• TSRデータインサイト

居酒屋の倒産 過去2番目の多さ、業種間で明暗分ける(2021年飲食業倒産)

 2021年(1-12月)の「飲食業」倒産(負債1,000万円以上)は、648件(前年比23.0%減)だった。「新型コロナ関連」倒産は300件で、飲食業倒産に占める構成比は46.2%を占めた。
 2021年9月末で緊急事態宣言などが全面解除され、新型コロナの新規感染者は大幅に減少した。年末には飲食店の営業制限も緩和され、飲食店は久々に明るい雰囲気に包まれた。だが、新たな変異株「オミクロン株」の拡大や感染者数の急増で、2022年1月8日から31日まで沖縄、広島、山口に「まん延防止等重点措置」が適用されるなど、平坦でない道が続く。
 業種別では、新型コロナ感染防止で酒類提供の自粛要請が響いた「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が152件(前年比12.6%減)で、1992年以降の30年間で2020年(174件)に次いで2番目の多さとなった。
 2021年は緊急事態宣言などが度々発令され、飲食業界は苦境が続いた。ただ、コロナ禍での“巣ごもり需要”を取り込んだ「持ち帰り飲食サービス業」は16件(同38.4%減)、「宅配飲食サービス業」は23件(同37.8%減)と、過去10年間で最少を記録。コロナ禍を契機にした新たな生活様式の浸透で業態間で明暗を分けた。
 時短営業の協力金(支援金)など、零細規模ほど支援の恩恵を受けた部分もあり、従来の支援策では限界も指摘されている。「withコロナ」に合わせた事業再構築など、支援のあり方も再検討する段階にきているようだ。

  • 本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2021年(1-12月)の倒産を集計、分析した。

コロナ関連倒産、前年の2.1倍に

 2021年の「飲食業」倒産は648件(前年比23.0%減)で、2016年以来、5年ぶりに600件台にとどまった。2020年はコロナ禍で外出自粛に加え、緊急事態宣言に伴う休業や時短営業の要請などで過去最多の842件を記録した。しかし、2021年はコロナ関連の助成金や協力金など各種支援策が奏功し、倒産は大幅に抑制された。
 一方、2021年の「新型コロナ関連」倒産は300件で、2020年(138件)の2.1倍に増加した。コロナ禍で多くの飲食業者は売上減少を余儀なくされ、苦境に立たされている。
 飲食業倒産に占めるコロナ関連倒産の月別構成比は、1月43.3%、2月35.1%、3月43.6%、4月53.7%、5月49.0%、6月38.3%、7月52.5%、8月48.2%、9月55.7%、10月44.8%、11月38.4%、12月48.0%と、高水準で推移した。

飲食コロナ

【業種別】居酒屋は30年間で2番目の多さ、持ち帰り、宅配は大幅減

 業種別は、最多が日本料理店や中華料理店、ラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」の170件(前年比15.4%減)。次いで、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」152件(同12.6%減)、「食堂,レストラン」118件(同39.1%減)の順。
 居酒屋は、1992年以降の30年間では2020年(174件)に次ぐ2番目の多さだった。このうち、コロナ関連倒産は84件(構成比55.2%、前年34件)で、業種別で最多だった。
 一方、コロナ禍で“巣ごもり需要”“オンライン飲み会”などが広がり、新たな需要開拓で「持ち帰り飲食サービス業」は16件(前年比38.4%減)と、2012年(16件)に並び過去10年間で最少を記録した。「宅配飲食サービス業」も23件(同37.8%減)と、過去10年間で最少だった。

飲食コロナ

【原因別】『不況型』倒産が約9割

 原因別の最多は、「販売不振」の546件(前年比23.8%減)。以下、「既往のシワ寄せ」37件(同2.7%増)、「事業上の失敗」23件(同28.1%減)の順。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は583件(同22.5%減)で、飲食業倒産に占める構成比は89.9%(前年89.4%)と、前年を0.5ポイント上回った。業績不振から抜け出せず、コロナ禍が事業を断念する最後の一押しになるケースも多い。
 一方で、本業以外の失敗による「事業外の失敗」が4件(前年1件)に増加した。

【形態別】「消滅型」の割合が上昇

 形態別では、最多は「破産」の614件(前年比22.9%減、前年797件)だった。
 飲食業倒産に占める構成比では、「消滅型」が96.4%(前年95.9%、0.5ポイント増)に対して、「再建型」が2.6%(同3.4%、0.8ポイント減)で、コロナ禍で再建のめどが立たず消滅型の倒産を選ぶケースが目立った。

【都道府県別】 増加15、減少27、同数5

 都道府県別では、増加が15県、減少が27都道府県、同数が5県だった。
 増加は、青森(3→6件)、岩手(1→3件)、山形(1→3件)、茨城(6→16件)、栃木(10→14件)、群馬(9→10件)、新潟(6→7件)、長野(4→10件)、兵庫(48→53件)、鳥取(1→2件)、島根(2→4件)、山口(10→15件)、香川(1→3件)、長崎(2→4件)、沖縄(4→5件)。
 一方、東京(143→80件)、愛知(80→40件)、大阪(152→105件)、北海道(18→16件)、広島(21→16件)、福岡(41→28件)など都心部では減少した。

飲食コロナ

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

2024年度「他都道府県への本社移転」 1万6,271社 TSMC効果?九州が転入超過トップ、県別トップは埼玉県

2024年度に他都道府県に本社・本社機能を移転した企業は1万6,271社(前年度比18.7%増)で、前年度から大きく増加した。コロナ禍からの人流回復や需要変化に合わせ、本社移転の動きが活発化している。

2

  • TSRデータインサイト

創光科学の「破産開始決定」が取消しに ~上場子会社、複雑に絡まり合う利害関係 ~

東証プライム上場の医療機器メーカー、日機装(株)(渋谷区)は5月15日、連結子会社の創光科学(株)(渋谷区)の破産開始決定の取消しに関する経過を開示した。 破産手続きを巡り、2年にわたる親会社VS創業者の異例の抗告合戦へと発展した事件は、最高裁の判断でようやく決着した。

3

  • TSRデータインサイト

警備業界は大手2社の寡占化が進む 人手不足で倒産・休廃業が過去最多

全国の主な警備会社828社の2024年の業績は、売上高が1兆9,180億円(前年比2.6%増)、最終利益は1,604億円(同15.6%増)と、堅調に推移している。 業界市場は拡大しているが、大手の寡占化が進み、中小・零細事業者は人手不足でコストが上昇し、経営環境は厳しさを増している。

4

  • TSRデータインサイト

「雇調金」不正受給 倒産率は平均の約31倍 不正公表1,699件、サービス業他が45%

全国の労働局が4月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,699件に達した。不正受給総額は551億6,918万円にのぼる。

5

  • TSRデータインサイト

マレリにマザーサンが買収提案、私的整理の協議の行方は ~ 「マザーサンの提案は選択肢の一つ」 ~

自動車部品大手のマレリホールディングス(株)は5月26日、私的整理を協議するために都内で集会を開催した。 集会後、マレリHDの関係者が東京商工リサーチの取材に応じ「マザーサンの買収提案は選択肢の一つだ。それしかないような報道がなされているが、一択ではない」とコメントした。

TOPへ