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負債1千万円未満の倒産、3カ月連続で増加 件数44件、建設業が2.5倍に急増

  2022年5月の負債1,000万円未満の企業倒産は44件(前年同月比15.7%増)で、3カ月連続で前年同月を上回った。また、「新型コロナ」関連倒産は13件(前年同月10件)だった。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は29.5%(同26.3%)で、2022年4月(33.3%)、2021年4月・7月(各29.7%)に次ぎ、4番目の高水準となった。
 産業別では、最多が「サービス業他」の14件(前年同月比22.2%減)。次いで、2.5倍に急増した「建設業」の10件(同150.0%増)で、この2産業で5割を超えた(構成比54.5%)。
 原因別は、最多が「販売不振」の35件(前年同月比20.6%増)で、約8割(79.5%)を占めた。『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)の構成比は、84.0%だった。
 資本金別は、1,000万円未満が41件(前年同月比10.8%増)で、全体の93.1%を占めた。
 形態別は、「破産」43件、「特別清算」1件と、すべて消滅型の法的倒産だった。業績低迷が長引き、先行きの見通しも厳しく事業継続を断念する小・零細規模の事業者が多いことを示す。
 コロナ禍の資金繰り支援で負債規模に関わらず、企業倒産は大きく抑制されてきた。しかし、支援効果の一巡、希薄化で企業倒産の潮目は変わり、5月は負債1,000万円未満は3カ月連続で前年同月を上回っただけでなく、同1,000万円以上の倒産も2カ月連続で増加している。
 コロナ禍で疲弊する企業は多い。さらに円安や資源高、ウクライナ情勢などの様々なリスクが浮上している。過剰債務を抱える中小企業には、新たな資金調達へのハードルは高く、その一方で、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」が返済期限を迎えている。小・零細企業の経営立て直しには企業努力だけでは限界があり、事業再構築や経営再建、廃業に向けた自治体や金融機関の幅広い支援が求められる。

  • 本調査は、2022年5月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

3カ月連続で前年同月を上回る

 2022年5月の負債1,000万円未満の倒産は44件(前年同月比15.7%増)で、3カ月連続で前年同月を上回った。2022年では3月の55件に次ぎ、2番目に多かった。
 「新型コロナ」関連倒産は13件(前年同月10件)で、件数は2022年4月(14件)に次いで2番目、構成比(29.5%)も2021年4月・7月(各29.7%)に次いで4番目に高かった。
 負債1,000万円以上の企業倒産は2カ月連続で前年同月を上回ったが、小・零細企業がほとんどを占める同1,000万円未満の倒産も増勢傾向にある。特に、小・零細企業は資産背景がぜい弱で、経営体力も乏しい。業績回復が遅れるなか、時間の経過とともに資金余力も限界に達する企業の脱落が増えることが懸念される。

1000万未満

【産業別】建設業、製造業、卸売業、小売業の4産業で増加

 産業別では、10産業のうち、建設業と製造業、卸売業、小売業の4産業が増加した。一方、減少は農・林・漁・鉱業、情報通信業、サービス業他の3産業、同数は3産業だった。
 最多は、サービス業他の14件(前年同月比22.2%減、前年同月18件)で、5月度では2年ぶりに前年同月を下回った。サービス業他は負債1,000万円未満の倒産の31.8%を占め、前年同月の47.3%から15.5ポイント低下した。
 次いで、建設業10件(同150.0%増、同4件)、小売業9件(同50.0%増、同6件)で、それぞれ2年連続で増加した。
 このほか、製造業(同300.0%増、同1件)と卸売業(同33.3%増、同3件)が各4件で、それぞれ2年連続で前年同月を上回った。
 一方、農・林・漁・鉱業が1件(前年同月2件)で5年ぶり、情報通信業がゼロ(同2件)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
 業種別では、機械器具小売業(ゼロ→2件)、学術研究,専門・技術サービス業(2→3件)、医療,福祉事業(1→4件)などで増加した。

1000万未満

【形態別】消滅型の倒産が100.0%

 形態別では、「破産」が43件(前年同月比19.4%増、前年同月36件)で、5月度では2年連続で前年同月を上回った。負債1,000万円未満の倒産の97.7%を占め、前年同月の94.7%から3.0ポイント上昇した。
 また、「特別清算」は、前年同月と同件数の1件で、消滅型の倒産が100.0%だった。
 「民事再生法」は2年ぶりにゼロ。また、「会社更生法」は2008年以降の15年間では、1件も発生していない。
 負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業が大半で、業績不振から脱却できず、先行きの見通しが立たずに事業継続をあきらめるケースがほとんどを占めた。

【原因別】販売不振が約8割

 原因別は、最多が「販売不振」の35件(前年同月比20.6%増)で、5月では2年連続で前年同月を上回った。負債1,000万円未満の倒産の79.5%を占め、前年同月の76.3%より3.2ポイント上昇した。
 「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が2件(前年同月比100.0%増)で、2年ぶりに増加した。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が37件(前年同月比23.3%増、前年同月30件)で、2年連続で前年同月を上回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は84.0%で、前年同月(78.9%)より5.1ポイント上昇した。
 このほか、「事業上の失敗」が6件(前年同月ゼロ件)で、2年ぶりに前年同月を上回った。

【資本金別】1千万円未満が9割超

 資本金別件数は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が41件(前年同月比10.8%増、前年同月37件)で、5月度としては2年連続で前年同月を上回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は93.1%で、前年同月の97.3%より4.2ポイント低下した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が19件(同26.6%増、同15件)、「個人企業他」が11件(同31.2%減、同16件)、「5百万円以上1千万円未満」が7件(同133.3%増、同3件)、「1百万円未満」が4件(同33.3%増、同3件)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が3件(同200.0%増、同1件)で、4年ぶりに前年同月を上回った。また、「5千万円以上1億円未満」は4年連続、「1億円以上」は10年以上、それぞれ発生しなかった。

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