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習い事教室の倒産は減少、休廃業・解散は初めて100件に(2021年)

 2021年の「習い事教室(教養・技能教授業)」の倒産(負債額1,000万円以上)は、27件(前年比42.5%減)で、過去10年間で最も少なかった。一方、休廃業・解散は100件(同4.1%増)と、10年間で初めて100件に乗せた。コロナ禍の支援策と収束が見えない状況で明暗が分かれた。
 「習い事教室」の倒産は、新型コロナ感染防止の「三密回避」やソーシャルディスタンス確保など急激な環境の変化で、2020年は47件と過去最多を記録した。だが、2021年はコロナ関連の支援策が浸透し、事業者の資金繰りが緩和された。また、授業のオンライン化なども広がり、長引くコロナ禍で新たな事業運営が奏功したとみられる。
 「習い事教室」倒産27件のうち、コロナ関連倒産は9件(前年13件)で、3割(構成比33.3%)を占めた。リモートやオンライン授業に移行しやすい「外国語会話教授業」のコロナ関連倒産はなかった(前年ゼロ)。一方、レッスンに機材やスペースが必要な「スポーツ・健康教授業」は2件(同3件)、「音楽教授業」は3件(同2件)発生した。授業形態によってコロナ対応への差が倒産動向に影響した格好となった。
 規模別では、個人企業他を含む資本金1,000万円未満が22件(前年37件)で、全体の8割(構成比81.4%)を占めた。コロナ感染対策などで資金余裕のない小・零細企業が、直撃を受けたことを示している。
 2021年の「習い事教室」の倒産は低水準だったが、休廃業・解散はこの10年で最多を記録した。少子化や健康志向の流れなど、多様化するニーズの一方で競合は激しく、コロナ禍の収束が見通せない状態が続くなか、今後の動向が注目される。

  • 本調査は、日本産業分類の「教養・技能教授業」(「音楽教授業」「書道教授業」「生花・茶道教授業」「そろばん教授業」「外国語会話教授業」「スポーツ・健康教授業」「その他の教養・技能教授業」)の2021年の倒産(負債額1,000万円以上)を分析した。

「習い事教室」の倒産は27件、休廃業・解散は100件

 2021年の「習い事教室」倒産は27件(前年比42.5%減)だった。過去最多を更新した前年の47件から大幅に減少し、2012年以降の10年間では最低を記録した。
 一方、休廃業・解散は100件(同4.1%増)で10年間で最多を記録し、倒産と好対照となった。
 倒産は大幅に減少したが、休廃業・解散は3年連続で前年を上回った背景には、コロナ禍の収束が見通せないことがある。しっかりしたコロナ対策は受講者数にも影響を及ぼすが、資金力が乏しい中小・零細事業者には負担が大きい。支援策で一時的に資金繰りが緩和しても、長期的にはこうした資金負担をどう吸収するか、事業運営のカギになっている。

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「習い事教室」の倒産 「スポーツ・健康教授業」が最多の9件

 業種別では、スポーツ教室、パーソナルジムなどの「スポーツ・健康教授業」が9件(前年比25.0%減)で最多。次いで、「音楽教授業」の4件(同50.0%減)。「生花・茶道教授業」と「外国語会話教授業」が各1件だった。
 2020年4月の緊急事態宣言の下では、「習い事教室」も休業要請の協力対象となった。そのため、事業活動に大きな影響を受け、急激な売上減少で業績が悪化し、倒産も高水準で推移した。
 しかし、2021年はコロナ関連の資金繰り支援策が浸透し、さらにリモートでの開講などコロナ対策が進み、倒産は大幅に減少した。ただ、専用の機材や一定のスペースを要する「スポーツ・健康教授業」は代替策が難しく、他の業種より減少幅が小さかった。また、三密回避や細やかな指使いなどの指導が難しい「音楽教授業」では4件中3件がコロナ関連倒産で占められるなど、業種によってコロナ禍の影響に濃淡が出た。

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原因別 「販売不振」が24件、構成比は約9割

 原因別では、最多が「販売不振」の24件(前年比42.8%減)。倒産に占める構成比は88.8%(前年89.3%)で、前年からは0.5ポイント低下した。
 次いで、「事業上の失敗」が2件(前年3件)、「事業外の失敗」が1件(同ゼロ)だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は24件(前年比44.1%減)で、構成比は88.8%(前年91.4%)と、全体の約9割を占めた。
 倒産件数は減少したが、コロナ禍での休講や生徒の退会による売上減少の影響は続いている。

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