• TSRデータインサイト

上場3,213社 平均給与605万5,000円、2018年度に並びこの10年で最高 ~ 2021年度「平均年間給与」調査 ~

  2021年度(21年4月期-22年3月期)の上場3,213社の平均年間給与(以下、平均給与)は、605万5,000円(前年度比1.7%増)で、前年度(595万1,000円)から10万4,000円増加した。
  平均給与は、19年度と20年度の2年連続で前年度を下回ったが、3年ぶりに増加した。前年度と比較可能な3,102社では、約7割(67.2%)にあたる2,087社が前年度の平均給与を上回った。
  上場企業の平均給与は12年度から10年間で6.0%伸び、賃金が伸び悩む民間企業と好対照となった。

 「民間給与実態統計調査」(令和2年分、国税庁)によると、民間企業の平均給与は495万7,000円(正規)で、上場企業の平均給与は1.2倍の水準だった。平均給与の中央値は588万3,000円(前年度576万8,000円)で、3年ぶりに上昇した。
 平均給与のトップは、M&A仲介のM&Aキャピタルパートナーズで2,688万4,000円(前年度2,269万9,000円)。前年度から18.4%増え、2014年度から8年連続でトップを維持した。
 以下、2位キーエンス(2,182万7,000円)、3位ヒューリック(1,803万2,000円)、4位地主(1,694万4,000円)、5位伊藤忠商事(1,579万7,000円)で、トップ10にはM&A関連、総合商社、不動産、電気機器などが並んだ。
 上場企業はコロナ禍でも円安などを背景に、輸出企業などで業績回復が目立ち、賞与や残業手当が増えた。賃上げは資金繰りへの負担が大きく、業種や業績で二極化が広がっている。

  • 本調査は、2021年度決算(2021年4月期-2022年3月期)の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書の平均年間給与を抽出、分析した。変則決算企業と持株会社は除いた。業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。

上場企業平均年間給与

平均給与 「増加」が約7割

 2021年度の上場3,213社の平均給与は、前年度と比較可能な3,102社では前年度より増えたのは2,087社(構成比67.2%)と約7割に達した。一方、減少は993社(同32.0%)、横ばいは22社(同0.7%)だった。「増加」企業数の割合が、「減少」企業数の割合を上回ったのは2年ぶりで、コロナ禍でも上場企業は業績回復が進み、賃上げに繋がった。

上場企業平均年間給与 増減

産業別 電気・ガス業が2年連続トップ

 コロナ禍の影響を受けた2020年度は10産業のうち、8産業で平均給与が前年度を下回ったが、2021年度は業績の回復を背景に、10産業すべてが増加した。
 コロナ禍でも業績回復で賞与や残業代などのアップに加え、円安の恩恵も寄与して平均給与を押し上げたようだ。
 産業別では、最高は電気・ガス業の731万7,000円。前年度(730万6,000円)から1万1,000円増え、2年連続で前年度を上回った。以下、建設業713万5,000円(前年度707万8,000円)、不動産業674万6,000円(同658万9,000円)と続く。最低は、小売業の472万1,000円(同467万9,000円)。
 平均給与トップの電気・ガス業と最低の小売業の差は、259万6,000円(前年度262万7,000円)で、1.5倍の差が生じている。
 平均給与の伸び率は、最高が卸売業の2.6%増(610万2,000円→626万1,000円)。卸売業では270社のうち、193社(構成比71.4%)が前年度を上回った。次いで、製造業の2.5%増(606万1,000円→621万8,000円)。1,319社のうち、958社(構成比72.6%)が前年度を上回った。

上場企業平均年間給与産業別

平均給与1,000万円以上 10年間で最多の57社

 個別企業の平均給与は、トップがM&Aキャピタルパートナーズで2,688万4,000円(前年度2,269万9,000円)。8年連続でトップを維持し、19年度3,109万3,000円、17年度2,994万8,000円に次いで、3番目の高水準だった。
 2位はキーエンスの2,182万7,000円(同1,751万7,000円)で、2,000万円以上は2社(同1社)だった。3位はヒューリックの1,803万2,000円、4位は地主の1,694万4,000円(同変則決算)、5位は伊藤忠商事1,579万7,000円(同1,627万8,000円)。
 トップ10は、総合商社が5社、不動産が2社、M&A仲介、電機機器、医薬品が各1社だった。
 平均給与額レンジは、最多が500万円以上600万円未満の984社で、構成比は30.6%を占めた。次いで、600万円以上700万円未満が783社(構成比24.3%)、500万円未満が742社(同23.0%)、700万円以上800万円未満が442社(同13.7%)、800万円以上900万円未満が152社(同4.7%)の順。1,000万円以上は57社(同1.7%)で、前年度から8社増えた。
 500万円以上600万円未満、500万円未満の平均給与額のレンジの構成比が前年度から減少した一方、600万円以上のレンジは上昇し、上場企業でも業績、業種による格差が広がった格好だ。

上場企業平均年間給与金額別

上場企業平均年間給与ランキング

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「社長の出身大学」 日本大学が15年連続トップ 40歳未満の若手社長は、慶応義塾大学がトップ

2025年の社長の出身大学は、日本大学が1万9,587人で、15年連続トップを守った。しかし、2年連続で2万人を下回り、勢いに陰りが見え始めた。2位は慶応義塾大学、3位は早稲田大学と続き、上位15校まで前年と順位の変動はなかった。

2

  • TSRデータインサイト

内装工事業の倒産増加 ~ 小口の元請、規制強化で伸びる工期 ~

内装工事業の倒産が増加している。業界動向を東京商工リサーチの企業データ分析すると、コロナ禍で落ち込んだ業績(売上高、最終利益)は復調している。だが、好調な受注とは裏腹に、小・零細規模を中心に倒産が増加。今年は2013年以来の水準になる見込みだ。

3

  • TSRデータインサイト

文房具メーカー業績好調、止まらない進化と海外ファン増加 ~ デジタル時代でも高品質の文房具に熱視線 ~

東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースによると、文房具メーカー150社の2024年度 の売上高は6,858億2,300万円、最終利益は640億7,000万円と増収増益だった。18年度以降で、売上高、利益とも最高を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

ゴルフ練習場の倒産が過去最多 ~ 「屋外打ちっぱなし」と「インドア」の熾烈な競争 ~

東京商工リサーチは屋外、インドア含めたゴルフ練習場を主に運営する企業の倒産(負債1,000万円以上)を集計した。コロナ禍の2021年は1件、2022年はゼロで、2023年は1件、2024年は2件と落ち着いていた。 ところが、2025年に入り増勢に転じ、10月までの累計ですでに6件発生している。

5

  • TSRデータインサイト

解体工事業の倒産が最多ペース ~ 「人手と廃材処理先が足りない」、現場は疲弊~

各地で再開発が活発だが、解体工事を支える解体業者に深刻な問題が降りかかっている。 2025年1-10月の解体工事業の倒産は、同期間では過去20年間で最多の53件(前年同期比20.4%増)に達した。このペースで推移すると、20年間で年間最多だった2024年の59件を抜いて、過去最多を更新する勢いだ。

TOPへ