• TSRデータインサイト

「ゼロ・ゼロ融資後」倒産 1月は48件、前年同月の6倍に増加

~「ゼロ・ゼロ融資」の効果が薄まる~

 2023年1月の 「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を利用した後の倒産は、48件(前年同月比500.0%増)だった。ゼロ・ゼロ融資は中小企業の資金繰り緩和に大きな効果を発揮したが、一方で過剰債務も誘発した。業績回復の遅れと過剰債務で、新たな資金を調達できない企業の息切れが押し上げている。
 さらに、返済開始に加え、最長3年間の利子補給が終了する企業もあり、今後は返済猶予を要請する企業も増えるとみられる。1月の48件は前年同月の6倍で、2022年8月から6カ月連続で40件を上回り、2020年7月からの累計は633件に達した。

産業別では、最多が飲食店(9件)や持ち帰り・配達飲食サービス業(3件)などを含むサービス業他の20件(前年同月比566.6%増)。以下、建設業9件(同200.0%増)、小売業7件(同600.0%増)の順。新たな生活様式の浸透によるライフスタイルの変化や原材料・資材などの急激な価格上昇などの影響が大きかった。
負債額別では、1億円未満が25件(構成比52.0%)、1億円以上が23件(同47.9%)と、ほぼ拮抗している。ゼロ・ゼロ融資で小・零細企業も負債が膨らむ傾向にある。
ゼロ・ゼロ融資は、2020年3月に政府系金融機関、同年5月に民間金融機関で受付が開始された。
当初の借入では、元金返済の据置期間は1年が多かった。だが、コロナ禍の収束見通しが不透明で、2020年12月から2021年3月に借換で実質据置期間を延ばす中小企業が増加した。今後、夏場にかけてゼロ・ゼロ融資の返済開始がヤマ場を迎えるが、業績回復の遅れから返済原資を捻出できない企業も少なくないとみられる。このため、2023年1月に始まった借換制度を活用し、金融機関や再生ファンドだけでなく、官民一体のきめ細やかな支援が重要になっている。

  • 本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。


1月の倒産は48件、前年同月の6倍に増加

 2023年1月の「ゼロ・ゼロ融資後」倒産は48件(前年同月比500.0%増)で、前年同月(8件)の6倍と大幅に増えた。ゼロ・ゼロ融資の元金据置期間は当初1~2年とみられ、政府系金融機関で受付が開始された2020年3月から2年が経過した2022年3月以降、「ゼロ・ゼロ融資後」倒産はそれまでの10件台から大幅に増加した。
特に、2022年8月から6カ月連続で40件以上で推移しているが、最長3年の利子補給も順次終了する春以降、「ゼロ・ゼロ融資後」倒産はさらに増勢ピッチが強まることが懸念される。

ゼロゼロ融資

【産業別】サービス業他が20件で最多

 産業別は、最多がサービス業他の20件(前年同月比566.6%増)で、全体の4割(構成比41.6%)を占めた。飲食業(12件)、洗濯・理容・美容・浴場業(2件)、宿泊業(1件)など、新たな生活様式の定着で業績が戻らないことに加え、支援効果も薄れたことで資金繰りは限界に達した。
このほか、建設業9件(前年同月比200.0%増)、小売業7件(同600.0%増)、「卸売業」4件(前年同月ゼロ)と運輸業(前年同月比300.0%増)が各4件、製造業が2件、不動産業と情報通信業が各1件だった。
農・林・漁・鉱業と金融・保険業は、いずれも前年同月と同様に発生がなかった。

ゼロゼロ融資

【業種別】最多は飲食店の9件

 業種別の中分類では、最多が「飲食店」の9件だった。仕出し弁当やケータリングサービスなど「持ち帰り・配達飲食サービス業」3件を合わせ、「飲食業」は合計12件発生した。
このほか、食品関連では、パン屋を含む「飲食料品小売業」が5件、「飲食料品卸売業」が2件だった。コロナ禍の支援効果も希薄化し、ウクライナ情勢や円安による原材料高・価格上昇も重くのしかかった。
また、建設業では「職別工事業」4件、「設備工事業」3件、「総合工事業」2件と、資材の調達遅れや価格上昇、工事延期・見直しなどの影響が大きい。

