• TSRデータインサイト

Xアイコン
facebookアイコン

サイボウズ・青野社長  「夫婦別姓」「コロナ禍での働き方」に新たな選択肢を 単独インタビュー(後編)

―コロナ禍で保育園などの休園が相次いだ

  教育機関はもう少しIT化を頑張らなければいけないと思う。私も子どもが3人おり、小学校に通っているが、学級閉鎖された瞬間に何もできなくなった。今はタブレットを小学生に配ったりしているが、朝会で集まって点呼するだけで先生も四苦八苦しながら30分かかったりしている。ITツールにもっと慣れて活用できるところまで持っていかないと、こういった感染症が流行った時に停止してしまう。改善点は見えているので、もどかしい。

―社員から実際に困惑の声は

 それはもう大変だ。通園、通学ができないと子どもが家にいることになり、その負担が保護者に向かう。子どもが家にいる環境でテレワークをするのは大変だ。泣くし、暴れるし、世話をしなければいけない。仕事に集中できない。仕事と育児を切り替えるのは難しい。私もこの2カ月は大変だった。長男や長女のクラスがそれぞれ2回ずつ学級閉鎖になった。家にいるので昼食の準備もしなければならないし、彼らも暇なので「遊んでほしい」となる。ただ、そこは企業ももっと寛容にならないといけない。そういう状況にある中で、今まで通りの成果を求めたりすると、家庭にストレスが行く。寛容に働ける環境作りをすることを経営者は求められている。
 どうしても現場は頑張ってしまう。経営者は現状を理解し、家庭までケアする必要がある。経営者には想像力が必要だ。ただ、今の男性経営者はこれまで子育ての機会に乏しいままその地位にいるのでややこしい。

青野社長後編

リモートインタビューに応じる青野社長

―自ら先頭に立ち、「選択的夫婦別姓」を推進している。銀行口座や契約変更など負荷解消につながるとして、若い世代を中心に支持の声は多い。ただ、法制化には至っていない

 自民党以外は賛成している。自民党の中でも、実は賛成派も増えてきているが、一部の国会議員が強硬に反対していることもあり、党内で意思決定できない状況だ。例えば、党に関係なく国会議員が投票すると、(賛成派の人数的に)普通に通るのだが、自民党内で一部強硬な反対があるのでなかなか進まない。

―なぜ強硬に反対しているのか

 反対することで支持をしてくれる人がいるからだ。日本はこういうことが多い。テレワークもそうだ。一部の人が「会うことが大事だ」と主張したりする。そうすると「こういう人と戦うのが面倒だ」となって、テレワークを諦めて出社する流れができる。

―「選択的夫婦別姓」の実現に向けて戦略は

 いまだに反対の意思表明をしている議員を選挙で落とすということが必要だ。私は選択的夫婦別姓に反対する政治家をヤシの実のように落とすことで、法制化を実現に向ける「ヤシノミ作戦」を展開している。投票するときに議員の誰が反対しているのか、はっきりさせることで「この人に(票を)入れないようにしよう」と投票者側が理解できる仕組みを作ろうとしている。だが、すぐ比例で復帰したりするので、落としきるのが大変だ。そういう人を選んでしまうことに問題があることに共通認識をもってほしい。(選択的夫婦別姓に対する)認識や支持の差は年代によって感じる。最近の人は、当たり前になっている。

―「新たな選択肢」作りが難しいのは、日本が長年抱えてきた問題でもある

 日本が30年間停滞している根源的な理由も、そこにあるような気がする。変化を拒んでいる。IT業界にいて、これまでグループウェアの導入を企業に勧めてきたが、いまだに「フェイストゥフェイスが大事」として拒まれることも多い。それで済めば良いが、そうではない人も世の中にはいる。そういう人のために、「選択肢を作りませんか」というのがなかなか受け入れられず、新しい道具を使わない、使わせないという経営者を生んでしまった。選択的夫婦別姓やIT化が進まない根本的な理由も共通しているように思う。

