11月34件で、前年の年間件数を超える ~ 2022年11月『後継者難』倒産の状況調査 ~
2022年11月の後継者不在による『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)は34件(前年同月比17.0%減)で、11月としては2年ぶりに30件台にとどまった。2022年1-11月累計は389件(前年同期比11.1%増)に達した。前年の年間381件を抜き、初めて年間400件台に乗せることがほぼ確実になった。
要因別では、代表者の「体調不良」が16件(構成比47.0%)、「死亡」が14件(同41.1%)と、この2要因で『後継者難』倒産の約9割(同88.2%)を占めた。
産業別の最多は、製造業の10件(前年同月比66.6%増)で、11月では初めて10件台に乗せた。次いで、サービス業他9件(同±0.0%)、小売業6件(前年同月ゼロ)の順。
2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)に伸びた。2022年の「後継者不在率」調査(約17万社対象)では、約6割(59.9%)の企業で後継者がいない。代表者の高齢化と後継者不在は事業継続に大きな経営リスクとなっている。
規制緩和で銀行が投資専門子会社を通じた企業買収が可能となり、「事業承継」ファンドの設立が相次いでいる。ただ、中小・零細企業は事業の独自性が乏しく、事業承継が難しい状況に変わりはない。さらに、資金力もぜい弱で、独自に事業承継や後継者の育成には手が回らないのが実情だ。
中小・零細企業の事業承継を促すには、自治体や金融機関、商工団体などの支援が欠かせない。
同時に、経営者保証を外すなど、事業承継に向けた経営者の真剣な意識改革と行動も必要だろう。
- ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年11月の『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。
11月の『後継者難』は34件、11月では5年ぶりに前年同月を下回る
2022年11月の『後継者難』倒産は34件(前年同月比17.0%減)で、11月では2020年の39件以来、2年ぶりに30件台にとどまった。また、負債1,000万円以上の倒産全体の5.8%(前年同月8.0%)に構成比を下げた。
コロナ関連支援が奏功し、企業倒産は抑制されてきた。だが、ここにきて支援効果も薄れ始め、低水準ながら企業倒産は2022年4月から11月まで8カ月連続で前年同月を上回り、増勢局面が鮮明になっている。
すでに金融機関だけでなく一般企業でも、リスクマネジメントでは代表者の年齢や後継者の有無を重視する傾向にある。ただ、高齢の代表者が、独自に事業承継や後継者育成に取り組むことは難しい段階に入っている。自治体や金融機関、投資ファンドなどの支援も欠かせない。
【要因別】「体調不良」が16件で約5割
要因別の最多は、代表者などの「体調不良」が16件(前年同月比6.6%増)で、11月では3年ぶりに前年同月を上回った。構成比は47.0%で、前年同月の36.5%より10.5ポイント上昇した。
次いで、「死亡」の14件(前年同月比22.2%減、構成比41.1%)で、3年ぶりに前年同月を下回った。
代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計30件(前年同月比9.0%減)で、5年ぶりに前年同月を下回った。ただ、構成比は88.2%で、前年同月の80.4%より7.8ポイント上昇した。
このほか、「高齢」が2件(同60.0%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。
代表者の高齢化が進み、「死亡」や「体調不良」で事業継続が困難になる経営上のリスクが浮き彫りとなっている。
【産業別】10産業のうち、増加3、減少4、同件数3
産業別件数は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業と製造業、小売業の3産業が増加し、減少は建設業、卸売業、不動産業、情報通信業の4産業。同件数は3産業だった。
最多は、製造業の10件(前年同月比66.6%増)で、11月では2年連続で前年同月を上回り、初めて10件台に乗せた。構成比は29.4%で、前年同月の14.6%より14.8ポイント上昇した。
このほか、農・林・漁・鉱業1件と小売業6件が、それぞれ2年ぶりに発生した。
一方、建設業が4件(同60.0%減)で2年連続、卸売業が1件(同90.0%減)で4年ぶり、不動産業が1件(同66.6%減)で3年ぶり、情報通信業が1件(同50.0%減)で5年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
運輸業1件とサービス業他9件が、それぞれ前年同月と同件数。また、金融・保険業は、2013年から発生していない。
業種別件数では、織物製成人男子・少年服製造業と自動車(新車)小売業が各2件(前年同月ゼロ)。豆腐・油揚製造業、木製家具製造業、砕石製造業、製缶板金業、化学機械・同装置製造業、運動用具製造業、医療用機械器具卸売業、中古自動車小売業、がん具・娯楽用品小売業、たばこ・喫煙具専門小売業、花・植木小売業、デザイン業、経営コンサルタント業、日本料理店、葬儀業、無床診療所、訪問介護事業、産業廃棄物収集運搬業などが各1件で、それぞれ前年同月を上回った。
【形態別】破産が9割超
形態別件数は、「破産」が33件(前年同月比8.3%減)で、11月では2年連続で前年同月を下回った。構成比は97.0%で、前年同月の87.8%より9.2ポイント上昇した。「民事再生法」は1件で、2年ぶりに発生した。「会社更生法」は調査を開始した2013年以降、発生はない。「特別清算」は2年ぶりにゼロだった。
業績不振に陥った企業は、後継者の育成や事業承継の準備が後回しになりやすい。代表者に不測の事態が生じた場合、即座に事業継続が困難になり、ほとんどが破産を選択している。
【資本金別】1千万円未満が約6割
資本金別件数は、「1千万円未満」が20件(前年同月比5.2%増)で、2年ぶりに前年同月を上回った。構成比は58.8%で、前年同月の46.3%より12.5ポイント上昇した。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が10件(同54.5%減)で、5年ぶりに前年同月を下回った。一方、「5千万円以上1億円未満」3件は3年ぶり、「1億円以上」1件は2014年(2件)以来、8年ぶりに、それぞれ発生した。
【負債額別】1億円未満が6割超
負債額別件数は、「1億円未満」が21件(前年同月比22.2%減)で、構成比は61.7%(前年同月65.8%)だった。「1千万円以上5千万円未満」が13件(前年同月比27.7%減)で2年連続、「5千万円以上1億円未満」が8件(同11.1%減)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
このほか、「1億円以上5億円未満」が10件(同28.5%減)で、4年ぶりに前年同月を下回った。
一方、「5億円以上10億円未満」と「10億円以上」は、それぞれ2年ぶりに発生した。