【負債額別】負債1億円以上が約5割

 負債額別は、最多が「1億円以上5億円未満」の19件で、約4割(構成比39.5%)を占めた。
以下、「1千万円以上5千万円未満」16件(同33.3%)、「5千万円以上1億円未満」9件(同18.7%)、「5億円以上10億円未満」4件(同8.3%)の順。
1億円未満が25件(同52.0%)に対し、1億円以上は23件(同47.9%)と、ほぼ拮抗している。

ゼロゼロ融資

【形態別】再建型はゼロ

 形態別では、消滅型の破産が最多の44件(前年同月比528.5%増)で、全体の9割(構成比91.6%)を占めた。特別清算が1件(前年同月比±0.0%)で、消滅型の倒産は合計45件(同462.5%増)だった。
一方、再建型の会社更生法と民事再生法は、前年同月と同様に発生がなかった。
事業の転換や再構築などに取り組めず、経営再建の見通しが立たないまま事業継続を諦めて「破産」を申請するケースが大半を占めた。
このほか、取引停止処分が3件(前年同月ゼロ)。

【従業員数別】10人未満が7割超

 従業員数別は、5人未満が26件(構成比54.1%)で最も多く、半数以上を占めた。
次いで、5人以上10人未満が10件(同20.8%)で、10人未満が36件で、4分の3(同75.0%)だった。
このほか、10人以上20人未満が8件(同16.6%)、20人以上50人未満と50人以上300人未満が各2件(同4.1%)だった。

【地区別】最多が関東の22件

 地区別は、最多が関東の22件で、構成比は45.8%を占めた。
次いで、東北と中部、近畿、九州が各5件(構成比10.4%)、中国と四国が各2件(同4.1%)、北海道と北陸が各1件の順で、9地区すべてで倒産が発生。

都道府県別は、最多が東京都の10件だった。以下、宮城県と埼玉県が各5件、千葉県と大阪府が各3件、長野県と京都府、広島県、福岡県、沖縄県が各2件と続く。 

記事の引用・リンクについて

記事の引用および記事ページへのリンクは、当サイトからの出典である旨を明示することで行うことができます。

(記載例) 東京商工リサーチ TSRデータインサイト ※当社名の短縮表記はできません。
詳しくはサイトポリシーをご確認ください。

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

ゴールデンウィーク明け、「退職代行サービス」の利用は慎重に

長かったゴールデンウィークが終わる。職場「復帰」を前に例年4月の新年度からGW明けにかけ、退職する人の話題が持ち上がる。この時期の退職代行サービスの利用も増加するという。4月に実施した「退職代行に関する企業向けアンケート調査」から利用するリスクの一端が浮き彫りになった

2

  • TSRデータインサイト

トーシンホールディングスの「信用調査報告書」

5月8日に東京地裁に会社更生法の適用を申請した(株)トーシンホールディングス(TSRコード:400797887、名古屋市、東証スタンダード)を取り上げる。

3

  • TSRデータインサイト

2025年度「医療・福祉事業」倒産、過去最多 ~ 健康と生活を支援する事業者の倒産急増 ~

生活に不可欠な医療機関や介護事業者の倒産が急増している。バブル経済1988年度(4-3月)以降の38年間で、2025年度は金融危機、リーマン・ショックを超える478件と最多を記録した。

4

  • TSRデータインサイト

2026年4月「人手不足」倒産 33件発生 春闘の季節で唯一、「人件費高騰」が増加

2026年4月の「人手不足」倒産は33件(前年同月比8.3%減)で、3カ月ぶりに前年同月を下回った。 4月の減少は2022年以来、4年ぶり。

5

  • TSRデータインサイト

2025年度の「早期・希望退職」 は2万781人 約7割が「黒字リストラ」、2009年度以降で4番目の高水準

2025年度に「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は46社(前年度51社)で、人数は2万781人と前年度(8,326人)の約2.5倍に急増したことがわかった。社数は前年度から約1割(9.8%減)減少したが、募集人数は2009年度以降で4番目の高水準となった。

TOPへ