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パチンコホールの倒産が急増、スマートパチスロの登場で淘汰が加速も

 今年8月までのパチンコホールの倒産が20件に達し、昨年1年間の倒産を超えた。コロナ禍から回復基調にあった来店客数も、2022年1月末の5号機完全撤去以降はパチスロの売上が急激に減少し、6号機(射幸性の低い遊技機)への入替えも負担になっている。
11月に登場するスマートパチスロは業界が大きな期待を寄せるが、システム変更を伴う新規則遊技機の交換が必要で体力の落ちたパチンコホールの導入は難しい。体力格差が倒産に直結する事態も現実味を帯びている。

 2022年1-8月のパチンコホールの倒産は20件で、2021年間の18件を上回った。9月も4件の破たんが判明し、2014年(32件)以来、8年ぶりに30件台に達する可能性が出てきた。
資金力のあるパチンコホールは、ドル箱を積まない計数機の導入やセルフ式景品カウンターなど、コスト削減を急いでいる。一方で、資金余裕の乏しいホールは効率化の遅れから人員削減も進まず、コスト増で経営が悪化する負のスパイラルに陥っている。

コスト削減が利益回復の鍵に

 首都圏のあるパチンコホールの総務部長は、「コロナ禍で高齢者の来店数の回復が遅れ、パチンコ台の稼働に影響が出ている」と語る。
ただ、同ホールは高い利益率を維持している。それは「利便性と効率性を高め、コロナ前よりコストを大幅に削減できたことが大きい」と分析する。苦戦するホールは、人件費や電気料金などのコストアップが利益に食い込み、合理化投資をできないことが特徴だ。

「スマートパチスロ」の登場で淘汰加速も

 苦戦するパチンコホールに、さらなる難題が降りかかる。11月にメダルなどが電子化された「スマートパチスロ」の登場だ。メダルを投入しない次世代機だが、導入には大きな投資がのしかかる。
スマートパチスロは、サーバーやユニットなどシステム投資を含め一台当たり約100万円の設備投資が必要になる。先述の総務部長は、「半導体不足もあり、台の確保が難しい。さらに、システム工事などの業者も奪い合いで、先に押さえることが重要だ」と話す。ホールでは、すでに水面下で機械や工事業者の奪い合いが起きている。
関係者によると、スマートパチスロは現行の規格より射幸性が高く、人気を集める遊技台になる可能性が高いという。
だが、資金力の乏しいホールは、スマートパチスロの導入が容易ではない。このままでは年末年始の稼ぎ時に、スマートパチスロを導入したホールとそうでないホールの間で来店客数に大きな違いが出るかも知れない。

 「スマートパチスロ」が、パチンコホールの売上回復の起爆剤と期待する声も多い。だが、コロナ禍で倒産や廃業に追い込まれるパチンコホールは各地で増えている。
いま、パチンコ業界が起死回生の期待をかけるスマートパチスロ、2023年に導入予定の「スマートパチンコ」は、さらに業界淘汰を加速する“諸刃の剣”にもなりかねない。

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