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マイナスの影響は業種により濃淡 自動車部品、繊維、半導体関連は90%台に ~「上海ロックダウンに関するアンケート」調査~

 6月1日、2カ月以上にわたる中国・上海のロックダウンが解除された。しかし、余波は国内企業に広がっている。
東京商工リサーチ(TSR)はロックダウン解除直後の6月1日~9日にかけて、「上海ロックダウン」についてアンケート調査を実施した。それによると、マイナスの影響が「継続している」と回答した企業は44.9%に達した。また、マイナスの影響が「出たが収束した」は2.7%、「今後出る可能性がある」は18.6%で、合計66.3%が「マイナスの影響」について言及した。
一方、プラスの影響が「継続している」は0.4%にとどまり、「出たが収束した」と「今後出る可能性がある」を合わせても2.7%だった。
「マイナスの影響」では、「原材料の高騰に伴う利益圧迫」が47.8%で最も多く、次いで「日本国内での資材や部品等の調達がしにくくなった」の46.8%が僅差で続いた。
上海ロックダウンは、改めて国際的なサプライチェーンの脆弱さを露呈した。ロックダウンは解除されたが、納期遅れや物流の乱れは残されている。国内企業はコロナ禍から回復途上にあるが、調達部門の混乱から業績計画や事業再構築の取り組みの練り直しを迫られそうだ。

  • 本調査は、2022年6月1日~9日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,799社を集計・分析した。
    資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。

Q1.中国・上海のロックダウン(都市封鎖)は、貴社の企業活動に影響を及ぼしていますか?(択一回答)


「マイナスの影響」が66.3%に

  上海ロックダウンのマイナスの影響が「継続している」と回答した企業は44.9%(5,799社中、2,605社)だった。マイナスの影響が「出たが収束した」は2.7%(161社)、「今後出る可能性がある」は18.6%(1,081社)で合計66.3%が「マイナスの影響」をあげた。
影響が出た企業を業種別(中分類、母数20以上)で分析すると、自動車部品などを含む「輸送用機械器具製造業」が93.8%(81社中、76社)で突出した。
また、「繊維・衣服等卸売業」は91.0%(67社中、61社)、半導体などの「電子部品・デバイス・電子回路製造業」は90.9%(55社中、50社)と高く、中国依存の幅広さを改めて見せつけた。

上海ロックダウンアンケート


Q2.Q1で「マイナスの影響が継続している」、「マイナスの影響が出たがすでに収束した」、「現時点で影響は出ていないが、今後マイナスの影響が出る可能性がある」と回答された方に伺います。どのような影響を受けていますか(見込まれますか)?(複数回答) 


「原材料高騰」が47.8%

 Q1で「マイナスの影響」をあげた企業のうち、3,674社から回答を得た。
最多は、「原材料の高騰に伴う利益圧迫」の47.8%(1,758社)だった。次いで、「日本国内での資材や部品等の調達がしにくくなった」の46.8%(1,720社)が続く。
一方、「現地での資材や部品等の調達がしにくくなった」は30.9%(1,137社)、「現地(中国)での生産等の業務が停滞又は停止した」は23.0%(846社)で、現地での生産活動にも大きな影響が出たことがわかる。
規模別では、「現地(中国)での生産等の業務が停滞、又は停止した」は、大企業で36.2%(555社中、201社)に対し、中小企業は20.6%(3,119社中、645社)で、15ポイント以上の差が開いた。
「その他」は、「顧客の生産調整により当社製品の販売量が減った」(化学工業製品製造、資本金1億円以上)、「現地銀行の決済停滞」(金属加工機械製造、資本金1億円以上)など。

上海ロックダウンアンケート


 世界がコロナ禍の外出制限を緩和し、経済再活性化に舵を切るなか、中国の「ゼロコロナ政策」は国際的なサプライチェーンに大きな影響を与えている。
国内の自動車メーカー各社は、上海のロックダウンによる部品供給や物流の乱れなどもあり、国内工場の操業が部分的に停止したところも出た。ロックダウンが解除された6月1日以降も操業停止が続くケースもあり、国を跨ぐサプライチェーンの脆弱さが浮き彫りになった。
こうした混乱は今回のアンケート結果にも表れている。上海ロックダウンのマイナスの影響に言及した企業は、業種別では自動車部品などを含む「輸送用機械器具製造業」が93.8%で最も多かった。自動車産業のすそ野は広く、コロナ禍で幾度となく操業停止に追い込まれてきた。自動車関連では、経営への影響が大きく、再建に向けて事業計画を練っている企業もあるが、今回のロックダウンはこうした計画の再考を促す可能性もある。
上海ではロックダウン解除後も部分的な封鎖がみられる。再びロックダウンに陥った場合、さらに影響が広がる事態も危惧される。国内企業は海外進出のメリットを求めて中国に進出し、コロナ禍で国を跨ぐサプライチェーンの危うさを体験することになった。
今後は安定した調達とリスク分散の意味から、中国依存の見直しや国内回帰を含む生産体制の分散を迫られる可能性もある。

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