-新卒1年目の社員を取締役に選任して話題となった 「社内公募取締役制度」を昨年導入した

 社内の情報共有が徹底されているので、取締役という法律上の職を置いても置かなくても誰でも取締役の状態にある。お互いに監視・監督しながら事業を運営できる状態にあると思っているので、取締役には誰がなっても良い。こういう背景から公募制にした。17人手をあげて、全員取締役に選んだ。取締役になった人からは「視野が広がった」という声が多かった。取締役になると会社の公式文書を読まなければならず、努力するし、別の会社の取締役に関する情報に関心を持つようになる。視座が上がったとのフィードバックもあり、制度を導入し、とても良かった。

 自身の戸籍名は「西端」であるが、結婚した際に配偶者の姓である「青野」を選択した。パスポートや銀行口座、海外滞在の際の支障など、通称と本名、2つの姓で生活する不便さを自ら経験している。
 サイボウズは昨年、社内公募取締役制度を導入した。従来から情報共有・オープン化を徹底化していたからこそ実現できた取り組みだったという。また、コロナ前の比較的早い時期からテレワークを積極導入し、衆目を集めている。
 こうした取り組みは、社員の選択肢の幅を広げるだけではなく、青野社長は従業員の主体性の向上や自立に期待をかける。まさに、日本企業が苦手としてきた領域だ。
 コロナ禍のニューノーマルが浸透する反面、先行きは見通しが難しくなっている。こうした状況で青野社長の卓識が、今後の日本のノーマルになる日が来るかもしれない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年3月15日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

Xアイコン
facebookアイコン

人気記事ランキング

ランキング1位
  • TSRデータインサイト

「最低賃金」改定で、51.3%の企業が「給与変更」 2020年代の1,500円 「対応不可能」が4割切る

厚生労働省は9月3日、2026年度の全国の最低賃金額(平均)を1,177円(56円増)に引き上げた。 1978年度に目安制度が始まって以降、平均引き上げ額56円は前年度に続き2番目の高さで、これを受けて給与改定を迫られる企業が半数に達することがわかった。

2

  • TSRデータインサイト

1-9月「医療機関」倒産 過去最多の59件 身近なクリニック、歯科医院で苦境が鮮明

医療機関の倒産が再び勢いを増している。2026年1月-9月に倒産した病院・クリニック(診療所)・歯科医院などの「医療機関」は59件(前年同期比28.2%増)と、過去最多を更新した。

3

  • TSRデータインサイト

「税金滞納」倒産が168件、前年同期の2倍に大幅増 2026年度上半期の「税金滞納」倒産 破産が97.6%

2026年度上半期(4-9月)の「税金滞納(社会保険を含む)」倒産は、168件(前年同期比100.0%増)と、前年同期の2倍に達し、この10年で最多を記録した。物価や人件費などのコストアップが企業収益を圧迫し、納税原資を確保できない小・零細企業の行き詰まりに拍車を掛けている。

4

  • TSRデータインサイト

「社会保険の適用拡大」 中小・零細企業ほど負担増 企業の44.9%が「働き控え」懸念、「未対応」も半数

2026年10月から非正規従業員にも社会保険の適用が拡大された。「月収8万8,000円以上」の賃金要件が撤廃され給与額に関わらず条件を満たす社員は、新たに厚生年金や健康保険の加入対象となる。10月1~8日企業を対象に「社会保険適用の基準変更」に関するアンケート調査を実施した。

5

  • TSRデータインサイト

2026年1-9月「デイサービス」倒産47件 同期間で過去最多、介護業界の苦境鮮明

デイサービスなど「通所・短期入所介護事業」の倒産が増加している。2026年は9月までに47件(前年同期比34.2%増)と大幅に増加し、1-9月で過去最多を更新した。多様化するサービスなど、他社との競争が激化するほか、物価高に人手不足も重なり、苦境が深まっている。

TOPへ