得た。
最多は、まったく「転嫁できていない」の90.9%(2,970社)だった。
一方、「全額転嫁」は0.8%(27社)にとどまる。
規模別で、まったく「転嫁できていない」は、大企業が91.7%(363社中、333社)、中小企業が90.8%(2,903社中、2,637社)で大差なく、大企業も価格転嫁が難しい実態が浮き彫りになった。

転嫁できず、情報通信業が97.5%

 「価格転嫁できていない」企業をそれぞれ業種別(業種中分類、回答母数20以上)で分析した。
100%だったのは、建築設計業などの「技術サービス業」(55社)、自動車小売業など「機械器具小売業」(40社)、婦人・子供服卸売業など「繊維・衣服等卸売業」(27社)、介護事業など「社会保険・社会福祉・介護事業」(22社)。
産業別では、情報通信業が97.5%(164社中、160社)で、価格転嫁できていない比率が高かった。次いで、サービス業他95.7%(516社中、494社)、建設業95.5%(404社中、386社)の順。最も低かったのは製造業82.6%(1,083社中、895社)だった。

電気料金アンケート


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