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インボイス制度開始まで1年  9月の登録は最多の20万件超に、個人企業は低調    

 2023年10月に始まるインボイス制度の開始まで1年。今年9月末の登録数は120万5,084件で、9月は月間最多の20万件超が登録された。だが、法人の登録は100万件に迫るが、個人企業は約25万件にとどまり、個人企業の登録の動きが鈍いことがわかった。国税庁が登録を見込む約300万件には、まだ半数にも届かず、個人企業を中心にインボイス制度に慎重な姿勢も浮き彫りにしている。

国税庁の適格請求書発行事業者サイトの公表データを、東京商工リサーチ(TSR)が独自に分析した。法人の登録数は2021年10月から2022年5月まで、月間10万件を大幅に下回り、低調な動きだった。だが、6月に入ると12万4,568件に急増。9月は月間最多の15万4,816件が登録された。インボイス制度の認知に伴い登録数が増え、9月末の法人の事業者登録は96万1,918件に達した。
総務省の「経済センサス」の法人数(187万7,488件)を基に試算すると、法人登録率は51.2%で法人の半数が登録している。都道府県別の登録率では、最高が東京都の57.6%、最低は秋田県の43.4%で、地域差が広がっている。
一方、9月末の個人企業の登録は24万1,792件で、登録率は12.2%にとどまる。個人企業は課税売上高1,000万円以下の免税事業者が多く、取引先によっては制度登録の必要がなく、登録率は法人と比べて低い傾向にある。だが、TSRが8月1日~9日に実施した企業アンケートで、制度開始後、免税事業者とは「取引しない」と9.8%の企業が回答。対応を決めていない「未定」も46.7%あり、このまま登録しないか、取引継続のため登録するか、個人企業の悩みは深い。
制度開始の登録には2023年3月末までの申請が必要だ。残り半年で約180万件の企業・フリーランスが登録するか判断するが、単純計算で1カ月で30万件の登録が集中することになる。申請が集中すると登録に時間を要するため、国税庁は早めの登録を呼びかけている。

※本調査は、国税庁「適格請求書発行事業者の公表情報」の法人及び個人企業の登録情報(2022年9月末)を基に、TSRが分析した。法人数は、総務省「平成28年経済センサス」(活動調査・確報集計(企業等に関する集計))に基づく。

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 国税庁によると、インボイス登録事業者(適格請求書発行事業者)のうち、2022年9月末で法人(人格のない社団等を除く)の登録数は96万1,918件だった。
総務省「平成28年経済センサス」に基づく法人数は187万7,488件で、登録率は51.2%と半数に達する。8月末のデータとの比較では、登録率は8.7ポイント上昇した。
また、9月末の個人企業の登録数は24万1,792件で、経済センサスに基づく個人企業197万9,019件の12.2%にとどまる。これは前月に比べ2.3ポイント増で、法人の約4分の1のペースだ。
9月末のデータでインボイス登録数の月次推移を分析した。法人は2022年2月まで伸び悩んだが、3月からピッチをあげて9月も大幅に増加した。
一方、個人企業は2022年7月まで月3万件を下回り、8月、9月は4万件台に乗せたが、ペースは法人と比べると著しく鈍い。

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法人の都道府県別インボイス登録率 東京都が登録率トップ

 2022年9月末の法人登録数や登録率を都道府県別で分析した。
登録済みの96万1,918件の都道府県別の登録数は、トップが東京都の15万6,745件(構成比16.2%)だった。次いで、大阪府の7万8,524件、愛知県の5万9,799件、神奈川県の5万713件、埼玉県の4万3,594件、北海道の3万7,913件、福岡県の3万6,579件と、大都市圏が上位を占めた。
一方、登録数が最も少なかったのは鳥取県の4,197件で、次いで、高知県の4,931件、佐賀県の4,944件と続き、この3県が5,000件未満だった。
登録率では、東京都が57.6%で最も高かった。8月末は47.4%で5位だったが、9月に登録が一気に進んだ。2位は山梨県が57.1%(前回16位)と大幅に順位をあげた。3位は大阪府の56.2%(同4位)、4位は三重県の55.5%(同18位)、5位は岡山県の55.0%(同3位)の順だった。
8月末は1位だった富山県は10位に順位を落としたが、登録率は52.2%と高位を維持している。登録率50%超は19都府県だった。
一方、登録率が最も低かったのは、秋田県の43.4%(前回順位44位)だった。次いで、長崎県の44.9%(同38位)、神奈川県の44.9%(同45位)、佐賀県45.0%(同40位)、和歌山県45.3%(同40位)と、地方が目立つ。
※ 国税庁は9月26日、個人情報保護の観点から個人企業の所在地や氏名などをダウンロードデータから削除したため、個人企業の都道府県別の分析はできない。

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